「150万全労連」の実現をめざす方針を確認/全労連定期大会

(2012年08月01日 調査・解析部)

[労使]

全労連(大黒作治議長、約86万人)は7月29日から3日間、横浜市で定期大会を開き、向こう2年間の運動方針を決めた。方針では、組織人員150万人をめざす中期計画を確認。その具体化に向けて、すべての構成組織が「4年で10%以上の純増を実現する」としている。役員改選では、大黒議長、小田川義和事務局長らが再任された。

「安心・安全社会」などを柱に

向こう2年間の運動方針は、 (1)「安心・安全社会をめざす大運動」(全労連大運動)の取り組み (2)組織拡大に向け「新中期計画」の実践 (3)憲法擁護、安保破棄運動の再強化――の3本を柱にすえた。

写真・定期大会のようす遠景、大黒議長あいさつ

第1の「安心・安全社会をめざす大運動」では、経済効率重視の日本社会からの転換をめざし、原発再稼働反対、消費税増税阻止、年金、医療、介護など社会保障制度の拡充などへ総力を結集する。昨年11月の「全国集会2011」で議論した4つの挑戦( (1)労働者・国民の暮らしの実態などの「可視化」 (2)もっとも困難な状況にある労働者の実態改善 (3)働いて人間らしく暮らせる社会をめざす制度改善 (4)広範な労働者・国民との総対話と共同)の実践を進め、労働者要求の実現をめざす方針だ。

第2の組織拡大では、2012年度から向こう4年間で取り組む「組織拡大新中期計画」を打ち出した。「150万全労連」をかかげ、すべての単産・地方組織に4年で10%以上の純増を求めたのが特徴となっている。

全労連の組織人員は減少傾向が続いており、医労連など一部の単産では組織拡大に成功しているものの、自治労連や全教は団塊の世代の大量退職分を埋め合わせるには至らず、全体で毎年10万人近くが組合を離れる状態にあるという。全労連では年金者組合も含めた組合員を約113万人と集計しているため、目標の4年後に「150万全労連」に到達するには、毎年20万人近くの組合員確保が求められることになる。

各構成組織は4年で10%以上の純増を

こうした情勢も踏まえ、新中期計画には、「すべての単産・地方組織は4年間で10%以上の純増実現」に加えて、「既存組織では毎年10万人の組織拡大」「友好・中立組織との共同と連帯を広げ、新規組合の結成とあわせて4年間で20万人の組合員獲得をめざす」ことを盛り込んだ。前半戦と位置づける2013年度までは、組合員数の減少に歯止めをかけ、増勢に転じる2年間と位置づけ、単産では、 (1)職場の過半数以上の組織化 (2)空白県における加盟組織の立ち上げ (3)関連する未組織労働者の組織化――を軸に計画を策定する。地方組織では、 (1)地方労連に未加盟の全労連傘下組合の結集 (2)非正規労働者を含む未組織労働者の加入促進 (3)常設労働相談センターやローカルユニオンなど組織化の受け皿の確立・強化――を中心に組織化を進める。このうち、非正規については、職場の過半数確保に不可欠なことから、「総対話」運動を軸に、非正規の雇用保障(事実上の有期雇用の撤廃)、賃上げ(最低賃金を1,000円以上)、均等待遇などのルールづくりを進め、4年間で20万人の組織拡大をめざすとする。

なお、組織拡大に関しては、今年の秋闘でも、組織内外の労働者「100万人」との総対話行動や、実態アンケートなどに取り組む方針だ。

大黒議長はあいさつで、組織拡大について「1日も早く増勢へと転じ、中期計画にある150万全労連の目標達成に努力したい」と強調。そのうえで、「高まる社会的運動との連帯を強め、春闘や働くルールの確立に向けた闘いのなかで、組織の拡大・強化を位置付けていこう」と呼びかけた。

雇用安定の取り組みも強化

方針で重点課題とする雇用問題については、「労働者の使い捨て状態が貧困と格差を深刻化させ、賃金低下とデフレ要因になっている」との現状分析を示した上で、「解雇、失業に反対し、雇用の安定をめざす取り組みを強化する」ことを強調。有期雇用規制、派遣労働規制強化、パート労働法抜本改正などの労働法制の取り組みを進めると同時に、若年層への不安定雇用の広がりを踏まえ、「若者にまともな雇用を」運動(アクション)の具体化を進める。

また、賃金低下に歯止めをかけることも重視し、ベアにこだわった賃金交渉、全国一律最低賃金・時給1,000円の実現、公契約運動の発展、労働時間短縮などを打ち出している。

このうち、公契約運動については、千葉県野田市、神奈川県川崎市、相模原市、東京都多摩市など、条例を制定する自治体が広がりをみせていることから、「成果を勝ち取る実践の段階に入っている」として、実現をめざす重点自治体を設定する考えだ。

秋闘での具体的な取り組み

秋闘では、今大会で提起された運動方針を軸に、具体的な取り組みを進める。主要課題としては、原発ゼロの日本、消費税増税阻止、撤回要求を掲げ、年金、医療、介護、保育、生活保護など社会保障制度の拡充と教育予算拡充など個別要求の2013年度予算への反映を求める。さらに、東日本大震災からの早期復興をめざす取り組みとして、被災地における雇用実態調査を10月に実施。調査結果を踏まえて、政府に交渉を求める。

雇用安定に関しては、全国規模で工場閉鎖を打ち出したルネサスに対する抗議行動、ディーセントワーク署名の年内目標達成、JAL争議の勝利解決などに力を注ぐ。賃金、労働時間については、地域最低賃金の引き上げ、時給1,000円の実現をめざす取り組みを継続。公務員賃金、公務関係労働者への賃下げの強制に反対し、共同の取り組みを強化し、「さよなら24時間型社会」キャンペーンの具体化も進める。

なお、討論では、「定年退職者に組合加入を呼びかけていきたい」(年金者組合)、「長野日赤では新規採用者の加入が進み、県労連では4年連続の増勢となった」(長野県労連)、「非正規労働者部会を立ち上げ、正規と非正規が一体となり非正規問題に取り組んでいく」(大阪労連)などの意見が出される一方で、「10%の純増目標を含む中期計画案の議論が不十分ではないか」(群馬県労連)との声もあがった。