最終的には原子力に依存しない社会を/連合の第12回定期大会

(2011年10月7日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長、680万人)は4、5の両日、東京・有楽町の東京国際フォーラムで第12回定期大会を開催し、向こう2年間の運動方針を確認した。あいさつした古賀会長は、連合としてのエネルギー政策について、中長期的に原子力エネルギーに対する依存度を低減していき、最終的には原子力エネルギーに依存しない社会をめざす方針を明らかにした。今後プロジェクトチーム(PT)を立ち上げ、現在、凍結している現政策の見直しについて具体的に検討していく。連合は今後の組織拡大について、中長期目標の「1,000万連合の実現」をめざし、その具体的な戦略などについてもPTで検討するとしている。

脱原発・推進の2項対立の議論は行うべきでない

エネルギー政策について、連合は震災に伴う原発事故をうけ、今年6月の中央委員会で原子力を含めたエネルギーのベストミックスを柱の1つに掲げる現行政策の凍結を決め、あらためて総点検・見直しを行うとしていた。

写真・定期大会、檀上のようす、遠景、あいさつする古賀会長

大会であいさつした古賀会長は「エネルギー政策の総点検・見直しにあたっては、『脱原発』や『原発推進』という2項対立の議論を行うべきではない。総合的・合理的・客観的なデータに基づき、『安全・安心』『エネルギー安全保障を含む安定供給』『コスト・経済性』『環境』の視点から、短期・中長期に分けた冷静な議論を行う必要ある。また、国民の理解・納得という観点や『国民合意』のあり方にも十分に留意することが求められている」と強調。今回の原発事故によって「大型の自然災害が不可避なわが国においては原子力発電所事故が起こりえること、ひとたび事故が起これば、人々の生活や健康、国土・海洋など広範な環境に甚大な被害をもたらす可能性があることを現実のものとして知ることになった」とし、「わが国においては原子力エネルギーに代わるエネルギー源の確保、再生可能エネルギーの積極推進および省エネの推進を前提として、中長期的に原子力エネルギー対する依存度を低減していき、最終的には原子力エネルギーに依存しない社会をめざしていく必要がある」と述べ、検討の方向性を明確にした。

停止原発の再稼働は地元合意などが前提

この会長発言を受け、連合では、政策委員会の下に「エネルギー政策総点検・見直しPT」を設置し、政府の事故調査・検証委員会の報告なども踏まえ、具体的な見直し内容を検討する。ただ、古賀会長は「短期的な課題としては、産業や雇用への影響に十分配慮しながら、エネルギー安全保障の観点を含め、安定的なエネルギー供給を図る必要がある」とも述べており、定期点検中で停止している原発の再稼働については、周辺自治体を含めた地元住民の合意と国民の理解、安全性の強化・確認を国の責任で行うことを前提に検討していくと表明した。

自分たちの利益保護ではメンバーの利益も守れない

一方、今後の労働運動に関して古賀会長は、「労働運動の社会化」を強調。「これまで働く者が連帯し、結びつくその枠は、企業の内部、あるいは組合員に限られる傾向があったことは否めない」と自省したうえで、「自分たちの利益を自分たちだけで守ろうとしても、メンバーシップそのものの利益さえ守ることはできない時代になっている」と述べ、すべての働く者を対象として運動を推進していくためには「少しでも多くの人たちを労働運動の仲間として迎えることに力を注がなければならない」と呼びかけた。

連合の組合員数は、約20年前の結成時から120万人減少。この10年では47万人の減少となっている。今大会で中長期目標としての「1,000万連合の実現」を提起したことについて古賀会長は「簡単に実現できる目標でないことは承知のうえ」としながらも、「何としても達成せねばならない」と組合員に奮起を促した。

働くことを軸とする安心社会に向け本格取り組みへ

大会で確認した2012~2013年度運動方針は、第一に震災からの復興・再生に向けて総力をあげて取り組み、日本経済・社会の再生を図ったうえで、連合が昨年12月に採択した新たな社会ビジョンである「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けて行動しつつ、すべての働く者の連帯をめざした社会的な運動を展開することを基本におく。

運動の基軸には、震災からの復興・再生以外の項目では、 (1)連合の社会保障ビジョン・税制改革基本大綱とそのほか要求政策・制度の実現、 (2)政府・政党などとの政策協議・連携を通じての要求事項の実現、 (3)正規・非正規を問わずすべての働く者の労働条件の底上げ・復元などによるディーセントワークの確立、 (4)男女平等参画社会や均等・均衡待遇の早期実現などによるワーク・ライフ・バランス社会の実現、 (5)公正なグローバル化をめざすための国際労働運動の強化、 (6)1,000万連合の実現を展望した非正規労働者も含めた組織化戦略の推進――などを掲げた。

政治方針の見直しに着手

具体的な活動内容としては、組織化では組織委員会のもとにPTを設置し、行程や推進体制などを内容とする「1,000万連合アクションプラン」を作成し、来年6月の中央委員会で提起する。非正規労働者の組織化は、非正規労働者がいるすべての職場で、まずは交流の機会を拡大しながら実態把握を進める考えだ。

ディーセントワークを実現するためのワークルールの整備では、私法上の効果を盛り込んだ有期労働契約法制の立法化や、現在、国会で審議中の労働者派遣法改正法案の早期成立に取り組むとしている。

政治活動では、現在の方針が民主党への政権交代前に策定されたものであることから、見直しに着手し、2年をめどにとりまとめる予定だ。

大会での運動方針案に関する討論では、12の構成組織および地方連合が発言した。エネルギー政策については「最終的に原子力エネルギーに依存しない社会の実現をめざすとしたことは大変評価したい。雇用確保の十分配慮しながら着実に取り組みを進めてほしい」(自治労)などの意見がだされた。有期雇用の問題については、JR総連とサービス流通連合から、期間の定めのない雇用を原則とすることを求める意見が出た。全水道とヘルスケア労協からは、原発事故による放射能の影響、地震の被害があった職場での組合員の苦労の実態が語られた。

国公法案と給与削減は一体を堅持

役員改選では、古賀会長(電機連合)、徳永秀昭会長代行(自治労)、岡本直美女性代表会長代行(NHK労連)、南雲弘行事務局長(電力総連)がすべて留任となった。

5日、大会終了後の記者会見で、「エネルギー政策総点検・見直しPT」での検討のスケジュールについて聞かれた古賀会長は、「来年とか、1年とかまだ言えない」とし、「ただ、政府や民主党でどう議論されていくかと関連していくので、中間とりまとめや最終とりまとめをどうするかなどは、その議論の過程で決めていけばよい」と述べた。

国会に法案が提出されたが審議が進まない国家公務員の労働基本権付与と給与削減については、「踏み込んだ言い方をすれば、自律的労使関係制度の展望が開けたことで、給与削減に踏み込んだ。給与削減だけ(国会を)通っていくことはあり得ないと政府、民主党には言っており、このスタンスは変えるべきではない」と述べるとともに、9月30日に出された人事院勧告については無視されるべきだとの考えを示した。