エネルギー政策は大会後すみやかに議論開始/電機連合の定期大会

(2011年7月13日 調査・解析部)

[労使]

電機連合(有野正治委員長、約59万9,000人)は7、8の両日、群馬県前橋市で定期大会を開催し、昨年の大会で確認した「2010・2011年度運動方針」の補強方針を確認した。年齢別最低賃金の設定ポイントを現行の40歳から35歳に変更することなど、2009年に確立した「第6次賃金政策」の具体化の検討や、電機産業の法定産業別最低賃金の水準改善などに取り組む。今後のエネルギー政策について有野委員長はあいさつのなかで、冷静な議論を呼びかけるとともに、大会後すみやかに組織内論議を進めることを表明した。

既存の原発は条件付きで稼働を/有野委員長

あいさつのなかで有野委員長は原発事故と今後の原子力発電所の稼働問題について、「これまでの『原発は絶対安全』という考え方は根本から見直しが必要になってくることは確かだ」としたものの、「まず既存の原発稼働については、安全面の再点検や地震、津波に対する安全増対策を行い、地域の理解を得ることを前提に、国民生活や日本経済への影響も十分考慮しながら冷静に判断すべきと考える」と述べ、既存の原発については条件付きで稼働を求めるスタンスを明らかにした。今後のエネルギー政策については、「安全、環境、安定供給、コスト面はもちろん、日本経済の持続的発展や将来のエネルギーのあるべき姿を十分意識しながら大会後すみやかに組織内論議を進め、連合を通じて国の政策に意見反映させていく」と述べた。

7日、大会に先だって行われた記者会見で有野委員長は、既存の原発の稼働を求める理由について、震災特需と世界的な需要の高まりで各社の供給量が増えていくなか、電力不足と点検中の原発の稼働停止が続けば「産業として厳しい」と指摘。「産業からすれば、(脱原発が強調される)このムードはあり得ない。冷静に状況をみてほしい」と語った。

第6次賃金政策の具体化を

運動方針の補強ではまず、第6次賃金政策の具体化の検討を盛り込んだ。同政策では、絶対額を重視し、春闘での要求ポイントに設定される「基幹労働者賃金」などの個別賃金水準について、統一要求基準や統一目標基準を設定し、その水準の改善と産業内横断化をめざすことなどが柱。電機連合では、政策の具体化に向けての検討課題に掲げた項目のうち、年齢別最低賃金の設定ポイントを現行の40歳から35歳に変更することについて、具体化の検討に入るとした。

最低賃金の改善に向けた取り組みの強化もはかる。春闘での年齢別最賃の水準改善の取り組みと法定産業別(特定)最賃改正の取り組みを連動させて賃金の底上げと格差改善をめざす。また、近年は法定の地域別最賃が全国加重平均でみて2008年度703円、09年度713円、10年度730円と上昇しており、電機産業の法定産別最賃に近づいている(全国加重平均で08年度771円、09年度775円、10年度783円)。そのため、最近では産別最賃について「経営側から存在意義についての指摘があり、不要論の主張を強めている」(電機連合)という。こうしたこともあり、電機連合では、非正規労働者の「均等・均衡処遇の実現を図るうえでも重要な役割を果たしている」最賃の水準のあり方について抜本的な検討を行うとしている。

間接労働者の受け入れ協議の徹底を

派遣労働者や請負労働者についての各労組の対応方針を定めた「電機産業における派遣・請負労働者の権利保護ガイドライン」については、現行の内容を補強・追加し、中間報告として提示した。派遣労働者を受け入れる労組の対応として、事前の労使協議の徹底はこれまでも掲げてきたが、「受け入れ協議については、既存の委員会の付議事項とするか、新たな労使協議の場を設置すること」を徹底させる。

大会ではこのほか、今年の春闘の総括である闘争の評価と課題を報告し、確認した。今春闘で電機連合は、賃金体系の維持だけでなく、賃金の産業内格差改善(産業内水準と大きな差がある組合が取り組む)と賃金水準の「ひずみの是正」(水準に低下傾向がみられる組合が是正に取り組む)にも取り組んだ。7月4日現在で、格差改善では34組合が取り組み14組合で前進が図られ、ひずみ是正では21組合中7組合で成果があったとの報告があった。一時金については、中闘組合では前年を上回る結果となったものの、全体では4割を超える組合が、電機連合が定める産別ミニマムの4カ月を下回る結果となったことが課題点として示された。

なお、補強方針の討議では、構成組織から本部に対し、与党・民主党に対する注文の声が相次いだ。