UIゼンセン同盟との再編統合の協議再開を提起/JSD定期大会

(2011年6月24日 調査・解析部)

[労使]

百貨店やスーパーなどの組合でつくる、サービス・流通連合(JSD・八野正一会長、約22万人)は21~22日、都内で結成10周年の節目となる定期大会を開き、向こう2年間の運動方針をはじめ、 (1)今春闘の総括を含む「2012労働条件改善交渉方針」 (2)議員懇談会の設置を含む「新たな政治活動の考え方」 (3)CО2削減に向けた「JSD環境問題対応指針」等を決定した。また、大会では「(新産別結成に向けた)UIゼンセン同盟との産別再編統合協議再開方針」を提起した。今後、組織内討議を経て改めて9月20日の臨時大会で議論し、方向性を明確にする考えだ。

「産別再編統合の課題を我々の後の世代に送ってはならない」(八野会長)

再編統合問題をめぐっては、UIゼンセン同盟との間で05~08年にかけて検討し、結果的に不調に終わった経緯がある。あいさつした八野会長は、大会で協議再開に向けた方針を提起することに触れ、「われわれは、卸・小売で捉えると製造に次ぐ雇用労働者を擁しているにも係わらず、産業としての地位は確立されておらず、産業政策に対する影響力も強くなく、労働条件も他産業より相対的に低い」と指摘。「いろいろな実情・不安はあろうが、これまでの視野に捉われずに物事を考え、産別再編統合の課題を我々の後の世代に送ることなく、ここにいるメンバーで将来のために決断することが求められている」などと強調した。

大会では、俣野・事務局次長が「(新産別結成に向けた)UIゼンセン同盟との産別再編統合協議再開方針」を提起した。産別再編統合のメリットとして、 (1)連合結成来、またJSD結成(チェーン労協・商業労連統合)以来の懸案である一産業一産別化の実現 (2)130万人(流通だけでも70万人)の組織化を通じた、産業の社会的・政治的地位の向上や、連合内での発言力の強化 (3)産業労使関係の確立――等をあげたうえで、「前回の統合協議はいわばトップダウン方式で新産別の姿を示そうとして会費と名称問題で頓挫し、共同文書の確認という形で終わりを告げたが、今回は各組織との対話を基に素案をまとめ、昨年9月の三役提起から本年4月の中執での再提示まで異例の取扱いを行ってきている」などと説明した(注1)

また、今後のスケジュール見通しとして、 (1)9月の臨時大会での協議再開方針の審議 (2)速やかにUIゼンセン同盟との政策協議を再開 (3)新産別の姿(案)を完成させる (4)来年の定期大会で提起 (5)各単組で新産別に参加するかを協議・経営側へも説明 (6)2013年を目途の解散大会を開き新産別結成――の6つのステップがあるなどと説明した。

賃金要求の統一的運動を強化へ

大会ではこのほか、「魅力的な働き方の実現」「政策運動の推進」など13本を柱とする「2011・12運動方針」を決定した。方針では結成以来、16単組減の140組織となり、フルタイマーが3.3万人減少する一方、パートタイマーが6.1万人増加して約22万人(パートタイマー比率が倍加して約44%)となった組織の現況を踏まえ、「今後ますます増加していく有期組合員の課題対応を強化していかなければならない」(岡田・事務局長)と指摘。「同一価値労働同一賃金の実現を早期に進めるため、直雇用者の組織化、最低賃金、応援店員・派遣等の環境整備に積極的に取り組む」などとした。

また、「JSDが賃金を含めた要求基準を策定し、本格的に統一的運動に取り組み始めて4年が経過したが、未だ要求~妥結に至るスケジュールや情報開示、方針に基づく要求・交渉等で課題を残す」(同)なか、リーマンショック以降(2004年対比で)、平均月例賃金は5,000円減、臨時賃金は年間3.6カ月から2.32カ月にまで落ち込んでいる。年収ベースではほぼ50万円減と賃金低下が著しいにも係わらず、年間総実労働時間は2,053時間にも及んでいる。こうした現状を踏まえて方針は、「労使自治・自決を基本としつつも、常に友愛と連帯に基づき全加盟組合が責任を果たしていかなければならず、今後この運動をさらに強化する」などとしている。

新たな政治活動の考え方を策定

大会ではまた、「新たな政治活動の考え方」も決定した。JSDはこれまで特定の政党支持を行わず、政策に賛同する議員個人を「友好・協力議員」として連携し、「労組の本来の機能を逸脱するような政治活動は行わない」との方針を堅持してきた。

これに対し、本大会では「政策実現のため、政治の取り組みを強化しなければならない」とし、 (1)流通サービス政策議員懇談会(仮称)を設置し、友好・協力議員などと政策について議論・検討する (2)友好議員制度は継続するが、連合方針と矛盾しないよう「連合推薦」を(選定)要件に追加する (3)組織内議員も流通・サービス政策の実現に向け必要だが、財政・組織運営上の困難から当面擁立しない (4)労組の本来機能を逸脱しない範囲での特定政党の支持を行う(将来的には綱領の見直しも検討) (5)政治活動強化のため財政基盤の確立を図るには政治団体の設立が必要――などの新たな方針を示し、可決された(注2)

大会では役員改選を行い、八野・会長(三越伊勢丹グループ労組出身)が続投を決めたほか、事務局長には初めて女性が選ばれ、石黒生子・事務局長(全ユニー労組出身)が就任した。

(注1)「今春の交渉方針を決定、UIゼンセンとの統合協議をめぐる討議も/JSD中央委」を参照(メールマガジン労働情報No.693記事:2011年1月26日発行)。

(注2)連合内の組合員10万人以上の16産別中、組織内議員を持つのは13組織で、政治団体があるのは9組織(例えばUIゼンセン同盟政治連盟、自治労政治フォーラム、自動車総連・車と社会を考える会、電機連合政治活動委員会、JAM政治連盟等)、議員懇談会を持つのは6組織(例えばUIゼンセン同盟政治懇話会(約80人)、電機連合議員団(国政8・地方約180人)、JAM政策政治フォーラム(約30人)等)―となっている。