会長に陶山氏、事務局長に染川氏を選出/介護クラフトユニオン定期大会

(2012年10月17日 調査・解析部)

[労使]

UIゼンセン同盟傘下の日本介護クラフトユニオンは12日、都内で定期大会を開催し、 (1)集団交渉への取り組み (2)労働条件の整備と向上 (3)組織の拡大と強化――などを柱とする、2013年度の活動方針等を決定した。役員改選があり、会長に陶山浩三氏(前職はNCCU本部副会長)、事務局長に染川朗氏(同・NCCU本部副事務局長)を選出した。

2012春闘の賃金引上額は月給制で昨年比減、時給制でやや増に

あいさつした二宮利夫会長(ニチイ学館)は、2012春季労働条件交渉について、「4月の介護報酬改定で1.2%の引き上げとなったが、数字のマジックがある。3月末で介護職員処遇改善交付金がなくなったため、差し引くと実質は0.8%のマイナスになる。また、サービスの種類により介護報酬が見直され、減額になるものやサービス内容そのものが変更になったものなどがあり、現場では一時混乱した中での交渉にならざるを得ず時間がかかってしまった」などと説明した。

そのうえで、賃金引上額(単純平均)が、月給制組合員で2,927円、時給制組合員は3円70銭となったことについて、「月給制組合員は昨年を下回り(マイナス200円)、時給制組合員は昨年をわずかながら上回った(プラス2.7円)が、介護業界で働くすべての従業員の賃金水準は、全産業平均値を下回ってはならないことを目標に交渉している以上、介護報酬改定があったにせよ、現実として反省しなければならない結果だ。2013春季労働条件交渉では、私たちの目標に対して法人側の理解を求め、粘り強く交渉していかなければならない」と強調した。

10万人組織の実現を目指し組織拡大・強化策をテコ入れへ

大会では、 (1)集団交渉への取り組み (2)労働条件の整備と向上 (3)政策調査活動 (4)共済活動 (5)組織の拡大と強化 (6)教育活動――などを柱とする、2013年度の活動方針等を決定した。

集団交渉の取り組みをめぐっては、コムスン問題で2007年に法人側組織の再構築が求められ、それまで築き上げてきた「集団交渉」の枠組みが大幅に後退した経緯がある。その後、「労使関係を一から作り直す」意気込みで、2010年にようやく新たな枠組みとなる「労使の対話」を設定。大会では、その第4回(昨年12月開催)で、第2回以降向き合ってきた「有期労働契約による組合員の雇用安定化協定」の集団締結を提案し、この間、個別訪問を通じて20法人との締結を確認したこと、また、その中から、「労使の対話」の法人側組織として「お世話役会」が起ち上がったことなどを報告した(i)。今後は、「労使の対話」を総支部参画型へシフトし、労使が協力して地域における課題(行政対策含む)に取り組める体制を整備することや、法人側組織を「法人会」へステップアップすることなどを目指す方針を決めた。

一方、組織の拡大・強化については、2000年のNCCU誕生から13年目に入り、7月31日時点で、前年度末から1,570人増加の6万4,470人(うち個人加盟は約127人)、新たに3職域組織を加えて38分会4職域組織(59の法人)となったことなどを報告(ii)。その一方、依然として全国の介護従事者の組織率は1割にも満たないことから、各総支部での取り組み体制を強化する(iii)ほか、 (1)ユニオンショップ組合員・退職者の加入促進 (2)組合費の見直し等による個人組合員の拡大 (3)増加傾向にある労働相談への対応強化――などを通じ、10万人体制の達成を目指す方針を確認した。

秋季労働条件整備活動では労働法規研修の充実・推進を

このほか大会では、2013年度の秋季労働条件整備活動(要求書提出は10月末・解決目標は2月8日まで)として、「職場環境のさらなる向上と充実のため、労働法規に関わる研修(労働時間として取り扱う、会場・経費は法人側が提供、管理職には必須とする等が前提)を行うこと」などを求める要求方針を決定した。2012年の改正介護保険法で、罰金刑を受けた事業者の指定取り消し等を含む、労働法規の遵守徹底を求める条文が追加されたことを受けた取り組み(iv)。就業規則の周知・遵守や時間外・休日労働、メンタルヘルス対策、職場のハラスメントといった具体的なテーマを労使で設定し、研修を行うよう求めていく。

^ (i) また、第5回(本年7~8月開催)では、労使による共同開催に向けた一歩として、法人側が対話のテーマ(メンタルヘルス)を設定してセミナー等を行ったほか、2006年に20法人と集団締結した「安全衛生に関する協定」及び「安全衛生規程」について、未締結法人への積極的な取り組みを依頼するなどしたことも報告した。

^ (ii) ニチイ分会が前年度比1,310人増の約3.8万人、ケア21分会が356人増の約3,820人、サンキ・ウエルビィ労組分会が219人増の約1,820人、セントケアグループ分会が150人増の2,525人になるなどの組織拡大があった。また、新分会の結成に向けた取り組みを進めた結果、東海・北陸総支部できずな職域組織(12人)、中国・四国総支部でリビングサポート職域組織(3人)とForest分会(26人)が結成された。

^ (iii) 仲間づくり強化と組合員のケア充実に向け、昨年から総支部体制がスタートしたことに伴い、今期の議案書では、例えば北関東総支部(2011年9月末で5,055人)で組合員7,000人の必達、東京総支部(同9,058人)では1万人の必達を目指す、また、近畿総支部では5分会以上の立ち上げ、北海道総支部は3分会以上の立ち上げを目指すなど、9つの総支部毎の活動計画も明らかにされた。

^ (iv) 背景には、介護事業をはじめとする福祉関連の業界では、労働基準法に違反している割合が77.5%と全産業に比較して9ポイント高い実態などがある(2008年労働基準監督年報)。