運動の中期ビジョンと60歳以降の雇用確保の方針確認/基幹労連定期大会

(2011年9月14日 調査・解析部)

[労使]

鉄鋼、造船重機、非鉄金属の労働組合でつくる基幹労連(神津里季生委員長、25万5,000人)は8・9の両日、福岡市で定期大会(中間年)を開き、昨年の大会で決定した運動方針を補強する後半年活動方針のほか、向こう10年の運動を展望した「産業・労働政策中期ビジョン」、また「60歳以降の安定雇用」確保に向けた取り組み方針を確認した。冒頭のあいさつで神津委員長は税制に触れ、問題先送りからの脱却を主張。財政破たんのリスクを回避し、つけを若い世代に回さないためにも、明確な処方箋が必要だとし、「耳障りのよい増税反対だけを叫ぶ政治家を信用することはできない」と述べた。

中期ビジョンではワーク・ライフ・バランスを重視、「失効年休ゼロ運動」も

大会で確認した「産業・労働政策中期ビジョン」(AV2010)は向こう10年間のビジョンを示し、賃金などの主要労働条件を交渉する2年サイクルの運動のベースになるもの。基本的な考え方として、適切な「人への投資」のほか「真のゆとり豊かさ」を求めつつ、トータルの労働条件改善を追求するとしている。具体的な内容としては、人材の確保・育成に向け「労使話し合いの場」を積極的活用にしつつ、ワーク・ライフ・バランスの推進を重視。所定内労働時間1,800時間台の実現を改めて掲げ、「年休取得向上へ失効年休ゼロ運動」「積立休暇制度の充実」などを進める。

また、賃金面では「金属産業トップクラスの維持・確保」をめざし、あわせて賃金の底上げに向け、企業内最低賃金協定の充実と法定特定(産業別)最低賃金の強化を盛り込んだ。一時金については、「生活を考慮した要素」として、年間4ヵ月(120~130万円)確保の定着と「成果を反映した要素」を含め年間5カ月(160万円程度)の安定確保を追求する。また、退職金については、65歳まで働くことを前提にしたガイドライン(目安)の水準として2,200万円を打ち出した。

AP12,13の春季交渉に向けた基本認識

来年と再来年の2年サイクルの春季交渉(AP12,13)に向けては、活動方針のなかで、「中期ビジョン策定後初の基本年度の取り組みとして重要になる」としたうえで、「2年サイクルの運動を最大限活用し、積極的な取り組みを推進する」としている。神津委員長は来春交渉の基本認識についてあいさつで、「かつての春闘の枠組みだけでものごとを考えるならば、ひたすら我慢のAPになってしまうのではないかと率直に思う」としながらも、「その時々の状況を見極めつつ、目的を明確にし、日々新たな運動をつくりあげていく」ことが重要であると指摘。「国際競争力の強化」と「魅力ある産業・企業・労働条件の追求」という「好循環の考え方を中心軸」に、労使が真摯に話し合い、「この好循環をさらにどのように前に進めていくかのなかに、来るAPの問題も位置づけられるべきだ」と述べた。

大会討論のなかでは、「低成長のなか賃金改善は難しいが、だからこそ基幹労連に期待する。2回続けての見送りはない。前向きな判断をお願いしたい」(川重労組)など、前回のAP10,11では賃金改善を統一要求としなかったことを踏まえ、前向きな対応を求める意見があった。

「60歳以降の安定雇用」の話し合い促進を――必要生計費月額28万円程度をハードルに

厚生年金報酬比例部分の支給開始年齢の引き上げが始まるいわゆる「2013年問題」への対応として、基幹労連は他産別に先駆けて昨年の春闘で、「60歳以降の雇用確保」の要求を掲げた。その結果、大手では「年金支給開始年齢にリンクした安定雇用の必要性を認識し、その実現に向けた制度の労使検討の場を設置する」ことで決着。大会ではこうした動向を踏まえ、「60歳以降の安定雇用」確保に向けた取り組み方針を決定した。

方針では、「希望者全員の年金支給開始年齢までの雇用の場の確保」を前提に、生計費の確保と働き方に見合う処遇の両立を重視。60歳以降活きいきと働くことができ、世代間で納得できるような、働き方に見合った処遇の実現をめざすとしている。処遇面では、世間一般的な生活水準維持のためには、生計費として月額28万円程度(税金・社会保障除く)が必要だとし、この水準確保をハードルに設定した。

さらに、60歳未満者と一貫させるべきものとして、「組合員籍の継続」「福利厚生等諸制度」「労災・通災付加補償、各種割増率、労働時間・休日」も60歳段階の処遇をそのまま引き継ぐことを基本としている。新たな制度の導入は、職場への制度内容の周知・徹底、退職者の就労希望判断、処遇システムの変更への対応なども踏まえ、2012年中を目途に、遅くとも2013年4月の新制度適用に間に合うよう決着をはかる。

討論では「大手総合組合の提案、合意内容が拠り所となる。タイムリーな情報提供をお願いしたい」などの要望が出された。