地方公務員に自律的な労使関係を/自治労中央委員会

(2012年02月01日 調査・解析部)

[労使]

地方自治体の職員や公共サービス民間労働者等で構成する自治労(徳永秀昭委員長、約83.6万人)は1月26~27日、都内で中央委員会を開き、2012春闘要求方針と当面の闘争方針等を決定した。徳永委員長はあいさつで、昨年12月26日に総務省が、「地方公務員の新たな労使関係に関する論点」を民主党の公務員制度改革PTに示したことに触れ、「地方公務員の自立的労使関係に関わっては、消防職員への団結権付与を含む、地公法改正案の今国会への早期提出・成立を不退転の決意で臨む」などと強調した。

「関連4法案の今国会中の成立に向け取り組みを強化」(徳永委員長)

あいさつした徳永委員長は、政府・民主党が2011年度人事院勧告の実施を見送り、国家公務員の給与を2013年度まで平均7.8%削減する、給与臨時特例法案の早期成立を目指すなか、一部マスコミでは人勧実施の上で7.8%の削減が検討されているなどと報道されていることに触れ、「昨日協議した民主党幹部からは、(5月に)労使合意した内容を前提に、関連4法案の成立と地方遮断などを含めた確認が合意条件だ、マスコミ報道に惑わされることなく、事態をしっかり見極めてもらいたいと言われた」などと説明した。

そのうえで、「見解としては慎重にならざるを得ないが、国家公務員制度改革関連4法案の早期審議入りと可決成立の見通しがあるのかどうか、全ての地方関係者が求めている通り『地公遮断』を改めて確実にするという2点で確実な見通しがあるのなら、『5月労使合意』から1ミリも動かしてはならない、と言うつもりはない。給与削減については、基本的には国公の問題であり評価は避けるが、この間強調している通り労働基本権と人勧は裏腹の関係にある。今後も政府・民主党の動きを厳しくチェックし、関連4法案の今国会中の成立に向け、引き続き連合や公務労協等と連携して取り組みを強化する」などと述べた。

すべての自治体単組で「労使関係ルールに関する基本要求書」の提出を

中央委員会では、2012春闘要求の柱を、(1)協約締結権の回復を見据え、春闘で年間を通じた交渉・協議の基本的なルール等を労使で確認する取り組み(2)人員確保、臨時・非常勤等職員の雇用継続・処遇改善、定年延長の確立等(3)公共サービス基本法の理念を活かした公契約条例の制定促進と、災害時の公共サービス確保(4)地場・中小など民間春闘との共闘強化と、公共サービス民間労働者の労働条件の底上げ――の4本に据えることを決定した。

自治労は、新たな自律的労使関係制度に対応するため、「要求―交渉―妥結(協約・書面協定)」のサイクルを定着させる必要があるとして、春闘期に基本要求を掲げ、秋の人勧確定期に個別の賃金・労働条件を詰める運動へ舵を切ろうと取り組んできた。しかしこの間、秋の確定闘争期における要求書の提出率が8割超、交渉率が約8割、妥結事項の書面確認が約3割にのぼるのに対し、春闘期における要求書の提出率は約5割、交渉率は約3割、合意・妥結事項の書面協定・協約化を行った単組は1割台にとどまってきた。

そこで、今春闘ではこれまで用いてきた「自治体単組の要求モデル(※)」等に加え、新たな取り組みとして、すべての自治体単組が「労使関係ルールに関する基本要求書」を提出することを徹底。加えて、「協定書(確認書)」の締結を推進する。

一方、地方公務員総数は1995年から毎年減り続け、2010年段階で281万3,875人となり、この16年間で46万4,457人減少した。こうしたなか、2010年10月、片山総務相(当時)が自治労との定例会見で「集中改革プランの対象期間は過ぎた。これからは本当に仕事に見合った定数をそれぞれで考えて規定することになる」などと述べ、また東日本大震災では、緊急時に被災自治体の支援に回せるような充分な人員確保の必要性が浮き彫りとなったため、今春闘では人員確保の取り組みを「産別統一闘争」に位置付けた。

臨時・非常勤等職員は任用の継続・安定を

全国で60万人にものぼるとされる臨時・非常勤等職員をめぐっては、春闘期が年度末に重なることから任用の継続・安定を重視する。

処遇改善については、すべての単組で最低到達条件の実現を目指す。総務省通知等を最低基準とした通勤手当(費用弁償)、時間外勤務手当(追加報酬)の全額支払い、病気休暇、忌引休暇等の整備のほか、今春闘では最低30円/時間+1%の賃金改善を求め、自治体最低賃金として時給970円、月額14万9,800円以上の確立等を目指す。その際、正規職員給与等との配分(賃金シェア)についても追求するとしている。

公契約条例については、千葉県野田市や川崎市に続き、2011年12月には相模原市、多摩市でも制定された。さらに、札幌市や国分寺市等で条例制定に向けたパブリックコメントが出されるなど取り組みが進行中。こうした動向を追い風に、地域における共闘の軸として、公契約条例の制定に向けた取り組みを強化する。

被災地域では職員不足が深刻に

質疑・討論では、給与特例法案と国公関連四法案が、先の臨時国会で成立に至らなかったことを受け、「民主党政権下でタイミングを逃したら、労働基本権の回復はなし得ない。何としても次の通常国会で早期成立を図るとともに、地方公務員に関しても同様の法案提出・成立を目指してほしい」(石川)、「消防職員の団結権についても同じ思いだ」(高知)などの意見が出た。

また、被災地の県本部からは、「子や妻等を避難させたり、遠隔地から通いながらの二重生活という経済的・身体的負担と、自ら放射能被害に晒されているかもしれないという精神的負担等から、自治体職員の退職に歯止めがかからない。人材不足が深刻で、新規採用が切迫した課題となっている」(福島)、「とりわけ建築の知識や保健師の資格等を持った専門的な職員が足りない」(岩手)――といった切実な報告も相次いだ。

徳永委員長はあいさつの中で、自治労として「とくに被害が大きかった岩手の宮古市を皮切りに、宮城、福島に医師やカウンセラー等を派遣し、現場で長期間にわたり緊張・ストレス状態にある、自治体職員の負担や不安を少しでも取り除けるようストレス対策を開始する」方針も明らかにした。

※:賃金水準については、2006年の地域給与・給与制度見直し以前の水準への到達をめざし、30歳で24万4,254円、35歳で29万5,608円、40歳で34万8,104円とする到達目標(2011年賃金実態調査における実在者中央値×1.06)を設定。そのうえで、連合春闘方針を踏まえ、少なくとも1%の賃上げを目指すとしている。