到達水準未満は体系維持+1,500円以上を/UIゼンセン同盟の統一方針

(2011年1月28日 調査・解析部)

[労使]

民間最大産別のUIゼンセン同盟(108万8,200人)は27日、都内で中央委員会を開き、2011統一賃金闘争方針を決定した。方針は「格差是正を含めた労働者への分配として1%程度の賃上げをめざし、高卒35歳・勤続17年の基本賃金で26万円、大卒30歳・勤続8年で25.5万円等を到達水準とする」ことを基本に、 (1)これを上回る場合は、賃金カーブの是正や生活・職務関連手当の引上げ等 (2)下回る場合は賃金体系維持分を確保した上で、格差是正分として一人平均1,500円以上 (3)賃金体系維持分が不明確な場合は一人平均6,000円――などの要求パターンを設定している。

「あるべき賃金水準を求めての闘い」(落合会長)

あいさつした落合清四会長は、日本経団連の「経営労働政策委員会報告」が、春闘終焉を示唆し、課題解決型・労使パートナーシップ対話への移行を提唱していることに触れ、「社員組合的な労使協調路線への誘いを感じさせる。横並びの交渉を否定することは労働組合の原点である団結と連帯を弱めることになる」などと批判。そのうえで、今季闘争について、「不況脱却の方策はデフレスパイラルを止めることにも係わらず、個別の段階になると、賃上げは無理といった声が連鎖し、合成の誤謬の繰り返しを止めることができなかった。今次交渉は全加盟組合による、あるべき賃金水準を求めての闘いだ。横並びによる統一賃闘の意義は、厳しい経営状況の組合にあっても、何らかの賃金アップができたという実績を創り上げることにある」と強調した。

流通部会は賃金体系維持分+2,000円基準

UIゼンセン同盟は昨年から、要求の額・率から、賃金水準を重視する方針に舵を切っており、今季も、繊維関連、化学、流通、フード・サービス、生活・総合産業、地方の6つの部会別に、具体的な到達水準や要求基準を設定している。

全体の約半数を占めるスーパーなど小売業を中心とした流通部会では、30歳大卒・勤続8年の到達水準として26万5,500円(昨年26.5万円)、同35歳・13年で30万7,500円(同30.65万円)などを設定。そのうえで、到達水準を下回る場合は、 (1)賃金体系維持分を確保した上で、格差是正分一人平均2,000円基準(同500円以上) (2)体系維持が不明確な場合、賃金体系維持分の社会的水準に格差是正分を含め一人平均6,500円基準(同5,000円以上)――の要求を設定した。

パート組合員の賃上げは時給20~40円目安で

組合員の47%(50.8万人)を占めるパートを中心とした「短時間組合員」の要求は、過去2年の方針にあった「正社員に準じる」から、「働き方に応じて適切な制度構築を行い、全体として雇用区分間の均等・均衡が図られるよう取り組む」に変更。具体的な要求基準を、昇給・昇格制度がある場合は、制度に基づく昇給・昇格分の確保を前提に、同制度がない場合は、 (1)タイプA(正社員と職務も人材活用の仕組み・運用も同じ。組合員の約2割)は正社員と同一の方法で決定することを原則とする (2)タイプB(正社員と職務は同じだが人材活用の仕組み・運用が違う、同約2割)は40円 (3)タイプC(正社員とは職務も人材活用の仕組み・運用も違う、同約6割)は20円目安――などとした。

この要求基準を踏まえ、短時間組合員が約6割にのぼる流通部会では、昇格・昇給制度の有無に係わらず、 (1)タイプAについては正社員と均等の要求額とし、過年度昇給分含めて35~40円目安 (2)タイプBでは正社員との均等・均衡を考慮して要求額を決定 (3)タイプCは過年度昇給分含めて15~20円目安――と設定した。

なお、一時金については、昨年同様、正社員組合員は少なくとも年間4ヵ月を確保したうえで、年間4.8ヵ月を要求基準とする。短時間組合員はタイプAは年間4.8ヵ月を原則、タイプBは3.0ヵ月以上を目標、タイプCは2.0ヵ月以上を目標としている。

AOKI民主化闘争の支援決議も

このほか、中央委員会では、通年闘争方針として、2013年3月末までに年間所定労働2,000時間未満とすることを必須項目などとした「2011~12年度年間総実労働時間短縮方針――ワーク・ライフ・バランス社会の実現に向けて」のほか、「2011期末一時金闘争方針」、「2011~12年度退職金改定闘争方針」、「第17回統一地方選挙必勝決議」などを確認・決定した。

さらに、緊急提案として、流通部会所属のAOKIグループユニオンの民主化闘争(注)をめぐり、「UIゼンセン同盟に対する挑戦であり、すべての労働者の権利に対する深刻な侵害だ。会社側が今日まで行った不当労働行為を認め、書面による謝罪を行い、組合員を原状回復させるとともに、健全な労使関係の構築に向け誠実な対応を行うまで総力をあげる」などとする支援決議も採択した。

(注)昨年6月から組合員に対する遠隔地転勤などに組合切り崩しが行われ、最盛期に1,642人だった組合員は、10月には225人まで激減。UIゼンセン同盟では、8月にAOKIグループ民主化対策委員会を設置し、団体交渉、労働委員会への不当労働行為救済申立、全国一斉抗議活動等を展開してきた。その結果、UIゼンセン同盟が加盟する国際産別組織(GUF)・UNI(ユニオン・ネットワーク・インターナショナル)が、昨年11月に長崎で開いた世界大会でも連帯支援決議が採択された。その後、オルグ活動の強化もあり、組合員は300人超まで回復した。落合会長はあいさつの中で、「闘いの陣容を全国に拡げ、民主化大闘争を組み立てることも視野に取り組みたい」などと述べた。