国家公務員の賃金引き下げ問題が焦点に/国公労連定期大会

(2011年8月31日 調査・解析部)

[労使]

日本国家公務員労働組合連合会(国公労連、宮垣忠委員長、約12万人)は8月25日から3日間にわたり、都内で定期大会を開催し、2011年度の運動方針を決定した。取り組みのうち、焦点となるのが国家公務員の賃金引き下げ問題。政府は震災復興の財源確保を理由に今後3年間にわたって、国家公務員の俸給を5%~10%、ボーナスを一律10%削減する方針を打ち出しており、これを断固阻止する構えだ。

政府は5月に国家公務員の賃下げ方針を打ち出した後、連合系の公務員労働組合連絡会(公務員連絡会)と全労連系の国公労連とそれぞれ交渉を開始。公務員連絡会は公務員に給与や勤務時間などの労働条件を労使交渉で決める協約締結権の付与と引き換えに賃下げを受け入れることを合意している。しかし、国公労連は「人事院勧告に基づかない給与引き下げは違憲」とし、交渉は決裂。政府は賃下げ措置の実施のため、「国家公務員給与臨時特例法案」を閣議決定し、今国会に提出したものの、菅首相の交代劇など政局の混迷を受け、会期内の成立を断念している。

労働者全体の賃下げを招く

宮垣委員長は大会冒頭の挨拶でこの問題にふれ、「米軍の『思いやり予算』や政党助成金には手をつけず、真っ先に公務員賃金の削減を打ち出したことは消費税増税など新たな国民負担増に向けた露払いにほかならず、国内労働者全体の賃下げを招き、国内需要の縮小によってデフレをさらに深刻化させる」と訴えた。

さらに「公務員としての震災復興への貢献は行政としての責任を果たすことによって被災者と地域の活力を引き出すことにある」と主張。国公労連として、臨時増員も含めた行政体制の拡充を求めていく考えを示した。また、公務員連絡会が賃下げを受け入れたことに対しては、「国家公務員全体のなかで連合系組合の占める割合は23%に過ぎず、すべての国家公務員を代表しているわけではない」と疑問を投げかけた。

岡部勘市書記長も今後の運動方針の提案のなかで、賃下げ法案の廃止をめざし、議員などへの要請行動や各地での街頭宣伝活動を通じて、国民世論の理解と共感を広げていくことを呼びかけた。

公務員制度改革法案の抜本修正もめざす

賃下げ問題とあわせて焦点となっているのが、国家公務員の労働基本権の回復だ。政府が賃下げ法案とともに閣議決定した公務員制度改革関連4法案について、「これまで不当に剥奪されてきた労働基本権の一部である協約締結権を制度化させたことは、国公労連にとって、これまでの戦いの『到達点』」と一定の評価をしつつも、法案には (1)争議権(スト権)の付与が先送りされていること (2)中央労働委員会による労働組合の認証性を導入すること (3)管理運営事項が交渉対象となっていないこと (4)団体協約を締結する前に内閣の事前承認を必要としていること (5)労使の交渉が不調だった場合、中央労働委員会による仲裁裁定が「実施義務」ではなく「努力義務」となっていること――などの重大な問題点があると指摘。さらに「法案の裏には人事院制度を廃止することで、賃下げを目論む政府の思惑がある」との見解を示し、抜本修正に向けた取り組みを進めることを確認した。

このほか、政府の地域主権改革において地方整備局やハローワークなど国の出先機関を原則廃止しようという動きに対し、その実行を阻止するとともに、公務・公共サービスの拡充に向けた世論を拡大するため、各県で月1回の宣伝行動に取り組むことなどを決めた。

大会では役員改選が行われ、宮垣委員長、岩崎恒男副委員長、川村好伸副委員長、岡部書記長は留任。新副委員長に盛永雅則氏(人事院職組)が選ばれた。