江森新会長、山本新事務局長らを選出/フード連合定期大会

(2011年9月14日 調査・解析部)

[労使]

食品産業関係の労組でつくるフード連合(294組合・約10.4万人)は12~13日、東京・有明で定期大会を開催し、今春闘の総括を行うとともに、組織拡大や産業政策を柱とする、向こう2年間の運動方針等を決定した。大会では役員選挙も行い、結成以来、5期9年を務めた渡邉和夫会長が退任し、新会長に江森孝至氏(前事務局長・全日本たばこ産業出身)、新事務局長に山本健二氏(ニチレイ出身)を選出した。

結成時の組織人員まで回復するも拡大計画未達で危機感

加盟する組織の約8割が中小労組のフード連合は当初、組織人員の減少に歯止めをかけられず、結成当時(2002年11月)の10万3,941人から、2005年には9万4,951人まで落ち込んだ。だが、パート等の組織化の開始(2005年1月)や、ОBを活用した「組織アドバイザー」等によるオルグの強化など、組織拡大策のテコ入れが効果を発揮し、現在は結成時とほぼ同水準の10万3,573人(うちパート等7,301人)まで回復している。

とはいえ、過去2年間で1万人の純増を目標に掲げた「第3次組織拡大実行計画」の最終集約では、37単組・5,472人(うちパート等が2,022人)増という結果に終わった。渡邉会長はあいさつの中で、「食品関連産業で働く労働者の社会的地位とその労働条件は、一部の大手企業を除けば未だに相対的低位にあると言わざるを得ない。これはひとえに、組織された労働者の比率が低く、社会的な影響力や波及力が乏しいからに他ならない」などと指摘。「全国の食品製造業で働く労働者が約132万人もいることを考えれば、私たち組織労働者に求められる役割は大変大きい。ややもすると、目標を示すことで満足し、実現のためのプロセスや進捗管理はおろそかにしてきたきらいがあったのではないか。今日の組織の状況に対する危機感を共有し、自らできること・やらねばならぬことを見極め行動を起こそう」と訴えた。

昨年並みのベア・賃金改善獲得を評価

大会では、 (1)賃金の引き上げ (2)労働時間の短縮 (3)一時金の安定確保 (4)パート等の組織化と処遇改善 (5)企業内最低賃金の協定化――の5つの統一要求課題を設定して臨んだ、2011年春闘についても総括した。賃金の引き上げについては、277組合(昨年283組合)が取り組み、ベア・賃金改善を獲得したのは昨年(29組合)より若干減少の26組合、定昇相当分確保は127組合で、金額比較では206組合が、昨年並みの実績あるいは昨年実績以上だった。妥結結果は同一組合比の全体で5,323円(1.80%)と昨年を88円上回ったほか、300人未満の中小でも昨年を2円上回る3,949円(1.61%)、99人以下では昨年を106円上回る3,609円などとなった。こうした結果について「日本全体で復興意識が優先し、春闘交渉モードではない異例の取り組みとなるなか、要求趣旨にこだわって交渉し、ベア・賃金改善を獲得した組合が昨年と同数近くあったことは評価できる」などと総括した。

一方、一時金については184組合(昨年183組合)が取り組み、妥結結果は同一組合比の全体で、年間5.23カ月と昨年を0.03カ月上回った。「時短2000ゼロ」の取り組みについては、春闘期に66組合(昨年は68組合)が実施。17組合が一定の成果を上げたものの、依然として年間所定労働時間2000時間以上が100組合以上ある。また、パート等の処遇改善については、69組合(昨年は64組合)が取り組み、25組合(うち16組合が時間給を引き上げ)で前進した。さらに、最低賃金の協定化については、全体で81組合(昨年60組合)が要求。15組合が協定化するなど一定の成果を上げたことについて、「昨年に比べ取り組み組合が大幅に増加したことは、理解が浸透してきた結果だ」などと総括した。

組織拡大や産業政策を柱に

2011~12年度の運動方針は、 (1)組織の強化(13業種別部会・全国41地区協議会の活動充実、「第4次組織拡大実行計画」の策定等) (2)産業政策の実現(環太平洋経済連携協定(TPP)への参加に対する反対姿勢の堅持、消費税の逆進性を緩和する「給付付き税額控除」の制度化に向けた政党・行政への働きかけ等) (3)雇用の安定・確保と労働条件の維持・向上(「雇用確保・創出労使共同宣言」(仮称)等) (4)男女平等参画の推進(「ポジティブ・アクション20」の実現に向け「女性役員ゼロ」をなくす取り組み等)――の4本を柱に据えた。

また、昨年の大会以降議論を重ねてきた、結成10周年(来年11月)後の運動を展望する「フード連合・あり方検討委員会」の「2010年度答申」(中間報告)として、 (1)労働相談機能の強化に向け「労働相談センター」(仮称)を設置する (2)原則700人程度以上の単組(約30)の登録制で「大手・主要組合会議(仮称)」を設置し、重要事項の審議に当たり合意形成機能を強化する (3)旧産別を前提とした役員選出を改め副会長数を当面2人とするほか、女性中央執行委員を1人増員の4人とする――ほか、組織拡大局(仮称)の設置や「賃金ビジョン」(2004年度「賃金政策」の改定版)の策定を検討すること、労働者福祉団体等と連携しフード連合共済制度の改善を検討することなども提起した。