連合と日本経団連のトップが会談/2011年春闘が実質スタート

(2011年1月19日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)と日本経団連(米倉弘昌会長)は19日、都内で懇談会を開き、2011春闘の議論が実質的にスタートした。連合側が適正な配分による賃金の底上げや労働条件の改善の必要性を訴えたのに対し、日本経団連側は個々の企業が成長に向けて強みを高めることに注力すべきとのスタンスで、議論は平行線を辿った。

経団連会長「労使一丸でグローバル競争に立ち向かう」

「連合・日本経団連トップ会談」/メールマガジン労働情報 No.691号(2011年1月19日発行)/JILPT

冒頭、米倉会長は「日本経済は、円高の定着やデフレの継続、厳しい雇用情勢など自立的な景気回復が見通しにくい状況が続いており、グローバル競争が激化するなかで企業にとっては本当に厳しい事業環境だ」と指摘。「日本の明るい未来への扉を開くために、労使一丸となってグローバル競争に立ち向かっていくための取り組みが、これまで以上に求められている」と述べ、競争力をさらに強化する必要があるとの姿勢を示した。

また、昨年12月に公表した民間版成長戦略「サンライズ・レポート」で提起した「未来都市プロジェクト」の構想を紹介。「人口20~30万人の都市を舞台に各企業が先端技術を持ち寄り、革新的な製品や技術システムを開発することで、安心・安全な都市づくりに取り組んでいく。こうしたプロジェクトを成功に導き、民間の活力ある成長を実現していくためにも我が国の強みである技術力と人材力に一層磨きをかけていくことが不可欠だ」として、2011春闘では「自社の強みをさらに高める視点からの議論を深めたい」と強調。「自社の存続と発展、従業員の雇用の維持・安定を最優先に考える基本的な考え方は労使間で共有しているものと確信している」と付け加えた。

連合会長「配分のバランスを健全な状態に復元を」

一方、連合の古賀会長は、「我が国の名目GDPは1997年より30数兆円減少しており、働く者の賃金も97年をピークに下降傾向が続いている」と説明。「個々の企業が成長し、業績を拡大していくのは当然のことだし、そのためにコストの削減や合理化・効率化に努めることも当たり前なのかも知れないが、個々の企業にとって合理的な選択でも、すべての企業がそういうことをすると全体では悪い方向に行くかも知れない。(この状態が)これ以上、続ければ低成長とデフレの罠からなかなか抜け出せなくなってしまう」などと懸念を示した。

そのうえで、「2011春季生活闘争では、その間、生じた配分のバランスを健全な状態に復元する。そして、マクロの視点では積極的な配分を求めていく。加えて、この間もっとも痛んだ非正規労働者の雇用と生活の安定をめざし、健全な状態に復元していくことを要求の基本にした」などと述べ、すべての働く者への賃金の底上げや労働条件の改善を訴えた。

懇談では、連合側が連合白書の内容を背景に、デフレ脱却には低落傾向が続く賃金などを復元させることを強調。これに対し、日本経団連側は、経営労働委員会報告の内容を説明するとともに、デフレ脱却には新規事業やイノベーションの促進などにより改善していくとの考えを展開し、双方の主張は平行線を辿った。

2011春闘は、今月下旬から来月にかけて、各労組が具体的な要求を決定。3月16日最大のヤマ場に向けて労使交渉が行われる。