年間収入の確保に向け前年同水準の特別手当を要求/NTT労組の2012春闘方針

(2012年02月17日 調査・解析部)

[労使]

NTT東西やドコモ、データなどNTTグループ企業の労組で構成する、NTT労働組合(18万1,000人)は15日、都内で中央委員会を開き、2012春闘方針を決めた。昨年に続き、月例賃金の改善要求を見送る一方、年間収入の確保に向け、特別手当(一時金)は年間臨給方式で、「40歳・一般資格1級」の基準内賃金をモデルに、前年要求水準を基本に求める。

「今春闘も復興・再生への道程にある」(加藤委員長)

加藤友康委員長はあいさつの中で、今春闘を取り巻く情勢に触れ、「昨2011春季生活闘争は3・11東日本大震災への対応を最優先に、緊急的扱いとして労・使が異例の決断をしてきた。今春闘も復興・再生への道程にある」などと述べた。

方針は、今春闘を「東日本大震災からの復興・再生とすべての働く仲間の生活改善に向けた総合生活改善闘争」と位置づけ、(1)生活の維持・防衛の観点に立った年間収入の確保(2)格差是正に向けた非正規労働者の処遇改善(3)ワーク・ライフ・バランスの充実――を取り組みの柱に据えた。

一時金は昨年の要求水準を基本に

年間収入の確保については、特別手当(一時金)の要求に重点を置き、「年間臨給方式」で「NTTグループ統一モデル(40歳・一般資格1級)の基準内賃金(地域加算手当は除く)」をベースにする考え方を踏襲しつつ、前年要求水準(年間134万3,000円)を基本に、各社の事業・経営動向を見極めながら、各企業本部で要求化を図ることとした。統一交渉日は3月7日とし、昨年に続きストライキ権の確立を含む闘争体制で満額回答を目指す。

NTTグループ連結の2011年度の通期業績予想は、売上高10兆5,400億円、営業利益1兆2,500億円と堅調だが、企業別にみると、NTTドコモの占める割合が売上高で4割、営業利益で約7割を占めるなど隔たりがある。今年は、東日本大震災からの復興・再生を最優先することも勘案し、月例賃金の改善要求は見送った。

また、中央委員会では、「採用から65歳まで働きがいをもって安心して働き続けられる制度」の確立を目指し、「NTT労組としての基本スタンス」(注)を提起しつつ、今後、主要8社との間で具体的な労使間論議を行っていく方針も決定した。

非正規労働者の社員登用制度や月給化等も要求

非正規労働者(グループで推定約6万人。うち約1.5万人を組織化)の処遇改善については、「社員登用制度の確立・充実」や「時給制から月給制」への転換、「各社の業績等を勘案した特別手当等における配分と特別手当の制度化」のほか、各企業本部のこれまでの経緯に基づく諸要求等に取り組むことを盛り込んだ。

また、非正規労働者の賃金水準の底上げに向け、「情報労連最賃協定」の締結の維持・拡大も目指す。

ワーク・ライフ・バランスに関しては、「時間外労働等割増率の法定を超える水準の設定に向け、各企業本部で要求化を図る」ほか、「休息時間の確保(勤務間インターバル規制)を含め、年間総労働時間の短縮に向けた労使対応を行う」などとしている。

「安全対策ガイドライン」を策定

このほか中央委員会では、一般経過報告の中で野田三七生・書記長が、東京電力福島第一原発事故に伴う警戒区域等での作業に当たり、組合員・社員の安全や健康を最優先するため、NTTグループ統一の「安全対策ガイドライン」を策定したことも報告した。

今年1月現在で協力会社社員を含めて約770人が警戒区域等での復旧作業に従事しているが、今後、除染作業が進むにつれ、回線開通要請等の増加が見込まれることから、引き続きこれを準用するとした。

注:現行賃金制度の「成果・業績を重視する」設計精神を踏襲するとともに、今次見直しでは (1)60歳定年制を維持した上で60歳以降の安定した雇用や働きがいにつながる仕組み作りを目指す (2)雇用の安定・確保や人材の育成・交流等を考慮し、NTTグループ主要8社の「共通のプラットフォーム賃金」とする (3)2002年の構造改革時にNTT東・西、ファシリティーズ、コムウエアで導入した「雇用選択・処遇体系の選択」については廃止を前提に会社対応を行う――考え方等を示している。