年間一時金と格差改善を柱とする春闘要求を決定/基幹労連中央委員会

(2011年2月9日 調査・解析部)

[労使]

鉄鋼、造船重機、非鉄金属の労働組合でつくる基幹労連(神津里季生委員長、25万4,000人)は8日、静岡県浜松市で中央委員会を開き、今季交渉に向けた「AP11春季取り組み方針」を決めた。年間5カ月を基本とする一時金や年休の初年度付与日数、時間外割増率、労災・通災付加補償などの産別基準への到達・格差改善などを要求。傘下組合は、鉄鋼大手などを中心に10日に集中して経営側に要求書を提出する。

基幹労連第8回中央委員会/メールマガジン労働情報 No.697(2月9日 調査・解析部)

基幹労連の春闘は、働く人への投資として魅力ある労働条件をつくり上げることで、産業・企業の競争力強化との好循環を生み出すとの考え方を基本に、2年サイクルで取り組んでいる。賃上げを中心に主要な労働条件全般について取り組む「基本的労働条件改訂年度(基本年度)」と、業績連動方式を導入していない組合の一時金と、中小組合の産別基準への到達・格差改善の取り組みが要求の中心になる「個別的労働条件改訂年度(個別年度)」に分けており、2011年は個別年度にあたる。

一時金はJC方針を踏まえて要求方式ごとに

年間一時金要求は、金属労協の「年間5カ月分以上を基本」とする考え方を踏まえて、要求方式ごとに設定。要求方式ごとの要求については、 (1)金額要求方式の場合、「生活考慮要素120万円ないし130万円」+「成果反映要素40万円」 (2)金額+月数要求方式の場合、40万円+4カ月 (3)月数要求方式の場合、5カ月――を基本とする。そのうえで、各要求方式で示した水準以上をめざせる組合は、さらに増額を図ることとする。

中小の格差改善は4つの要求項目を設定

中小組合の格差改善では、 (1)年次有給休暇の初年度付与日数を20日以上とする (2)時間外・休日割増率の改善をはかる (3)労働災害付加補償の死亡弔慰金3,400万円、通勤途上災害付加補償の死亡弔慰金1,700万円への到達を図る (4)「60歳以降の安定雇用の確保」に対する労使検討の場の設置に向けて取り組む――ことを共通要求とする。また、組合によっては月例賃金や退職金などの格差改善にも取り組む。

非正規労働者の労災付加補償を正社員と同等の取り扱いに

さらに、2011春闘では、ワーク・ライフ・バランスに関する「労使話し合いの場」を活用して、失効年休を発生させないことなどを通じて、年休取得率向上に向けた取り組みを強化する。連合と金属労協が力を入れる「非正規労働者を含めた働く者すべての待遇改善」の対応については、直接雇用の非正規労働者に焦点を当て、労災付加補償の正社員と同等の取り扱いを求めていく。

「60歳以降の安定雇用」で8項目の基本方針を提示

厚生年金報酬比例部分の支給開始年齢が段階的に引き上げられ、最終的には65歳まで無年金状態になる、いわゆる「2013年問題」への対応として、基幹労連は昨年の春闘で、「60歳以降の雇用確保」の要求を盛り込み、大手では「年金支給開始年齢にリンクした安定雇用の必要性を認識し、その実現に向けた制度の労使検討の場を設置する」ことで決着した。

その後の協議の動向を踏まえ、中央委員会では、「60歳以降の安定雇用」の確保に向けた、「めざすべき基本的な考え方」を示した。 (1)希望者全員に対する年金支給開始年齢までの雇用の場の確保 (2)生計費の確保と成果に見合う処遇の両立 (3)働き方を重視しつつも生活環境や年齢などの配慮すべきポイントを踏まえた検討 (4)一貫した福利厚生など諸制度の適用と組合員籍の維持 (5)適切な退職金支給時期 (6)クリアすべきハードル、将来の姿とそれに向けた課題を踏まえた検討 (7)目的は(定年延長、再雇用制度といった名前にはこだわらない)「60歳以降の安定雇用」の確保 (8)2013年度の退職者より実施可能な制度――の8項目からなっている。

あいさつした神津委員長は、「この問題に決着をつけるのは一年後(の2012春闘)を目途とするが、この課題は一朝一夕に解決が図られるようなしろものではない。今回提起する考え方をもとに労使で徹底的に話し合い、そのうえに立って交渉に向けた土台を形作っていく。今回の提起内容は一連の取り組みのなかにあって極めて重要な位置付けにある」などと強調した。

60歳以降雇用では対応の明確化を求める意見が

同問題に関する質疑では、本部に明確な方向性の提起を求める大手組合の意見が相次いだ。IHI労連は、「2013年度の退職者からの制度実施は、産別の指示する方向によっては、組合の規約や規定の改定などある程度の準備や移行期間が必要になる。早急に最低限取り組むべき項目を明らかにし、前広に議論して合意形成を図って欲しい」と要請。三菱重工労組も「本部として、60歳以降の安定雇用の確保に向けた働き方および労働条件面、賃金、処遇体系、福利厚生などを早期に整理するとともに指針を明確に示して欲しい」と訴えた。新日鉄労連からは「クリアすべきハードルや将来めざすべき姿の検討に当たっては、企業業績や職場実態に違いがあることや組合員のニーズに多様性があることから、加盟組合の意向を十分踏まえ、一体となって取り組めるものとなるよう議論して欲しい」と要望した。

また、中小組合からは、「(加盟組織のなかには)運輸事業を行う組織もあるが、そうしたところでは会社との話し合いのなかで、『60歳を超えたら長距離運転は無理だろう』と言われる。また、別の組織で労務構成の高さを問題にされた話も聞いた。交渉に入れば、経営側から様々な問題が出される。産別の支援と総合(大手)組合からの支援をお願いしたい」(日鉱コイルセンター労組)との訴えもあった。

基幹労連は今後、企業連や単組などの議論・検討を踏まえたうえで、今年9月の定期大会でクリアすべき項目や将来的に目指すべき姿や課題を提起する考えだ。