年間収入の向上・確保等を柱とする春闘方針を決定/情報労連中央委員会

(2013年2月8日 調査・解析部)

[労使]

NTT労組やKDDI労組、通建連合などが加盟し、情報関連組織を中心に構成する情報産業労働組合連合会(情報労連、約22万人)は5日、都内で中央委員会を開催し、2013春季生活闘争方針等を決定した。賃金カーブの維持や一時金の前年実績確保・上積み等を通じて、年間収入の向上・確保を図るとともに、非正規について正社員への転換ルールの明確化・導入を、産別統一課題に据えている。

今春闘は「底上げ・底支えを重視」(加藤委員長)

加藤友康委員長はあいさつの中で、今春闘に臨む姿勢に触れ、「情報労連は大・中・小企業、県地協地場加盟組合を合わせて257組織が結集する複合産別組織で、業種・業態、個社の置かれた状況に応じ多くの課題を抱えているが、産別として統一課題とミニマム設定を行い、スケールメリットと結集力を活かして一歩でも二歩でも前進していきたい」などと述べた。

そのうえで、方針の考え方について、「まずは『底上げ・底支え』を行うことを重視し、非正規労働者を含む雇用制度の確立と環境整備に取り組むとともに、昨春闘で大きな成果をあげてきた労連最賃協定をすべての企業に要求し、協定締結の拡大を図りたい」とし、さらに「賃金カーブ・定昇維持、そして一時金を含めた年間収入を必ず維持し、賃金改善を含めてさらに上積みを図るなど、こだわりをもって取り組みたい」などと強調した。

非正規の処遇改善に産別統一課題、必達課題、キャッチアップ課題を設定

方針は、 (1) 雇用の安定・確保に向けた労使協議の徹底 (2) 賃金水準および一時金を含めた年間収入の向上・確保 (3) 非正規労働者の処遇改善および労働関連法制の改正を踏まえた対応の強化 (4) 希望者全員が65歳まで安心して働ける制度の確立 (5) 情報労連最賃協定の締結維持・拡大 (6) 労働時間の適正化を中心とするワーク・ライフ・バランスの実現――など8本を柱とする。

このうち、年間収入の向上・確保では、(ⅰ)賃金制度がある組合は制度の確実な履行を求める(ⅱ)賃金制度のない組合は、確立に向けた要求を行うとともに賃金構造の維持を図る(1歳・1年間差5,000円を目安とし、賃金カーブ維持分が算定困難な場合は相当分のミニマム目標として4,500円を引上げ目安とする)(ⅲ)個社の置かれた状況を踏まえ可能な組合は賃金改善を求める(ⅳ)一時金については「生活水準を維持する観点から、前年実績を確保しさらなる上積みを目指す」――などとした。

非正規の処遇改善については「すべての加盟組合が全力を挙げる」とし、産別統一課題として「正社員への転換ルールの明確化・導入」、必達課題として (1) 非正規を対象とした仲間づくりの積極的推進 (2) 非正規との対話活動の展開と相談窓口の設置等 (3) 非正規の処遇改善等の必要性に係る正社員組合員の理解促進――を設定した。また、可能な組合が取り組むキャッチアップ課題として、「昇給ルールの明確化」や「一時金の制度化・支給」「通勤費・駐車料金、慶弔休暇など福利厚生全般に対する取り組み」「正社員と同様の時間外割増率の適用」「誰もが時給1,000円の実現」――をあげた。

労連最賃に関しては、これまでの経緯や法定地域最賃の動向などを総合的に勘案し、2012年度労連最賃最低水準並びに昨年実績を確保する額として、700円(高知県)~898円(東京都)の範囲で具体的な要求額を設定している。

ヤフーなどの新規加盟で1万人を超える拡大実績

中央委員会では、昨年4月から12月までの組織拡大実績が、1万271人となっていることも確認した。JCОMやヤフーなど3県協で4組合・本部直加盟1組合の新規加盟があったほか、全国単組で5つの未組織会社を組織化し、KDDI労組など既存組織における非正規の組織化も進んだ。一方、団塊世代等の退職で実質的な組織人員は横ばいとなっていることから、引き続き「25万労連の達成に向けた『仲間づくり』の取り組み」に注力する方針を確認した。

2つのガイドラインと新たな時短目標を策定

また、一般経過報告の中で、「希望者全員が65歳まで安心して働ける職場環境の確立に向けたガイドライン」や「勤務間インターバル規制の導入に向けた取り組みのガイドライン」「新たな時短目標(2013~2016)」を策定したことが報告された。

新たな時短目標については、年間所定労働時間、時間外労働の上限や休日労働を含む実績値、36協定の特別条項による延長時間(新規追加)、時間外労働等割増率、年次有給休暇の取得実績値、労働時間等の設定改善に係る労使の話合いの場の設置・開催(新)――など9項目にわたり、それぞれ最低到達・中間・最終到達の3つの目標を設定。例えば、年間所定労働時間については、最低到達目標を2,000時間以下、中間目標を1,900時間以下、最終到達目標を1,800時間以下とし、各組合が自組織の状況に合わせ、目標達成に向けた工程表を作成するなどして、取り組みを強化していく。

このほか、2013春季生活闘争方針の一環として、東日本大震災からの復興・再生に向けた取り組みについても確認。震災の風化に対する『復興支援イベント』の開催や、情報労連『危機管理マニュアル』を次期定期大会に向けて整備・策定することなども決定した。

注)先の定期大会で、 (1) 最大の重点として、全県協で【1県協1組織化】を必達する (2) 未組織労働者の積極的な組織化に向け、今年度は『通建連合』を重点全国単組に位置づける (3) 全国単組で、未組織グループ会社・関連企業における新規組合結成および社員会・未加盟組合の取り組みと、非正規労働者の組織化を重点に行動計画を策定する (4) 県協加盟組合では、過半数代表と組織防衛の観点から、社員の完全組織化と非正規の組織化に積極的に取り組む (5) オルグ団は情報通信・情報サービス、CATV、警備業を主業種としたターゲット企業および産別未加盟組合の取り込みに集中する――などの活動方針を決定しており、目標の積み上げ総計を未組織会社69社、産別未加盟33組合、対象人員4万9,217人(うち非正規1万1,067人)と算出している。