震災でも闘争態勢は堅持/連合の2011春季生活闘争まとめ

(2011年7月15日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長、680万人)は14日の中央執行委員会で、今春闘の総括である「2011春季生活闘争のまとめ」を確認した。3月の交渉のヤマ場直前に震災が発生し、当初設定していた闘争の進め方の変更を余儀なくされたが、闘争態勢は「基本的に堅持することができた」と総括。それが賃上げ額の前年比119円増につながったとしている。

平均方式で前年比119円増

今春闘での連合の闘いの進め方は、交渉リード役の「第一先行組合」と内需産業を中心とする産別でつくる「有志共闘」が3月のヤマ場に回答を引き出し、その翌週に決着をめざす「第二先行組合」を設定することで相場を形成し、3月28日から4月1日までの中小労組の集中回答ゾーンにつなげる狙いだった。しかし、3月11日に東日本大震災が発生。当初の進め方をあらため、産業別組織が自主判断に基づいて取り組むことにしたが、春闘まとめは「大震災という、かつてない状況下でも産別指導のもと、闘争態勢について基本的に堅持することができた」と評価。このことが、平均賃金方式での引き上げ額(7月1日現在)の昨年対比119円増、中小(300人未満)では258円増につながった要因となったと分析している。

今季闘争では、賃金水準の直近のピークである1997年の水準への復元をめざすため、「1%を目安に配分を求める」ことに加え、産別間の取り組みの「幅」を認めて取り組んだが、これについては「運動全体として同一の目標に向かって共闘的な行動を展開できたものと受け止める」と総括した。全体集計(7月1日現在)をみると、賃金カーブを維持した組合は、妥結した組合6,527組合のうち、2,860組合(43.8%)で、組合員数ベースでは67.2%(全体数420万8,254人のうち282万8,147人)。賃金改善分獲得組合は組合数ベースで8.3%、組合員数ベースで5.7%となっている。この結果については「十分な結果を獲得したとは言えないものの、厳しい交渉環境の中で粘り強く交渉を展開したことが、昨年を若干上回る結果につながったと受け止める」としている。

非正規の処遇改善取り組みは増加

非正規労働者の取り組みについては、今年は「非正規共闘」を設置して処遇改善に注力したが、取り組み組合数は昨年より626組合多い3,787組合となったと報告した。

7月1日現在の集計結果をあらためてみると、登録組合のうち4,628組合(約219万人)が妥結・妥結方向となっており、平均賃金方式での引き上げ額は4,924円(4061組合の加重平均)で引き上げ率は1.71%となっている。引き上げ率は前年実績に比べ0.04ポイント増。中小共闘(300人未満)の賃上げ結果は、加重平均で3,780円、1.53%となり、前年実績を額で258円、率で0.10ポイント上回った。また、賃金カーブ維持分が算定困難な組合は4,500円を要求することにしたが、4,500円以上を獲得した組合の割合は25.3%(932組合)と前年実績(22.3%)を上回った。春闘まとめは「課題を残した。今後、4,500円をいかに確保していくかの検討をしていく」としている。

一時金は、年間4.41カ月(組合員数での加重平均)で、前年に比べ0.03カ月アップとなった。

来春闘に向け、経営側の人件費抑制姿勢をけん制

2012春闘に向けた課題と対応について、春闘まとめは、経営側が総額人件費の抑制を続けていると批判しており、20年にも及ぶ日本経済低迷の大きな要因は「労働コストの削減に偏った施策を長年にわたって追求してきたことにある」と強調。「すでにマクロ経済環境は大きく変化しており、効率性や、それに基づく労働コストの削減に偏った生産性向上を追求するだけでは、持続可能な経営基盤を確立することはできない」として、人への投資による内需拡大を訴えている。