2013労働条件改善交渉方針等を決定/JSD定期大会

(2012年06月27日 調査・解析部)

[労使]

百貨店やスーパーなどの組合でつくる、サービス・流通連合(JSD・八野正一会長、約22.3万人)は19~20日、都内で定期大会を開催し、「2013労働条件改善交渉方針」等を決定した。11月6日のUIゼンセン同盟との新産別結成注1を控え、JSDとして今年度に取り組む課題などを提起している。

今春闘で3月15日までの要求提出は約6割

大会では、統一的な目標を設定して5年目となる、2012労働条件改善交渉(「春の交渉」と「通年交渉」注2を総括した。交渉には197登録組織が臨んだが、目標とした3月15日までに要求を提出できたのは117組織(約6割)にとどまった。また、統一的組織行動期間である2~4月までに、交渉を終結できたのは147組織(約75%)だった。

要求・妥結内容をみると、月例賃金について改善を要求したのは33組織、定昇のみ・賃金体系維持を要求したのは136組織、賃金カーブについては要求せずが8組織だった。これに対し、妥結状況は賃金改善実施が16組織(昨年14組織)、定昇のみ・賃金体系維持が95組織(67組織)、賃金カーブダウンが2組織(7組織)、その他が9組織(4組織)となった。

平均賃金方式の具体的な妥結額は、単純引上額が4,117円・1.48%(昨年は3,704円・1.33%)、体系維持分が3,701円・1.31%(3,661円・1.31%)、賃金改善分が2,315円・0.90%(587円・0.24%)だった。

また、パートタイマーの時間給については、賃金改善の実施を要求したのが20組織、定昇のみ・賃金体系維持68組織、賃金カーブについて要求せずが23組織で、これに対する妥結状況は、賃金改善実施が7組織(昨年3組織)、定昇のみ・賃金体系維持が50組織(45組織)、定昇維持できずが10組織(4組織)、その他が3組織(3組織)だった。

妥結額は、正社員と職務・人材活用とも同じパートについては、11.1円・1.00%(昨年16.1円・1.3%)、職務のみ同じパートでは10.9円・1.1%(9.4円・1.0%)、職務内容が違うパートは7.8円・0.89%(8.2円・1.1%)となり、全体で8.5円(10.1円)だった。

臨時賃金(年間一括妥結)は平均2.76カ月

生活給として「3カ月以上」の水準維持・復元を目標に掲げた臨時賃金をめぐっては、年間一括で妥結したのが39組織(昨年47組織)、前期のみ妥結・別途対応で決着したのが21組織(21組織)となった。年間では2.86カ月(昨年2.88カ月)の要求に対し、妥結は年間2.76カ月(3.24カ月)だった。また、前期(夏)のみでは、1.29カ月(1.35カ月)の要求に対し、1.26カ月(1.43カ月)で妥結した。

一方、通年的に取り組む労働条件改善交渉として、均等・均衡待遇の実現については92組織が取り組んでおり、パートタイマーの社員転換制度を整備済みは88組織(昨年79組織)、昇給ルールの明確化を整備済みは93組織(86組織)、慶弔休暇の付与基準が正社員と同様は78組織(76組織)、通勤手当の支給基準が正社員と同様は76組織(72組織)、職務や成果に応じた一時金の支給制度ありが62組織(59組織)――にのぼっている。

また、労働時間に関する協定化では、年間所定休日を目標の104日以上で協定化したが132組織(昨年119組織)となった。休日が増加したのは7組織(14組織)で、削減が4組織(1組織)だった。年次有給休暇の取得状況は、いわゆる正社員が平均5.9日(5.4日)に対し、契約社員が8.2日(8.0日)、パートタイマーが9.9日(9.3日)などとなった。

総括では、「昨年を上回る組織が何らかの形で取り組むことで、産別全体としてワークルールの改善が進み、労働条件の底上げに着実につながっている」としている。

2013春闘は新産別で展開へ

こうした総括を踏まえたうえで、2013労働条件改善交渉は「いよいよ新産別の結成を実現していく中での運動展開になる。国内最大の民間産別になると同時に、もっとも多くの有期契約労働者を組織化するという側面も有する」。

そのため、方針では「全加盟組合が産別組織に結集し、『統一と団結の力』の発揮による目標到達を目指し、統一的運動を推進する」とし、「優先順位の高い基礎的な労働条件につき、全組織で共有化できる目標を提示する。ミニマムを重視したワークルールの改善と、生活を支える基本となる賃金に対する目標設定を行う」などとした。

ワークルール改善(通年交渉)の取り組みは、「JSD、UIゼンセン同盟の双方が、これまでの運動を継続実施していく」ことになるが、JSDとして少なくとも本年度は、 (1)均等・均衡待遇に向けた各種制度の協定化等 (2)両立支援制度の拡充 (3)労働時間に関する協定化――を継続項目に据える。また、新たに (4)65歳までの雇用確保 (5)(勤務間インターバル規制制度の導入に取り組むに当たって)所定勤務終了時から次の所定勤務開始までに休息時間(目標12時間)を確保するルールの協定化――を設定。さらに、時間外・休日等割増率は、実態としてほとんどの組織が法定にとどまっていることから、目標を (6)「月間45時間超の時間外割増率50%以上」へ変更するなどとした。

なお賃金交渉に関しては、「新産別としての闘い方を、産別統一闘争とするか否かは方針として議論・決定する」が、仮に産別統一闘争を実施する場合でも、「JSD加盟組合については、2013年の統一闘争は原則不参加」としたうえで、「統一的な要求基準に沿った要求を掲げ、スケジュールを順守し情報開示を徹底する」などとしている。

注1「UIゼンセン同盟と産別再編統合する方針を決定/JSD臨時大会」(2012年04月20日 調査・解析部)

注2:「春の交渉」では、年収ベースでの賃金水準の復元に向け、「賃金体系維持分の完全実施」や「上積みが可能な組織での積極的な賃金改善要求」「パートタイマー・契約社員の処遇改善」等を取り組みの柱に据えた。また、「通年交渉」では、「均等・均衡待遇の実現」「両立支援制度の拡充」「労働時間に関する協定化」を目標に、それぞれに必須取り組み項目を掲げて臨んだ。