統一闘争に独自要求の領域を設定/電機連合の定期大会

(2012年07月11日 調査・解析部)

[労使]

写真・檀上のようす遠景、有野委員長あいさつ

電機業界の産業別労働組合である電機連合(有野正治委員長、約58万人)は9、10の両日、横浜市で定期大会を開催し、向こう2年間の運動方針を確認した。毎年春の労使交渉では賃金のベースアップのない春闘が続き、「賃上げ春闘に対する閉塞感がある」との意見もあるとして、賃金の「上げ幅要求」がないなかでの産別統一闘争強化策の方向性を提起。賃上げや一時金などストを背景に交渉する従来の項目に加え、各組合が独自に処遇改善に取り組む項目も統一闘争に組み入れていく考えを打ち出した。

産別がめざすべき水準を提起

電機連合では、賃金や一時金などの基本的な労働条件については、最終的な妥結目標が未達の場合にストライキなどの闘争行動の対象となる統一要求基準(いわゆる「歯止め」)を設定。大手組合はスト権を産別に委譲して、「歯止め」をかけて産別統一的に交渉する。2012春闘での歯止め基準は、賃金では「賃金体系の維持」(現行水準の維持)、一時金では「年間4カ月」であった。

賃金については、近年、ベースアップのない「賃金体系の維持」での決着が続いている。そうした状況もあり、電機連合では「賃上げ春闘に対する閉塞感がある」との指摘もあるとして、賃上げがないなかでの統一闘争の強化策を検討。今後の統一闘争の基本的な考え方として、統一闘争の項目を、 (1)「確実に取り組む項目」、 (2)「『めざす』取り組み項目」、の2つの領域に整理すると提起した。2つの領域での取り組みを着実に図ることで交渉力強化の相乗効果を導き出すとしている。

具体的には、「確実に取り組む項目」では、これまでの統一闘争と同じように、賃金や一時金、産別最低賃金(18歳見合い)などについて、「歯止め(スト権委譲)」を前提に取り組む。一方、「『めざす』取り組み項目」では、賃金(基幹労働者)の「政策的に」めざすべき水準に向けた賃金改善や退職金、エイジフリー社会に向けた取り組みなどが想定される。なお、賃金のめざすべき水準については、電機連合の現行の賃金政策(第6次賃金政策)との整合性を図り検討するとしている。

あいさつした有野委員長は、「『めざす』取り組み項目」について、「目標水準達成のためには、それぞれの組合が達成プログラムをたて、それに向かって交渉を進めていくことになる。この領域は賃金に限らず、退職金、労働協約、旅費、福利厚生などすべての処遇制度が入って広範囲になる。電機連合としては賃金政策にかかわらず、処遇制度全般にわたり、企業規模や業種に合わせためざすべき水準等を提起していく必要がある」と説明。そのうえで、「デフレ経済下で統一ベアに取り組めない場合でも、一定の業績の組合が独自の判断で何らかの処遇改善に取り組みやすくするための仕組みが必要であるとの考え方だ」と背景を述べた。

グローバル対応にも着手

方針ではまた、電機産業内でも企業のグローバル展開が一層進展していることから、具体的な対応策も提起した。1つめは、グローバルネットワークの構築。「グローバル化対応プロジェクト」(仮称)を設置し、海外の現場での中核的労働基準の遵守や労使紛争の未然防止に努める。単組レベルでは、海外現地法人に組合の有無を確認し、ある場合には現地を訪問した際に交流することなどを促すとしている。

2つめは、外資系企業への対応で、外国資本が注入された加盟企業労組の合理化対策への対応などについて、組合同士が情報交換できる場を設置する。3つめは、海外労使紛争の防止。電機連合の加盟組合が進出している国の政府機関や労組などとの交流を通じて、産業政策や経営対策に役立つ情報を収集し、単組に提供するとしている。

電機産業の発展に向けては、引き続き政党や省庁との政策協議などに取り組む。有野委員長はあいさつのなかで、電機産業の現状について「『開発から製造まで自社で抱える』という日本の電機産業の事業モデルが、スピードあるグローバル競争のなかで勝ち残るために、生まれ変わることができるのか試されている」とし、「不振事業の切り捨てなどの縮小均衡はもはや限界であり、一刻も早く新規成長事業を取り入れていかなければ先は無いと言っても過言ではない」と危機感をにじませた。

組織化は2万人拡大が目標

この1年間で1万5,000人組合員が減少したことから、組織拡大の取り組みも強化する。今後2年間の新規拡大目標を2万人と設定。地協とも連携して、地場企業の組織化にも力を入れる。

報告事項では、2012春闘の評価と課題などが報告された。中堅・中小を中心とする賃金の格差改善や賃金カーブのひずみ是正については、格差是正に取り組んだ組合が41組合で、改善が図られた組合が23組合。ひずみ是正に取り組んだ組合が18組合で、前進が図られたのが11組合だった。構成組合からは、一時金について、「半期協定の組合では66%が産別ミニマムの4カ月を割ったとのデータもある。経営側が産別ミニマムの4カ月についてどれだけ認識しているか、課題意識を持っており、とくに中堅・中小について経営側の意識の格差を埋める取り組みが必要ではないか」(ケンウッドグループユニオン)との意見が出された。