賃金カーブ維持に加えて3つの指標で格差是正・復元分の改善を/電力総連中央委員会

(2011年2月18日 調査・解析部)

[労使]

電力会社の労組などが加盟する電力総連(種岡成一会長、21万7,000人)は16日、都内で中央委員会を開き、賃金カーブ維持分の確保などを要求の柱とする「2011春季生活闘争方針」を確認した。昨年に引きつづき、統一要求としてのベアは見送るが、社会水準との格差がある中小組合などについては、1,500~2,000円の水準で格差是正・復元分の賃金改善を求める。

賃金カーブ維持分の確保に徹底的にこだわる

賃金カーブ維持に加えて3つの指標で格差是正・復元分の改善を/電力総連中央委員会:メールマガジン労働情報 No.699(2月18日 調査・解析部)

方針は、「賃金引き上げについて、賃金カーブ維持分の確保に徹底的にこだわり、そのうえで加盟組合の実態に応じて、賃金の格差是正・復元をめざした賃金改定に取り組む」としている。

賃金カーブ維持分の確保については、賃金制度が確立している組合はその賃金表を維持し、昇給ルールが制度化されていない組合は自社の賃金実態を踏まえた賃金カーブ維持分を要求する。また、過去に雇用安定を優先して定期昇給分の凍結や定昇凍結などを行わざるを得なかった場合は、その回復を求める。

社会水準との格差是正・復元やミニマム水準確保の取り組みも

そのうえで、経年的に賃金水準が下がっていたり、電力総連のミニマム水準を下回る組合は、賃金の格差是正・復元を求める。

経年的に水準が低下している組合は、「(自社の賃金)実態を把握し、社会水準(厚生労働省の賃金構造基本統計調査の規模計)をめざす」との考え方を基本に、3つの指標を参考に該当する組合が中長期的に取り組む。具体的には、 (1)個別賃金が直近の社会水準と比較して低位にある場合は、中期的にその格差是正に取り組む【今春闘では1,500円の改善】 (2)自社賃金水準のピークへの復元をめざし、職場実態を踏まえ、中長期的にその復元に取り組む【同1,800円】 (3)連合全体としてめざす水準で、職場実態を踏まえ、中長期的にその格差是正に取り組む【同2,000円】――を提示している。

また、賃金水準が電力総連のミニマム水準を下回る組合は、個別賃金水準の引き上げに取り組む。ミニマム水準を確保した上で、さらに社会水準を踏まえた引き上げが必要だと判断した場合は、26万円(高卒30歳・勤続12年)、30万1,000円(高卒35歳・勤続17年)などの目標水準を参考に、その獲得をめざす。

このほか、賃金制度改定時に定期昇給分の原資などを減額改定した場合の影響の検証と回復を図ることや、自社の賃金カーブそのものに歪みや偏りがあった場合の改善にも取り組む考えだ。

1,500~2,000円の指標を参考に交渉推進を

種岡会長はあいさつで、「電力総連内の賃金実態をみると、中小加盟組合を中心に賃金水準がここ数年低下し、社会水準も下回っている組織もある」と指摘。「電力関連産業に働く者に相応しい労働条件の水準を求める視点から、賃金の推移の実態を把握するとともに、格差是正・復元のための1,500円、1,800円、2,000円の指標も示した。この指標を参考に交渉を進めて欲しい」と訴えた。

一時金は年間4カ月を最低水準に設定

一方、賞与・一時金は「年間賃金の一部であり、安定的な生活給部分」として年間4カ月を最低水準とし、過去の妥結実績や企業業績、生産性向上、職場実態などを勘案して、さらに上積みを図った要求を行う。

パートタイム労働者などの待遇改善に関しては、最低賃金協定額の890円(時間額)をめざし、職務内容・責任、契約期間、今年度の地域別最低賃金引き上げ額(平均17円)などを踏まえ、20円以上を求める考え。既に890円を超えている場合も、同様も考え方で取り組む。また、同じ職場で働く派遣労働者などについても、業務内容や受け入れ規模、契約期間、契約場所、契約条件などの情報開示を求めることで実態把握を進める方針だ。

要求書は、今月21日の統一要求日に一斉に提出。3月中旬を交渉のヤマ場とし、遅くとも4月末までの解決をめざす。