1000万連合の実現に向けた取り組みを決定/連合中央委員会

(2012年06月01日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は5月31日、宮城県仙台市で中央委員会を開いた。昨年10月の定期大会後に立ち上げたプロジェクトチームが提起した2020年までの組織拡大計画「1000万連合実現プラン」を受けて当面の取り組みを決定。2013年度の重点政策や、2012春季生活闘争の中間まとめも確認した。

1000万連合の実現に向けた取り組みを決定/連合中央委員会(メールマガジン労働情報 No.822:2012年06月01日 調査・解析部)

連合は昨年の定期大会で、組織化戦略の方針転換を行った。それまでの2カ年ごとに組織拡大の短期目標を設定することをやめ、中長期目標として、連合が結成時からのターゲットとしてきた「1000万連合」の具現化に向けた組織化手法を打ち出すことにした。具体的には、大会後、プロジェクトチーム(PT)を立ち上げて検討を重ね、ロードマップや推進体制、取り組みのポイントなどを内容とする「1000万連合実現プラン」を策定した。

経験豊富な組織拡大担当者不足も要因

連合の組合員数は結成時の789万人をピークに減少を続け、現在は約675万人にまで落ち込んでいる。非正規労働センターを立ち上げた2007年以降をみても、パートタイマーなどの非正規労働者133万人の組織化を実現した一方で、既存の組合員が171万人減ったため、総数では38万人の減少になっている。

同プランは、組合組織の縮減に繋がった背景に、 (1)多くの労働現場で企業の分社化や再編、海外移転などが多発したことによる正社員組合員の激減 (2)景気回復のなかでの労働の担い手としての非正規社員の登用の進行 (3)定年退職再雇用者に対する組合継続加盟への取り組み不足 (4)若年者の離職率の高まり (5)組合への無関心層の増加 (6)個別紛争時の金銭解決手段の簡素化による組合加入意識の低下 (7)多様な雇用形態に対する組織化への対応不足 (8)100人未満の中小地場の組織化への体制不備や役員の力量不足――などがあると指摘。こうしたなかで、「団塊世代の大量退職や企業分割による組合員の脱退などの進行により、現状維持さえ難しく、局面を打開すべき経験豊富な組織拡大担当者不足も大きな要因になっている」とする。

産別主体の組織拡大方針を見直す

同プランが設定する1000万人の目標達成年度は2020年。「日本の労働界に与えられたラストチャンス」との認識で今後8年間での実現をめざし、本部・構成組織(産別)、地方連合会が相互連携を強め、一体的な取り組みを行う考えを示している。

具体的には、「組織拡大の主体は構成組織(産別)、連合はその環境整備」としてきた従来の役割を見直し、連合本部と構成組織、地方連合会のそれぞれに「横断的組織化行動推進部署」を新設。個々の産別・単組だけでは進みにくいマスコミ、金融などの未開拓の産業分野や連合未加盟産別、建設や医療福祉などの連合未加盟(大手)組合、中小未組織企業、下請け企業などの組織化に三位一体であたる構えだ。

同プランの報告を受け、中央委員会では、その第Ⅰ期の取り組みとして、 (1)当面の対応として、2013年10月までの具体策を検討する「1000万連合」実現プラン推進PTの設置 (2)連合本部役員による組織拡大総対話行動の実施 (3)1000万連合実現中央集会の開催 (4)中央・地方での横断的組織化推進部署の設置――などの初期対応の取り組み内容を確認した。

集団的労使関係は社会的に必要なインフラ

古賀会長はあいさつで、「組織の力は数に下支えされた運動量の総体。多種多様な仲間の結集が社会の公器たる労働組合の社会的役割の拡大につながる。集団的労使関係が社会的に必要なインフラであり、その拡大は組織された私たち労働組合の責任だ」などと強調。「本部・構成組織・地方連合会の三者が相互連携を強め、共同責任を持ち一体的に取り組むには、相互信頼が何より不可欠。そして、三者が組織拡大に向けた機能をこれまで以上に強化していく必要がある。課題山積だが、2020年に必ず1000万連合を実現するとの強い決意と計画の具現化に向けて全力をあげよう」と訴えた。

震災からの復興・再生や分厚い中間層の復活を/2013年度重点政策

一方、中央委員会では、2013年度に連合として実現をめざす重点政策を確認した。地域経済を担う中小企業への支援や瓦礫処理と除染の着実な実施などの「東日本大震災からの復興・再生」を最重視するほか、医療・介護、子育て、環境・エネルギー、観光などの分野の雇用創出や若年者雇用対策の強化などによる「分厚い中間層の復活につなげる経済・産業政策と雇用政策の推進」、労働契約法・高年齢雇用安定法・労働安全衛生法の労働関連法の早期改正などによる「ディーセントワークの実現」や「社会保障と税の一体改革の実現」などを求めていく。

連合は2年に1度、政策・制度要求を策定している。今年は中間年にあたることから、重要度の高い課題を重点政策として掲げた。

不十分だが生活防衛の歯止めはかけた/2012春闘中間まとめ

このほか、「2012春季生活闘争の中間まとめ」も確認した。まとめによると、5月9日時点で平均賃上げ方式を採る3035組合の回答額は加重平均で5,006円(引き上げ率1.74%)。前年同時期に比べ、額で64円、率で0.01ポイントマイナスとなっている。昨年との比較が可能な2431組合の平均は5,070円(同1.76%)で、前年同期比63円、0.02ポイントのプラスとなった。

一方、妥結した組合のうち、賃金改善分を獲得した組合は全体の9.5%。賃金構造維持分を確保できなかった組合は同3.9%だった。また、300人未満の中小組合のうち、中小共闘が定昇相当分とする4,500円を上回る回答を引き出した組合は30.5%で、昨年同期を5.4ポイント下回った。パート労働者の時給引き上げでは、妥結した141組合の平均額14.52円で、昨年の同時期より4.09円高くなっている。

なお、一時金については、年間月数で回答を受けた1,785組合の平均は4.36カ月(前年比0.34カ月減)、金額集計(849組合)では144万1,767円(同4万6,393円)だった。

こうした回答状況について、中間まとめは、「現在のところ大半の組合は賃金カーブ維持分を確保し、概ね『昨年並み』の賃上げを獲得している。賃金改善分の回答を引き出したところもある。決して十分とはいえないものの、厳しい交渉環境のなかで賃金カーブ維持といった最低限の目標は達成でき、生活を守るための歯止めを辛うじてかけることができた」などと総括している。今後、分析などを行い、7月には最終まとめを行う予定。