1,000万組織に向けた組織化活動の今後の対応など確認/連合の中央委員会

(2012年10月05日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長、約670万人)は3日、都内で中央委員会を開催し、2013年度活動計画を決定した。また、今後8年にわたる組織化方針である「1,000万連合実現プラン」に基づく今後の対応などについて確認した。野田佳彦首相が来賓として出席し、あいさつした。

写真・あいさつする古賀会長、連合の中央委員会

許容範囲を超える社会の不安定化

あいさつした古賀会長は、わが国の社会・経済の現状について、非正規労働者が全雇用労働者の35%を占め、年収200万円以下で働く層が1,100万人を超えていることなどをあげたうえで、「社会の不安定化が許容範囲を超えている状況に陥っている」と強調。「今こそ、厚みのある中間層を基盤とした社会の再構築のための具体策の実行が求められている」と述べ、最低賃金の引き上げやパート・非正規労働者の公正・均等待遇といった働く者への支援と税・社会保障を通じた所得再配分機能の強化をトータルに推進する必要があると主張した。

超高齢化と人口減少が今後進むことから、「これまでの高度経済成長を前提としたシステムから、成熟した社会・経済環境にふさわしい仕組み・システムを構築する必要がある」として、高齢者や女性の就労促進や社会保障支出の「全世代支援型」への転換などによって、「将来の日本社会を支える人材を育成する視点も必要だ」と強調。そのうえで「今後ともわが国は『働くこと、働く人』が主役の社会をめざすべきだ」と述べた。

大きい期待の分、失望感も大きい

民主党政権については、古賀会長は「政権交代から3年が経過した。政権交代に大いなる期待を抱いた分、失望感が大きいことは事実」としたうえで、「しかし、政治とは政治家だけが行うものではなく、有権者も含めたシステムだ。民主党政権発足以降の課題も成果も、『政権交代がある政治』を定着させ、議会制民主主義を成熟させていくプロセスの途上にほかならない」と擁護した。

「一人ひとりの有権者の意識と行動もまた問われている」としながら、「現実の政治や生活に向き合うなかで一つひとつ解決していく以外にない。期待と落胆を繰り返しても何も生み出さず、現状に失望してヒーローの登場を期待しても幻想にすぎず、決して解決できる訳ではないし、民主主義のプロセスには相応の時間と手間を要する」と持論を展開した。

離党は国民の信頼を得られない

政党名は言及しなかったが、日本維新の会など第三極の動向を念頭においた発言も行った。「今、既成政党への幻滅を背景に『政敵』を作りあげ、歯切れの良い政策で有権者の期待を集めている新しい政党や政治集団も生まれている。しかし、私たち働く者や生活者に主軸を置き、政策を共有し得るのはやはりいまも民主党だ」と強調。一方、民主党を離党する議員の動きについて、「与党としての責任に背を向け、勢いのあるグループにすり寄ろうとする議員も存在する。そのような行動は決して国民の信頼を得られない」と批判した。

労働条件底上げやディーセントワークなどが柱

中央委員会で決定した「2013年度活動計画」は、震災復興のほか、「1,000万連合」を展望した運動や、労働条件底上げのための社会運動、ディーセントワークの実現などが柱となっている。1,000万連合に向けたこのさき1年間の取り組みとしては、初期対応策の3項目としている (1)意識改革、 (2)対応部署の新設、 (3)組織化ターゲットの共有化、の取り組みを通じ、構成組織などへの理解・浸透の強化を図る。連合本部、構成組織、地方連合会などが相互に連携して、組織拡大に関する情報の共有化に取り組み、2015年9月までの組織拡大目標数を設定するとした。

非正規労働者も含めた労働条件底上げに向けた社会運動としては、非正規労働者の仲間づくりの運動のである「職場から始めよう運動」の取り組み事例集を作成し、好事例の共有化を図るとしている。

政策・制度の取り組みでは、7月にとりまとめられた「日本再生戦略」の実績を検証・フォローアップする仕組みを構築するとともに、非正規労働者への社会保険適用拡大などインクルーシブ社会の実現に向けた取り組みをするとしている。

労働条件の底上げとディーセントワークの実現では、政府の基本政策として雇用・労働の原則を示した「雇用憲章」(仮称)の制定に取り組むほか、地域でも労組も関与して産業政策と連携した雇用創出の取り組みを強化する。春季生活闘争では、各共闘組織の強化によって格差是正・底上げの運動を展開する。

来年9月までに対象リストを作成

2013年度活動計画とはまた別に確認した「1,000万連合」実現に向けた今後の対応では、2013年1月までに、各構成組織が現時点で組織化対象としているすべての未組織企業や産別未加盟労組をピックアップした「拡大対象リスト」(仮称)を作成するとした。これにあわせて、連合本部は、地方連合会などから提供される、構成組織の拡大対象となり得る各地域の企業・労組情報を当該構成組織に伝える役割を果たす。

リストのなかで、連合と構成組織が連携した方が組織化の可能性が高まる企業・労組もあることから、そうした「横断的組織化」の対象となる企業・労組の選別を2013年3月までに決定するとしている。

一方、地方連合会でも、地方の構成組織と情報交換しながら「拡大対象リスト」を2013年6月までに作成する。

エネルギー政策について構成組織から発言

活動計画についての討議では、エネルギー政策について、電機連合とJR総連が発言。電機連合は、「ものづくり産業を維持・発展させるにはエネルギーの安定供給が必要。原子力エネルギーに依存しない社会をつくるにしても、それに代わるエネルギーの確保が大前提。実現性を踏まえたうえで時間軸を意識した論議を行い、必要あれば見直すなど慎重かつ柔軟な目標設定と達成に向けた不断の取り組みをしないといけない」と述べた。JR総連は「絶対安全が担保できない原発の再稼働について認めることはできない。原発に依存しない社会をつくることこそが子どもたちの将来に責任を持つ大人の責任であり、労働組合の責任だ」と述べたうえで、原子力エネルギーに依存しない社会をめざすという方向は、「労組の存在意義を明確にすると同時に、社会に対するたいへん重要なメッセージである。連合として社会に強く発信すべき」と要望した。

3つの元気に向け政策を進める

中央委員会には野田首相が駆けつけ来賓あいさつした。野田首相は、「経済再生や良質な雇用の創出とあいまって働く人を一層元気にする仕組みができつつある。連合が提唱する働くことを軸とする安心社会の方向をめざして、民主党が民主党らしさを発揮することによって、これからも子ども元気、地方の元気、働く人の元気を取り戻すための政策を着実に進める」などと述べた。第23回参議院比例代表選挙の連合組織内候補9人(現職5人、新人4人)が登場してのメッセージ発信も行われた。