平均4,500円以上の賃上げを要求/JAMの春闘方針

(2011年1月19日 調査・解析部)

[労使]

機械金属の中小を多く組織するJAM(河野和治会長、約39万人)は17日、都内で第18回中央委員会を開き、今春の賃上げ交渉の方針を決めた。賃上げ方針の柱は、「賃金構造維持分の確保」で、賃金制度がなく、賃金構造維持分の推計もできないところについては、「平均賃上げ要求基準4,500円以上」を掲げている。また、ここ数年、賃金構造が維持できなかったところについては、賃金水準の回復をめざし、5年をめどに中期の是正目標を設定して是正に取り組む考えを示しており、初年度として1,500円以上の水準引き上げを要求する。

中期的視点で賃金水準の回復を

あいさつした河野会長は、日本経済の状況に触れ、「デフレ脱却が最大の課題。デフレの最大の原因は賃金が下がり続けていること。内需主導の経済成長を実現するためには、コンスタントな賃上げが必須条件だ」と述べて、賃上げの重要性を強調。「すでに日本の企業収益はリーマンショック前のピーク時の75%程度まで戻っている。経済成長の果実について、企業部門から家計部門へ配分すべき段階だ」と、経営側の姿勢を批判した。また、「賃金水準の低下傾向が明らかな300人未満の単組について、水準低下に歯止めをかけ、中期的な視点にたってピーク時の水準を回復する取り組みを強化する」として、賃金構造維持とともに、今までのダウン分の回復を複数年で図る考えを示した。

水準がダウンした単組は1,500円以上の引き上げに取り組む

賃上げ方針は、 (1)賃金構造維持分の確保を基本に、賃金是正・改善を含む要求 (2)賃金制度の確立 (3)企業内最低賃金協定の締結 (4)企業業績の回復に応じた一時金水準の回復――が柱。具体的な賃上げ要求基準については、「賃金構造維持分(相当分)の確保」を掲げ、賃金制度がなく構造維持分の推計もできないところについては、「平均賃上げ4,500円以上」を要求基準としている。また、賃金の絶対水準を重視する観点から、個別賃金要求として、賃金実態調査の第3四分位水準で設定した、高卒直入30歳260,000円、高卒直入35歳305,000円の標準労働者要求基準と、第1四分位水準で設定した「JAM一人前ミニマム基準」(18歳156,000円、30歳240,000円、40歳295,000円など18~50歳まで8つのポイント)を示している。

また、ここ数年、賃金構造を維持できずに賃金水準がダウンしたところについて、5年以内を目安に水準回復をめざすこととし、2000年から2010年で賃金ベースが約7,500円低下している賃金実態調査の結果を踏まえ、今春の交渉では1,500円以上の引き上げに取り組む考えだ。

非正規労働者の労働条件改善も強化

企業内最低賃金協定については、協定を締結していないところに、 (1)18歳以上最賃協定 (2)全従業員最賃協定 (3)年齢別最賃協定――のいずれかの取り組みを求めており、18歳156,000円などの年齢別最賃協定基準(JAM一人前ミニマム基準の80%)を示している。

一時金要求基準については、生活防衛の観点から、年間5カ月基準とし、最低到達基準を年間4カ月に設定している。

非正規労働者の労働条件改善も図る考えで、直雇用の労働者について、賃金、安全衛生、育児・介護などの処遇・雇用環境で何らかの改善に取り組むとし、派遣労働者については、派遣契約の内容や派遣元での社会保険の加入の有無などの点検活動強化を求めている。

闘争スケジュールについては、すべての単組が統一要求日の2月22日までに要求を提出することとし、3月第1週、第2週を交渉ゾーンに、3月15、16日の統一回答指定日に向けて交渉を追い込み、3月内決着に全力をあげるとしている。