目標水準未満はベア・賃金改善2,000円などを要求/フード連合の春闘方針

(2012年01月27日 調査・解析部)

[労使]

食品産業関係の組合で構成し、中小が8割を占めるフード連合(10.4万人、うちパート等約7,300人)は23日、都内で中央委員会を開催し、2012春季生活闘争の要求方針を決定した。産別の設定する賃金の目標水準に満たない組合は7,000円またはベア・賃金改善分2,000円を基準に要求を組む。

「TPP参加の是非は国民的議論を通じて判断すべき」(江森会長)

江森孝至会長はあいさつの冒頭、昨年11月のハワイAPECで、野田総理がTPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉への参加に向けて関係国との協議に入る考えを表明したことに触れ、「国論が二分する中での見切り発車と言わざるを得ない」「TPPは実質的な日米FTA。参加すれば食料自給率の低下は必至だ。食品関連産業は、農業と密接に関連し、地域に根ざした中小企業が多いため、労働者の雇用と労働条件に大きな影響を及ぼす」などとする懸念を表明。

そのうえで「フード連合は経済連携に反対しているわけではない。世界の経済成長を牽引するアジア圏を中心とした経済連携が日本の国益にかなう」「政府は透明性を持って説明責任を果たし、国民的議論を通じてTPPへの参加の是非を判断すべきだ」などと主張した。

「萎縮することなく格差の是正と全体の底上げを」(江森会長)

一方、今次交渉に臨む姿勢については、産別全体の平均賃金ベースで7年間で約1.3万円、6年間で約8,000円、35歳の個別賃金ではピーク時と比較して300人以上で約1.4万円、300人未満で約1.2万円程度低下している実態を踏まえ、「春闘を取り巻くマイナス面にのみ目を奪われて萎縮するのではなく、組織労働者として格差の是正と全体の底上げを重視し、春闘を全体で取り組むための議論を大切にして欲しい」などと強調した。

中央委員会では、全加盟組合が取り組む統一要求課題として、 (1)賃金(ベア・改善原資含む)の引上げ (2)一時金の安定確保(年間最低4カ月、基本6カ月の確保)(3)最低賃金(到達目標は月額15.2万円以上、時間額870円(最低770円)以上)の協定化と水準の引上げ(4)労働時間の短縮(年間所定労働2000時間以上を2015年3月までにゼロへ、時間外・休日労働の割増率等の引上げほか、労働時間の上限規制撤廃とインターバル規制の設定努力) (5)パート等の組織化と処遇改善定昇込み30円(昨年40円)、定昇なし20円(同30円)――のほか、特別課題(通年的な協約改訂闘争)として「公的年金受給空白期間への対応」も掲げた。

賃金の引上げに関しては、フード連合の目標水準を高卒30歳で基本25.2万円、基準内27.6万円、大卒35歳で同順に34.9万円、37.8万円などと設定。そのうえで、 (1)これに満たない場合は7,000円またはベア・賃金改善分2,000円を基準とする (2)目標水準を満たしている場合も、必ず賃金水準等を開示するほか、パート等の時給引上げなど(その他の統一要求課題)に取り組む (3)賃金制度(定昇等)はあるが目標水準との格差が大きい中小組合は6,000円またはベア・賃金改善分2,000円を基準とする(4)賃金制度がない中小組合等は5,000円以上かつ賃金制度の確立を要求する――などとする方針を決定した。

また、特別課題(通年的な協約改定闘争)として「再・継続雇用制度における労使協議による適用対象者の基準設定(高齢法第9条2項)を原則廃止し、希望者全員の再・継続雇用制度を、段階的措置を含めて確立する」ことや、「公的年金(報酬比例部分)の空白期間の賃金を月額28万円程度、もしくは年収336万円を最低でも確保した上で働き方に見合う処遇の上積みを図る」こと、さらには「65歳までの定年延長制度を確立する」こと等を確認した。