春闘開始を宣言/連合が中央集会を開催

(2011年2月16日 調査・解析部)

[労使]

主要労組が要求を決定・提出し、交渉が本格化するのを前に、連合(古賀伸明会長)は10日、東京・日比谷公会堂で「2011春季生活闘争・闘争開始宣言中央集会」を開き、組合員約2,000人が集まった。古賀会長は、「職場に多くの非正規雇用労働者が働いている現実に責任を負う立場にある」などと述べ、非正規労働者の処遇改善に取り組む姿勢を強調した。

1%を目安に適正な配分を追求

冒頭、あいさつに立った古賀会長は「今の経済・社会の歪みは、わが国の経済・社会の再生との切り口で捉えなければ解決できない。配分の歪みの是正は、組合員はじめすべての働く者のためだが、日本経済社会全体のマクロの要請でもある。2011春季生活闘争は、すべての労働組合がすべての働く者のために、1%を目安に適正な配分を追求し、労働条件の復元、格差是正に向けた取り組みを展開する」と強調した。

もっとも痛んだ非正規労働者の雇用と生活の向上に取り組む

2011春季生活闘争・闘争開始宣言中央集会:メールマガジン労働情報 No.698(2011年2月16日 調査・解析部)/JILPT

非正規労働者への対応については、「近年の賃金水準の停滞には、正規労働者の賃金改善率が低いことに加え、パートタイム労働者や契約、嘱託労働者などフルタイムの非正規雇用労働者が増加したことが影響している。非正規共闘を中心に時間給ベースで正規社員を上回る賃金の引き上げを追求する」と述べるとともに、派遣労働者などの間接雇用労働者に対しても、「受け入れにあたって労使協議などを通じ、社会保険への加入状況など法令遵守の徹底について取り組む。そのうえで、賃金の引き上げや正規化等の課題について労使協議・交渉を推進する」との決意を表明。「われわれは、自分たちの職場に多くの非正規雇用労働者が働いている現実に責任を負う立場にある。一部の犠牲の上に企業・産業・社会が発展するのは健全な姿ではない。この間、もっとも痛んだ非正規労働者の雇用と生活の向上のために取り組もう」と呼びかけた。

大手労組は交渉テーブルに取り引きの適正化と利益の公正な配分を

8年目を迎える中小共闘の河野和治・中小労働委員会委員長(JAM会長)は、「中小(と大手の間に)は退職金をはじめ、一時金、賃金などさまざまな格差が存在する。中小共闘はすべての基礎となる賃金にこだわる。カーブ維持は定年制がある以上、内転原資であり賃上げではない。制度のないところは定昇維持相当分4,500円を確保したうえで賃金の復元を求めていく。中小は人材確保こそ生きる道。そのために賃金の復元は避けて通れない」と強調。そのうえで、「大手労組は取り引きの適正化と利益の公正な配分を交渉のテーブルに上げて欲しい」などと述べ、大手労組の支援を要請した。

意識転換を図り、すべての労働者に眼を向けた運動を

また、八野正一・パート・有機契約共闘会議座長(サービス・流通連合会長)は、今年から設置された非正規共闘と6年目の取り組みとなるパート共闘を代表して、「現在、多くの産業・企業で非正規労働者抜きで職場は回らないが、非正規労働者のなかで仕事を主としている人の6割以上が年収200万未満で、仕事で求められる役割・責任と待遇があまりにも不均衡になっている。仕事も働く背景にある生活環境も正社員と変わらないのに、労働条件に大きな格差があることをこれ以上放置することはできない」と説明。「企業は生き残りをかけて労務コストの効率化や需要変動リスクの対応として非正規労働者を増加させてきたが、労働組合も雇用形態や働く時間の違いなどを理由に自らカベを作ってきたのではないか。社内に従業員間のカベをつくった結果、職場のみならず雇用そのものが劣化した。日本企業の大きな力だったチームワークや技能伝承も失われてきている」と指摘した。そして、「これまで辿った道を断ち切り、誰もが安心して働ける社会をつくっていくためにも、労働組合こそが意識転換を図り、すべての労働者に眼を向けた運動を展開しなくてはならない」と主張した。

このほか、集会では、2009年春闘からスタートした(「金属」「化学・食品・製造等」「流通・サービス・金融」「公益・インフラ」「交通・運輸」の)5つの共闘連絡会議の各代表が決意を表明。「縮み志向の経営姿勢を転換、働くモチベーションの向上と積極的に人への投資を行わせ、内需の縮小を食い止め、日本経済を健全な状態に回復していく」などとする「闘争開始宣言」も採択した。