休日の木・金曜日への振り替えを評価/自動車総連定期大会

(2011年9月14日 調査・解析部)

[労使]

自動車メーカーなどの労働組合でつくる自動車総連(西原浩一郎会長、77万人)は8、9の両日、岡山市で定期大会を開催し、これまでの東日本大震災への対応について特別報告したほか、震災をふまえた今後1年間の活動方針を確認した。あいさつした西原会長は、自動車産業で労使が協力して実施した休日の木・金曜日への振り替えについて、「日本全体の節電に大きく貢献した」とし、「基幹産業としての社会的役割・責任を果たした」と強調した。

休日振り替えでは組合員に負担も

西原会長はあいさつで、震災後、サプライチェーン寸断のリスクへの対応から生産拠点の分散化圧力などが増していることについて「リスク管理の観点からサプライチェーン全体を強化する必要性は理解するが、過度の対応がかえって自動車産業の強みを削ぐことになりかねない」と警告した。

今夏、自動車産業では産業全体で休日の統一的な木・金への振り替えを実施した。西原会長はこれについて、「節電要請が東電・東北電力管内から全国に拡大するなかで、自動車産業が日本全体の節電に大きく貢献したことを意味しており、基幹産業としての社会的役割・責任を果たしたものと考える」と評価。一方で、休日振り替えを含む一連の節電対応は、勤務体制・時間の変更や子どもの保育園の問題など組合員の生活にも「大きな負担と苦労をかけたことも事実だ」と語り、これまでの節電対応の総括を早急に行うことを明らかにした。

円高による国内事業縮小を危惧

原発事故と今後のエネルギー政策については、「自動車産業の国内事業基盤の確保、すなわち雇用確保には電力の安定供給は不可欠だ」としながらも、原発事故への対応について「一刻も早い収束と被害者への迅速で適切な賠償が最優先されるべきであり、事故の徹底究明・検証も急がれる」と強調。その上で、「エネルギー政策は、国民の信頼・安全・安心、エネルギー安全保障を含めた安定供給、環境問題への対応、再検証に基づく電源のコスト比較等の観点から科学的・合理的・客観的なデータに基づく国民的議論により一定の合意を図る必要がある」と主張し、「反原発」と「原発推進」という二項対立・イデオロギー的な対立は「不毛であり、現実をふまえた冷静な議論が求められる」と訴えた。

円高に関しては「このままの円高水準が定着すれば、グローバル市場での自動車の競争環境の厳しさから判断して車両・部品の輸出は採算上成り立たず、一方で海外からの輸入が加速するなど、今後、一定規模での国内事業自体が立ち行かなくなる可能性がある」と産業への悪影響を危惧した。

今回の大会では、東日本大震災へのこれまでの対応を特別報告した。自動車総連の組合員で亡くなったのは12人で、亡くなった家族の数は162人、行方不明64人となっている。総連では4億円を超えるカンパ金を集め、被災した組合員への見舞金の支払いや、被災地への車両の寄贈を実施した。

再交渉条件つきの一時金回答が増加

大会では2011年総合生活改善の取り組み総括も報告された。賃金改善分を獲得した組合は130組合で前年の110組合から増加。一方、賃金カーブ維持分割れ組合が153組合と前年の160組合から減少し、総括は「震災への対応を懸命に進めつつも各単組がこだわりをもって粘り強い交渉を続けた結果として高く評価したい」としている。一時金は、平均3.96カ月(前年3.80カ月)で、6割強が前年獲得実績を超えた。ただ、秋以降に再交渉の余地を残す付帯事項付回答が今回は379件で、前年の321件を大きく上回ったことも報告された。

今後の活動方針では、休日の振り替えを含む節電対応の総括について、各労連の意見も吸い上げながら執行委員会で議論し、11月には最終報告をとりまとめることが明らかにされた。方針案に関する討議では、「(傘下の)企業によっては自動車産業以外にも携わるところもあり、ラインによって休日が異なるということもあった。働き方、地域や家族も巻き込んで大きな混乱があったことも事実。来年や冬に向けての対応を検討する際にはこれらを十分考慮してほしい」(全三菱自動車ふそう労連)との意見があった。