「タクシー運転免許制度」創設の要請へ/自交総連定期大会

(2011年10月21日 調査・解析部)

[労使]

タクシー運転手などを組織する全労連傘下の全国自動車交通労働組合総連合会(略称:自交総連、飯沼博委員長、約2万人)は10月18日から2日間、都内で定期大会を開催し、減車によるタクシー運転手の労働条件向上を最優先課題とする2011年度運動方針を確認した。具体的な対策のひとつとして、「タクシー運転免許制度」の実現に引き続き取り組むことを盛り込んだ。

冒頭の挨拶で飯沼委員長は、タクシーの車両数が減少に転じたことについて、「タクシー事業者に対し、地域協議会を通じて実効ある減車を要求してきた結果だ」と振り返った。

タクシー業界では、2002年の改正道路運送法の施行により、事業者の新規参入や車両数の増加が実質自由化されたことで、それまで26万台を割り込んでいた登録車両数が2007年には27万台を超えた。自交総連ではこうした規制緩和による競争の激化が運転手の長時間労働や賃金の低下をもたらしているとして、その見直しを強く訴えてきた。

2009年には行き過ぎた規制緩和に歯止めをかける目的で「特定地域における一般乗用旅客自動車運動事業の適性化及び活性化に関する特別措置法(タクシー特措法)」が施行。同法では、国土交通大臣が、タクシーの供給過剰が起きている地域を「特定地域」に指定し、同地域のタクシー事業者、労働組合などで構成される地域協議会が地域内で適正な台数や料金を定める仕組みがつくられた。タクシー特措法の施行後、車両数は減少に転じ、2010年度末には25万台を下回っている。

飯沼委員長はこうした動きを評価しつつも、「特措法の主目的である労働条件の改善という点でみればまだまだ不十分」とし、さらなる減車と確実な賃金増に向けて、引き続き取り組みを強化するよう呼びかけた。

2011年度運動方針には、その具体的な対策のひとつとして、「タクシー運転免許制度」の実現に引き続き取り組むことを盛り込んだ。同制度は自交総連が99年に提案したもの。タクシー運転免許を国家資格として法制化することで、運転手の質を高めるとともに、事業そのもののあり方を経営者にとって優位な仕組みから運転手にとって優位な仕組みに変えていくことをめざしている。今年は、6月7日に開催した「タクシー運転免許実現をめざす政策研究集会」で検討した結果をもとに国土交通省に対し、初めて制度創設に向けた要請を行う。

組織力の強化も課題のひとつだ。自交総連では、スローガンとして「実勢3万人の組織回復」を掲げているが、組合員数は減少の一途だ。この一年間の動きをみても、新規加入者170人に対し、脱退は418人とこれを大きく上回っている。このため、今年の方針では、地連の組織点検を行い、組合としての機能が弱い少人数組合を把握した上で、本部から必要な支援を行う。同時に組合幹部の高齢化が進んでいることから、次代を担う若手活動家の育成にも取り組む。