賃金低下の組合は1,500円以上の改善を要求/JAMの2013春闘方針

(2013年1月23日 調査・解析部)

[労使]

金属・機械などものづくり産業の中小労組を多く組織するJAM(眞中行雄会長、約36万人)は18日、都内で中央委員会を開催し、2013年春季生活闘争方針を決めた。昨年、一昨年に続き、過去に賃金水準の低下があった組合は1,,500円以上の賃金改善・是正を要求し、賃金水準の回復をめざす。

写真:眞中会長あいさつ、JAM中央委員会

JAMは、金属製品、機械、自動車、軸受、工作機械、農・建機など、ものづくり産業を幅広くカバーする産別労組。中小労組が8割以上を占めるが、中小では賃金制度が未整備のところも多く、JAMでは毎年、賃金の引き上げの取り組みだけでなく、実在者の賃金水準の明示や賃金制度の確立の取り組みにも力を入れている。

2013方針は、今春闘での基本スタンスとして、「全単組は何らかの要求を提出し、労使交渉に臨む」とする。すべての労組が賃上げ・労働条件の改善のために1%を目安に配分を求めるとする連合の春季生活闘争方針に基づき、連合の中小共闘に参加し、中小労働者の賃金の是正・回復・底上げなどに取り組むと強調している。傘下の全単組は、賃金の現状を確認するため、30歳または35歳の一人前労働者、または標準労働者の賃金水準の明示に取り組むとし、賃金制度がない組合では、実態にもとづく賃金構造維持分の確保に取り組み、賃金制度・賃金カーブの整備をめざすとしている。さらに、過去に賃金水準の低下があった場合には賃金改善・是正を要求するなどとした。

具体的な要求基準をみると、賃上げの個別賃金要求は、「標準労働者」、「JAM一人前ミニマム基準」への到達を基本として、絶対額水準を重視する。「標準労働者」の要求基準としては、高卒直入者の所定内賃金の30歳ポイントと35歳ポイントの2点を設定し、30歳を26万円、35歳を30万5,000円とした。すでにこれらのポイントを達成している組合は、「金属労協の目標基準や到達基準などをめざしてほしい」(宮本書記長)としている。

一方、各年齢ポイントで最低でも達成すべき水準である「JAM一人前ミニマム基準」は、18歳=15万6,000円、20歳=17万円、25歳=20万5,000円、30歳=24万円、35歳=27万円、40歳=29万5,000円、45歳=31万5,000円、50歳=33万5,000円とした。これらの水準は、JAM単組の全数調査の第1四分位の水準を参考にしている。

賃金水準の維持の取り組みでは、「賃金制度のあるところでは賃金構造維持分を確保する」とし、賃金制度はないものの、賃金実態の把握に基づいて推計できる組合は「その相当分を要求し、確保する」とした。賃金制度がなく、賃金構造維持分の推計もできない場合は、「4,500円以上」を基準に平均賃上げ要求を行う。

賃金の是正・改善では、JAMでは2年前から、ここ数年の間、賃金構造維持分を確保できなかった単組や、賃金制度がなく妥結額が4,500円未満となった単組で、賃金実態を労使確認し、賃金水準の低下がみられる場合にはその回復をめざす中期の是正目標を定め、1,500円以上の水準引き上げをめざす取り組みを行っている。今年も同様の取り組みを行う。例えば、賃金水準の点検後、ある組合で低下分が4,500円と確認された場合には、3年かけて是正し、7,500円の低下なら5年かけて是正していくという考え。また、賃金構造維持分を確保できている単組でも、賃金分布の偏りや歪みなどに対して、必要に応じて賃金改善・是正の要求を組み立てる。賃金制度がない組合は制度確立の要求も積極的に行う。

昨年は、賃金構造維持分を明示している単組では、695組合のうち694組合が回答を得た。内訳は、賃金改善分を獲得したのが184組合で、構造分のみ獲得が447組合、構造維持分割れが63組合(2012年8月現在)だった。改善分を獲得した組合の平均改善額は1,018円だった。

眞中会長はあいさつのなかで、「取り巻く環境は従来にも増して厳しいが、これまで低下してきた賃金をこれ以上下げない取り組みを継続・強化していきたい。JAMとしてはこの2年間、低下した分を確実に回復させる取り組みを、毎年約370単組で行い、1,000円前後の復元を実現している。同じ努力をお願いしたい」と呼びかけた。

企業内最低賃金では、18歳企業内最低賃金を締結していない組合で、18歳以上最賃協定と年齢別最賃協定の締結を図る。一時金要求は、生活給の一部であることを強調しながら、「年間5カ月基準または半期2.5カ月基準の要求とする」とし、かつ、「最低到達基準として、年間4カ月または半期2カ月」とした。

65歳までの雇用では、すでに作成した取り組みの指針に基づき、(1)希望者全員の雇用確保について労働協約の締結を図る(2)原則として経過措置を利用しない(3)賃金・労働条件の在り方について継続して労使で検討する場を設ける(4)組合員化に向けて取り組む――としている。

統一要求日は2月19日(火)で、この日までに全単組が要求を提出。統一回答指定日は3月12日(火)、13日(水)に設定した。