被災地と連帯した取り組みを/全労連評議員会

(2011年7月27日 調査・解析部)

[労使]

全労連(大黒作治議長、約87万人)は7月21、22の両日、静岡県熱海市で第46回評議員会(大会に次ぐ決議機関)を開き、東日本大震災の発生を踏まえた、昨年大会で決めた2年間の方針を補強する11年度の運動方針を決めた。補強の柱は、 (1)東日本大震災からの復旧、復興をめざす被災地と連帯した取り組みの強化 (2)「原発ゼロ」をめざす運動の前進に積極的な役割を果たす (3)大震災による雇用悪化を許さず、雇用の安定と質の向上をめざす (4)生計費原則の賃金・所得の確保をめざす――など。方針は、「大震災後の状況で新自由主義との対決点がより鮮明になっており、ディーセントワーク実現をめざす運動を攻勢的に進める」などとしている。

原発ゼロをめざす運動を

あいさつした大黒議長は、東日本大震災後の状況に触れて「震災復興や原発問題でも明らかなように、財界、大企業はこれまでの新自由主義に基づく『市場原理主義』『構造改革』『自己責任論』をすべての産業や地域でいっそう具体的に押し付けようとしており、これに反撃する闘いをいかに発展させるかだ」と述べ、運動の強化を訴えた。また、原子力発電について、「世界中が『福島』を注視している。国内でも原発の『縮小・廃止』が圧倒的世論へと変わり、全労連も『原発ゼロ』に向かうプロセスと自然エネルギーへの転換の道筋を明らかにする政策提言を行った。『原発ゼロ』をめざす大きな国民運動へと発展させたい」と強調して、エネルギー政策の転換を求めた。

そのほか、今春の賃上げ交渉について、「大震災で交渉の中断を余儀なくされたものの、内需を拡大して景気を回復させるため、なんとしても賃上げをという執念を持った意気込みが伝わる春闘となり、4月の集中した取り組みで、昨年より若干上積みしたところも多く見られた」と評価した。

民主党政権は「構造改革」路線に回帰

補強方針は、「民主党政権は、国際競争力強化を求める財界の圧力に屈し、大震災以前から『構造改革』路線に回帰し、より激しい労働者、国民いじめの施策を進め始めていた。その状況下で発生した東日本大震災が、新自由主義改革の矛盾が集中していた地域に壊滅的な被害を与え、その矛盾を一気に表面化した」と分析。「コスト優先、経済効率優先の社会は災害に対して脆弱だった。個人消費の活性化策を取らなかったことが災害復興の障害になっている」などと指摘して、民主党政権の政策を批判している。

「被災地と連帯した取り組み」では、復興に向けた政策要求を進めるとともに、住まいと雇用の再建支援策の拡充、東京電力と国による原発事故の全面補償などを求めて、署名・宣伝活動を全国展開する考えだ。「『原発ゼロ』の前進に積極的な役割を果たす」に関しては、「政府に原発ゼロに向けて踏み出すよう決断を迫り、期限を切った廃止プログラムと自然エネルギーへの本格転換の計画づくりを求める。諸団体とともに草の根からの『原発ゼロをめざす行動』を組織し、地方議会での意見書採択運動に取り組む」などとしている。

雇用の安定と質の向上も

「雇用の安定と質の向上をめざす取り組み」については、「労働者派遣法抜本改正、有期雇用規制強化、男女賃金格差是正、均等待遇実現をめざす制度改善運動を震災復興の取り組みに位置づける。被災地でのチープレーバーづくりを許さず、公務関連職場での安定した良質な雇用実現の課題として、公契約条例制定運動を強化する」ことなどが盛り込まれており、人間らしい働き方を求める「ディーセントワーク署名」にも今秋から1年間かけて取り組む方針だ。

討論では、「労働相談では、実際はあまり震災被害がないのに、震災を口実とした採用取り消しなど便乗解雇・雇い止めの相談がきている」(宮城県労連)、「脱原発を県の復興ビジョンに盛り込ませたい。42万枚のビラを作って、県民アンケートを展開する」(福島県労連)、「大震災で課題が鮮明になった。ゆがんだ大企業一人勝ちの構造改革路線を、労働者・国民本位のものにしたい」(京都総評)などの意見がでた。