国公制度改革法案と人事院勧告の動向を注視/自治労定期大会

(2011年8月26日 調査・解析部)

[労使]

地方公務員や公共民間サービス労働者などでつくる、自治労(86.5万人)は24~26日の3日間、長野市で定期大会を開催し、2012・13年度の運動方針や組織強化・拡大のための第三次推進計画などを決定した。徳永秀昭委員長はあいさつで、国公制度改革法案の動きに着目しつつ、地方の人事委員会勧告を求める姿勢を強調した。また、今大会では役員改選が行われた。徳永委員長は留任。新書記長には氏家常雄氏(東京本部葛飾区職労)を選んだ。

「国公制度改革法案は秋の成立をめざす決意」(徳永委員長)

徳永委員長はあいさつの中で、非現業国家公務員の労働協約締結権の回復などを盛り込んだ国家公務員制度改革関連四法案が6月3日に閣議決定・国会提出され、地方公務員についても総務省が6月2日、国公と整合性をもった改革作業に入るなどとした「地方公務員の労使関係制度に係る基本的考え方」を示したことについて、「法案はいくつかの課題を残しているが、この間積み上げた議論を踏まえたものとして評価できる。だが、国会は政局に終始し、法案の審議日程さえ示さず会期末を迎えようとしており、遺憾と言わざるを得ない」などと指摘した。

そのうえで、「今後は秋の臨時国会で必ず法案を成立させるという決意の下、連合・公務労協とともに全力で取り組みを進める。同時に成立後を見据え、『要求―交渉―妥結』の交渉プロセスを確立する※1、自律的労使関係の構築に向けた取り組みが必要だ。単組の組織強化を図りながら、組合員の納得と住民の理解が得られる、自治体労働者の賃金労働条件を確立していかなければならない。新しい公務労使関係制度の2013年のスタートに向け、これからの2年間が非常に重要な期間になる」などと強調した。

「地公の賃金は特例法案に依らず人事委員会勧告で」(徳永委員長)

関連して、国家公務員の賃金を2014年3月末までの時限で引き下げるとした臨時特例法案が、国会に上程されていることについて触れ、「真摯な交渉・協議を行った上で、厳しい国家財政や東日本大震災等を総合的に判断して妥結・合意したもの。国公の組合にとってはまさしく苦渋の判断だったが、自律的労使関係を措置するための関連法案との同時決着、そして地公への遮断を前提に合意したもの。公務員連絡会は人事院に対し、(本年の)給与勧告を行わないよう求めてきた」などと説明。地公部会や自治労のスタンスとしては「地方の人事委員会勧告を求める取り組みを確認してきた。人事院はその存在意義をアピールするためにも、官民較差に基づく給与改定勧告を行うことや、いわゆる現給保障問題に言及する可能性が十分想定される。人事院・人事委員会勧告の内容により、確定闘争の置かれる状況が大きく左右されるだけに、今後もその動向を注視しながら、公務員連絡会とともに取り組みを進める」などと述べた。

職場の実態に応じた人員確保を

大会では、「新しい公務員制度の実現と生活改善の取り組み」や「人員確保と時短・安全衛生など働きやすい職場づくり」など16本を柱とする2012―13年度の運動方針を決定した。

「新しい公務員制度の実現等」に関しては、「地方公務員法の施行以来の大改革であり、公務労働運動の存亡に係わる事態でもある」との認識の下、 (1)本部に「公務員制度改革対策室(仮)」(2013年8月まで)を設置して体制を強化する (2)地方公務員の制度設計として「中央協議システム」の創設を図ることや、「条例事項」は制度の大枠にとどめ具体的な賃金・労働条件は「規則以下事項」とすることなどを重点に、政府・総務省対策を進める (3)交渉回数・事項、書面協定、賃金・労働条件等に係る条例規則についての全国調査を実施し、「モデル労働協約指針(仮)」を策定する――ことなどを掲げている。

また、「人員確保等」をめぐっては、片山大臣が昨年10月の自治労との定例会見で、「集中改革プランの対象期間は過ぎた。これからは本当に仕事に見合った定数を、自治体それぞれで考え条例定数を規定することになる」などと回答したことを受け、すべての単組で、 (1)集中改革プラン策定(2005年)からの削減数や条例定数との乖離 (2)不払い残業を含む超過勤務の実態や年休の取得状況 (3)臨時・非常勤等職員や派遣労働者の配置・業務内容 (4)高齢者再任用制度の実施状況――などを点検・把握したうえで、職場の実態に応じた人員要求数を積み上げ、人員確保闘争の再構築を図るなどとしている。

消防団員や非正規、社会福祉分野の組織化を

大会ではまた、「組織強化・拡大のための推進計画」として、第二次(2007年9月からの4年間)の進捗を総括し、第三次計画を策定した。

前計画では、構造改革や市町村合併等を通じ、正規の地方公務員の組合員数が06年対比で約8万9,000人減少の80万6,000人まで落ち込むなか、臨時・非常勤等職員の組織化も同3,600人減少の3万3,000人(組織率6.9%)にとどまるなど、『組織拡大アクション21』(2000年)で打ち出した単年度2万人の拡大目標には到達できなかった。

そのため新計画では、今年9月からの4年間を「公務員制度改革集中対策期間」と位置づけ、単組の機能強化や組織拡大等に取り組む。さらに『組織拡大アクション21』を当初の10年計画から継続的な取り組みに位置づけ直し、組織拡大オルグや組織拡大専門員等の間で戦略・ノウハウ等を共有する自治労『産別オルグ団』を形成。当面は、 (1)消防職員の団結権問題が大詰めを迎え、「付与はほぼ確実な情勢である」ことから組織化※2に向けた準備を急ぐ (2)新規採用職員(加入率65.8%)や本庁職場の未加入者、臨時・非常勤職員等に対する組織化を強化する (3)自治体病院の経営形態の変更(地方公営企業法全部適用等)に対応した労組の確立や、社会福祉分野の組織拡大を図る (4)環境や教育の関係職場、庁舎管理等の民間委託労働者、指定管理職場労働者等の組織化を進める――ことに力点を置く。

このほか、大会では「脱原発とエネルギー政策の転換を進める決議」などの特別決議も採択した。

※1)自治労の2010年の春闘交渉結果の集約によると、全2,592組合中、要求書を提出したのは51%で、交渉を実施したのは39%、書面確認に至ったのは13%にとどまっている。

※2)この間も「消防職員の組織化方針」を踏まえ、全国消防職員協議会と協力した自主組織づくりを進めてきたが、消防職員約15万人のうち、全消協の会員数は189単協1.3万人にとどまっている。