2011年度の脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況を公表/厚生労働省

(2012年06月20日 調査・解析部)

[行政]

厚生労働省は15日、2011年度の「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」を公表した。くも膜下出血や心筋梗塞などの過労死の労災補償の請求件数は、前年度より96件多い898件(うち死亡302件)で、2年続けて増加した。これに対し、支給決定件数も同25件増の310件(同121件)となり、4年ぶりに増加に転じた。また、精神障害に関する労災補償の請求件数は同91件増え、過去最多の1,272件(うち自殺(未遂含む)202件)で、3年連続して1,000件を超えた。支給決定件数も同17件増の325件(同66件)で、同じく過去最多となった。

脳・心臓疾患の労災補償
請求、支給決定とも道路貨物運送業が最多

くも膜下出血などの「脳血管疾患」や、心筋梗塞などの「虚血性心疾患等」は、過重な仕事が原因で発症する場合があり、「過労死」とも呼ばれている。同省では、これらの状況や、仕事のストレスによる精神障害の状況について、2002年から年1回、労災請求件数と、業務上疾病と認定・労災保険の給付を決定した支給決定件数等をまとめている。

平成23年度のまとめによると、脳・心臓疾患に関する労災補償の請求件数を業種別(大分類)にみた場合、「運輸業、郵便業」(182件、20%)、「卸売業・小売業」(143件、16%)、「製造業」(132件、15%)の順に多く、これらで半数を超える。支給決定件数も同様に、「運輸業、郵便業」(93件、30%)、「卸売業・小売業」(48件、15%)、「製造業」(41件、13%)の順に多く、これらで約6割を占める。

中分類の業種別にみると、請求件数、支給決定件数とも「運輸業、郵便業」の「道路貨物運送業」(123件、75件)がもっとも多い。

これを年齢別にみると、請求件数、支給決定件数ともに「50~59歳」(314件、119件)、「40~49歳」(228件、95件)、「60歳以上」(227件、60件)――の順に多い。請求件数では40代が25%、50代が35%とこれらで6割、支給決定件数では40代が31%、50代が38%とこれらで約7割を占める。

震災関連は請求17件、支給決定12件

脳・心臓疾患で支給決定された事案を、1カ月平均の時間外労働時間数別にみると、「80時間以上100時間未満」がもっとも多く105件(うち死亡43件)、次いで「100時間以上120時間未満」が58件(同24件)、「120時間以上140時間未満」が46件(17件)――などとなっている。

なお、同省によると、昨年3月に発生した東日本大震災に関連し、脳・心臓疾患の労災補償が請求された件数は17件で、うち12件が支給決定に至っている。

精神障害の労災補償
事務と専門・技術の従事者で請求半数超、支給決定4割以上

一方、精神障害に関する労災補償状況を職種別(大分類)にみると、請求件数は「事務従事者」(323件)や「専門的・技術的職業従事者」(318件)が多く、全体の半数を占め、これに「販売従事者」(167件)が続く。支給決定件数も「専門的・技術的職業従事者」(78件)や「事務従事者」(59件)で4割以上を占め、これに「販売従事者」(40件)が続く。

年齢別にみると、請求件数については「30~39歳」が420件で全体の3分の1を占め、次いで「40~49歳」が365件で29%、「20~29歳」が247件で19%などとなっている。支給決定件数も同じく、30代が112件で34%、40代が71件で22%、20代が69件で21%などの順となっている。

精神障害の支給決定件数を、それを引き起こした出来事別にみると、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」がもっとも多く52件(16%)、次いで「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」が48件(15%)、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」が40件(12%)などとなっている。

なお、、震災関連で精神障害の労災補償が支給決定されたのは、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」の16件と、それ以外の4件で計20件となっている。