到達水準未達は定昇制度ありで2千円、制度なしで6,500円等を要求基準に設定/UAゼンセン流通部門

(2013年2月6日 調査・解析部)

[労使]

食品関連、GMS、住生活、百貨店、ドラッグ、専門店など流通・小売系の組合で構成し、UAゼンセン組合員の半数超が所属する流通部門は2月1日、都内で第一回評議員会を開催し、2013春季労働条件闘争等を決定した。「部門別到達水準」を大卒30歳・勤続8年で基本賃金26万円、「目標水準」を同27万円と設定。(本部のミニマム水準を上回るが)部門別到達水準を下回る組合は、定昇制度が整備されていれば「賃金体系維持分を確保したうえで一人平均2,000円程度」、未整備なら「一人平均6,500円程度」などとする要求基準を据えた。

「最大部門の位置づけを腹に落として交渉しなければならない」(藤吉部門長)

あいさつした藤吉大輔・部門長(ダイエーユニオン)は、先に発表された日本経団連の経労委報告に触れ、「景気の良い時に収益配分を株主や再投資に偏重し、従業員に充分あててこなかったツケが現在のデフレを招いている。定昇は労使が定めた約束事で、自動的に更新されて当然のもの。合理化発生でもないのに凍結するなど言語道断。かつて相場形成をリードしてきた産業が、こぞってベア要求見送りを既に明確にしているが、我々はささやかに1%程度の要求をするだけだ」などと批判した。

そのうえで、組織統合して初めて臨む2013春季労働条件闘争の考え方について、「旧UIゼンセン同盟・加盟組合は『統一闘争』、旧サービス・流通連合・加盟組合は原則不参加の『統一的運動』となるが、今年は2014賃金闘争に向けて、労使間で充分に準備していく期間ということだろう」などと指摘。さらに、UAゼンセン組合員の56.2%(短時間組合員の67.3%)を占める流通部門の位置づけを踏まえ、「賃上げは労組の社会的責任の一つでもあるのだから、連合台で旗振役のUAゼンセンの中でも最大である流通部門の位置づけを腹に落として要求を決め、交渉していかなければならない」などと強調した。

部門到達水準を基本賃金26万円、目標水準を27万円に設定

評議員会では、2013統一賃闘方針として、正社員組合員について、本部設定の「ミニマム水準」に加え、中期的に目指すべき「部門別到達水準」を、(流通部門160組合の2012年6月賃金実態データの分析に基づき)大卒30歳・勤続8年で基本賃金注126万円、「部門別目標水準」を(賃金センサスの全産業1,000人以上規模に基づき)同27万円などと設定した。

そのうえで、 (1) ミニマム水準を下回る組合は、賃金体系維持分も含めた賃上げ原資として一人平均7,000円 (2) ミニマム水準を上回るが、部門別到達水準を下回る場合、(ⅰ)X組合注2なら賃金体系維持分を確保したうえで格差是正分として一人平均2,000円程度(ⅱ)Y組合なら賃金体系維持分の社会的水準に格差是正を含め、一人平均6,500円程度 (3) 部門別到達水準を上回る組合は、産業の賃金水準を牽引する役割を踏まえ、(ⅰ)X組合なら賃金体系維持分を確保したうえで、賃金カーブの是正や生活・職務関連手当の引上げなど、月齢賃金の改善を最優先する(ⅱ)Y組合なら賃金水準を維持することとし、連合が示す1年・1歳間格差の社会的水準である5,000円程度――などとする要求基準を据えた。

一方、短時間組合員(契約社員含む)等の要求基準については、すべての組合が「賃金制度の点検、導入・確立」に取り組んだうえで、 (1) 賃金制度が導入されている組合は、2012年度地域別最賃・特定(産別)最賃改定の改上昇額・上昇率(全国平均12年)を参考値とする (2) 制度未整備の組合は、正社員と同様の職務なら40円、職務が異なるなら20円などとした。また、企業内最低賃金協定について、(ⅰ)地域別最賃しかない都道府県は地域別最賃×115%(ⅱ)特定最賃があれば産業別最賃×110%(ⅲ)現状でⅰ、ⅱを上回る場合は正社員に適用される18歳最低賃金の時間換算額――を基準に締結するとともに、「各組合は都道府県支部と連携し、産業別法定最賃の新設・改定に取り組む」とした。

100万人体制の実現や産業政策の提示を目指す

評議員会ではこのほか、2013年度における (1) 年間総実労働時間の短縮に向けた統一運動方針(すべての組合員の年間所定労働2,000時間未満、不払い残業の撲滅に向けた労使協働の取り組み等) (2) 一時金交渉方針(正社員は年間4.8カ月(赤字企業でも最低4カ月以上)、短時間等組合員は正社員と職務が同じなら3カ月目標、異なれば2カ月以上等) (3) 退職金改定交渉方針(高卒勤続35年・定年扱いで先行水準グループ2,200万円、社会水準)グループ2,000万円、制度整備・水準改善グループ1,600万円等) (4) 労災付加給付改定交渉方針 (5) 労働協約改定交渉方針(改正派遣法、労契法、高齢法等への対応) (6) 企業内組織率向上に向けた統一運動方針(企業内組織率50%未満はパート等の組織化に必ず取り組むとともに、中間管理職の組合員範囲見直しの両面からアプローチ等)――を決定した。

また、中間活動報告の中で、11月6日の結成以降、新たに4組合・1,846人(うち短時間等組合員1,188人)が加盟し、1月20日時点の組織現勢で、517組合・79万4,764人(正社員組合員:短時間等組合員=39.9%:60.1%)となったことなどを報告。引き続き「100万流通部門」の実現に向けた体制づくりに取り組む方針を確認した。さらに、流通産業の健全な発展と社会的地位の向上に向け、旧UIZ第5次流通産業政策と、旧JSD政策課題集の摺り合わせを行っており、本年9月の定期中央委員会に「流通部門 産業政策」として提示できるよう、議論を進めることなども確認した。

注1流通部門の場合は、基本給+資格給(手当)+役職(職位)手当としている。

注2定期的に昇給する制度(毎年1回以上)があり、定昇の実施・賃金カーブ維持が労使交渉事項でなく確認でき、また、定期入社者の基本賃金カーブ(大卒22歳と30歳)の1年・1歳間が平均5,000円以上あり、大卒30歳・勤続8年の基本賃金の実態中位水準が24万円以上である組合を「X組合」とし、それ以外を「Y組合」としている。