定昇への踏み込みは断じて容認できない/金属労協の2012闘争推進集会

(2012年01月25日 調査・解析部)

[労使]

金属労協(IMF・JC、西原浩一郎議長、202万人)は24日、横浜市で「2012年闘争推進集会」を開催し、5つの加盟産別労組が2012春闘に向けた要求内容などを情報交換した。あいさつした西原議長は、経営側の定期昇給に踏み込む姿勢について「断じて容認できない」と強調した。

経営者は人への投資を最上位に置くべき/西原議長

あいさつした西原議長は、今春闘の位置づけについて「コスト管理は企業経営にとって当たり前のことだが、『人への投資』をどう位置づけていくかが、当面の産業・企業の発展の行方を決定する」と説明。人への投資を強調する背景について、「組合員にとって今期は試練につぐ試練で、物的にも人的にも被害を受け困難な状況におかれた。こうしたなかで被災地の復興と日本全体の経済・社会の再生をどうつなげていくかが問われる。これを成し遂げるためには、働く人の意欲や活力をいかに引き出していくかに集約できる」としながら、「人への投資は、将来への投資だ。経営者はすべての投資項目のなかで人への投資を最上位に置くべき。過度にコストにこだわることが不況を乗り切る道としては限界であることは、ここ数年で見えてきたはずだ」と強調した。

また、西原議長は、経団連の経営労働政策委員会報告が定昇への切り込みなどについても言及していると報道されたことに関連して、「日本の賃金構造維持分は、ライフサイクルにおける生計費分であり、また、長期的視点での能力発揮や実績につなげるもので、それによって生産性向上をうながす日本の骨格をなす制度である。単なる勤続年数や年齢に基づく自動的な事象ではない。働く人の習熟や技能向上を守っていく制度であり、これさえも踏み込もうとする姿勢は断じて容認できない」と批判した。

加盟5産別が産業の状況と要求内容を説明

集会では、自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5つの加盟産別の各書記長・事務局長によるパネルディスカッションを行った。各産別が、産業の状況と要求内容を説明した。

自動車総連の相原康伸事務局長は、自動車産業の2011年度の状況について、四輪車の生産台数が3年連続で1,000万台を下回る見通しであることや、2011年の四輪車の販売台数が1977年以来34年ぶりの低水準となったことなどを説明。中間決算では、11社の自動車メーカーのうち、9社が経常利益ベースで減益だとした。

要求内容に関しては、賃金カーブ維持分確保を大前提とした内容について、「交渉環境の厳しさが昨年を上回ることからこそ、賃金カーブ維持を必達目標に定めた」と述べた。

電機産業の状況について電機連合の浅沼弘一書記長は、12の中闘組合企業の2011年度の売上高合計は41.2兆円の見通しで、前年比で微増となっているが、これらの数字にはタイの洪水の影響は入っておらず、2月初旬に出される第3四半期の数字が心配されると述べた。

要求内容は、本部案の段階としながら、賃金については、賃金体系の維持を確保し、同時に、産業内格差改善のために賃金水準の検証と分析を行い、水準の低下傾向がある組合は是正に取り組むとした。労働協約面での要求項目では、エイジフリー社会を展望した雇用延長の実現をめざすとして、対象者の範囲の撤廃や、賃金の産業別最低賃金を上回る設定などを要求していく方針を説明した。

JAMの宮本礼一書記長は、JAMが独自に実施している景況調査の結果から、2011年は震災はあったものの、傘下組合はリーマン・ショック後の落ち込みからはようやく立ち直ったとし、雇用調整の報告も減少していると説明した。

賃金要求内容については、賃金構造維持分を確保して、必要なところは是正に取り組んでいく方針。300人未満の組合では、2000年と比べると平均で7,500円賃金水準が下がっていることから、5年かけて1,500円ずつ回復させることに取り組むと述べた。

基幹労連の工藤智司事務局長は、鉄鋼部門については、消費の新興国シフトが鮮明だとし、国内粗鋼生産量はアジアの需要に引っ張られているが、タイ洪水や円高の影響があり、通期売上高では鉄鋼メーカー大手5社で4%増、経常利益では17%減だと説明した。船舶部門は、手持ち仕事が2年半でなくなる見通しで厳しいと指摘。非鉄については、大手6社の2011年度売上高は大手6社では前年比で増加しているが、経常利益では減益だと説明した。

要求内容案は、大きなテーマとしては、産業空洞化を防止することなどを通して日本経済を回していくことだと強調。中小の部門では賃金の底上げ、格差是正のための賃金改善に取り組むとし、部会ごとに3,000円を目安に引き上げの具体的な水準を定めていくと述べた。

全電線の中條弘之書記長は、電線産業の状況について、銅電線は昨年に続き、2011年度の出荷量が、目安である70万トンを割り込むと説明。主要な組合企業8社の中間決算をみると、経常利益では6社減益となっており、全体でみると震災時のサプライチェーンの寸断や事業所の直接の被災などから昨年に増して交渉環境は厳しいと指摘した。

要求内容案は、まずは雇用の維持確保に取り組むと説明。賃金では35歳個別賃金の水準でみて大手と中小との間で格差が発生していることからその是正に取り組むとした。退職金の1,600万円以上の水準到達も力を入れる考えを示した。