今春の交渉方針を決定/JSD中央委員会

(2012年01月25日 調査・解析部)

[労使]

百貨店やスーパー等の組合でつくるサービス・流通連合(JSD・八野正一会長、23万人)は24~25日、都内で中央委員会を開催し、2012春の交渉方針を決定した。また、昨年の臨時大会で確認した、UIゼンセン同盟との新産別結成に向けたスケジュールを本年11月中旬に前倒しすることを目指す協議状況についても報告した。

「2012春の交渉では統一的運動の完遂を」(八野会長)

中央委員会では、(1) 賃金体系維持分の確保と年収ベースでの賃金水準の復元(2)パート・契約社員の処遇改善と全労働者を対象とした取り組み(3)5年目となる統一的運動の完遂を目指した取り組みの徹底――などを柱とする、2012春の交渉方針を決定した。

あいさつした八野正一会長は、今次交渉方針の考え方として、「成長の源泉たる有期契約労働者を含めたヒトへの投資を積極的に行い、雇用や労働条件を中期的な側面から安定させ付加価値を創造する。そのために何が必要かを積極的に労使で協議し、方向性を導き出すことが重要な課題だ」などと指摘。そのうえで、「2012春の交渉は、JSDの統一的運動の集大成として位置付けたい。全加盟組合が方針に則り要求を掲げ、スケジュールを重視し結果を出し、情報を開示し波及力を高めていく。本年は統一的運動の完遂をお願いしたい」などと強調した。

臨時賃金を年間3ヶ月以上確保し年収水準の復元を

今次交渉方針のうち月例賃金については、賃金制度がある場合は「賃金体系維持分(定昇相当分)の完全実施を要求・確保」したうえで、「企業状況を踏まえ、労働者への配分上積みが可能な組織は積極的な賃金改善要求を行い、全体の底上げや年齢別・男女間等の歪みを是正する」。その際の具体的な要求基準は、大卒8年・高卒12年の一人前賃金となる「30歳ポイント」で、先行(水準牽引役)、社会的(産業中位)、底上げ(最低到達水準)基準の順に、「28万3,200円、24万9,200円、21万9,600円」などと設定した(JSD調査による現状は平均25万2,100円)。

また、賃金制度がない場合は「原資維持分を含めて2.1%以上もしくは4,600円以上を基準に要求する」などとした。

臨時賃金については、すべての加盟組合が到達すべき底上げ基準として「組合員一人平均で基準内賃金の年間3ヶ月以上」を掲げ原則、年間一括交渉を行うとした。

職務・人材活用が同じパート等は3%もしくは30円以上を要求

一方、JSD組合員の約44%(9.8万人)を占めるパート・契約社員についても、「制度維持分(定昇相当分)の完全実施を要求・確保する」として、(1)職務・人材活用とも(一定期間)同じパート(JSD調査で経験5年までの平均時間給959円)は、制度維持分を含めて3.0%以上もしくは30円以上(2)職務は同じだが人材活用が異なるパート(同885円)は2.0%以上もしくは20円以上 (3)職務も人材活用も異なるパート(同860円)は2.0%以上もしくは20円以上(4)フルタイム契約社員(勤続5年までの月例給平均16万9,515円)は2.1%以上――などの要求基準を据えた。

また、全労働者を対象とした取り組みでは、特定(産業別)最低賃金がない業態・都道府県では「2011年度の地域別最低賃金×106%以上」、特定最賃がある場合は「2011年度の地域別最低賃金×102%以上」等の基準で、企業内最賃の協定化を行うとした。

加盟組合は2月29日(第一次)(第二次は3月15日)までに要求を提出。先行グループは3月14日、中執労組は31日(第二次目標日)、すべての加盟組合は4月30日(同第四次)までの妥結を目指す。

新産別結成に向けて4月予定の臨大で判断へ

このほか、中央委員会では報告事項として、「産別再編統合協議の進捗状況並びに協議の今後の進め方」について、岡田啓・会長代行が説明した。

併せて示された「新産別結成方針(素案)」(組織内討議のためのたたき台という位置づけ)では、懸案となってきた会費について「800円/人/月」とすることなどが記されている一方、「3年8ヶ月の激変緩和措置」(岡田氏)等も検討されているという。また、新組織の名称については未だ協議中だが、「2月中に結論を出していく」(八野氏)という。

同方針(素案)は今後、両組織の間で方針(案)化され、JSD側では4月18日に開催予定の臨時大会で可否を判断する。同方針が両組織で承認されれば、「UIゼンセン同盟を母体組織とする新組織結成方式」により、(両組織の解散大会と)新産別の結成大会が、2012年11月中旬までに行われる見通し。

八野会長はあいさつの中で、「この課題は自分達の世代で解決し先送りしない。産別再編統合はここにいるすべての加盟組合で行っていく。難しい決断をしていただかなければならないが、私は会長として不退転の決意で臨みたい」などと強調した。