連合の新年交歓会/菅首相ら政財界トップが出席

(2011年1月7日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は5日、都内で「2011新年交歓会」を開いた。古賀会長が主催者あいさつしたほか、菅直人内閣総理大臣、細川律夫厚生労働大臣、大橋洋治日本経団連副会長の政財界トップが来賓あいさつした。

2011年は、めざす社会像に近づける運動のスタートの年

連合2011新年交歓会/メールマガジン労働情報 No.687(2011/1/7)

冒頭、古賀会長は、連合が昨年12月に確認した新ビジョン「働くことを軸とする安心社会」を、「働くことにもっとも重要な価値を持ち、誰もが公正な労働条件の下、多様な働き方で社会に参画していく。そして、社会的に自立をしながら、その軸を皆が支え合い、自己実現の調整ができるセーフティネットも組み込まれている活力ある社会。それが私たちのめざす社会像だ」と説明。「これは労働界、連合の社会像ではなく、社会的な合意形成を図っていきたい。2011年は、いろいろな場で意見交換をしながら私たちのめざす社会像に一歩ずつ近づけていく運動をするスタートの年と位置づけたい」と訴えた。

消費税引き上げも含めた議論を(古賀連合会長)

社会保障制度改革についても触れ、「超高齢社会に入った日本社会において、継続性ある社会保障制度は待ったなし。そして、それを支える負担をどうしていくのかの本格的な議論を喫緊の政策課題と位置づけるべきだ」と指摘したうえで、「政府与党は税と社会保障制度の明確なトータルビジョンを国民に示すことが必要だろうし、連合も現在行っている新しい社会保障の議論や中長期的な税制改革のなかで、負担と給付のあり方について消費税率引き上げも含めた議論をしていく」との考えを示した。

そして、最後に「2011春季生活闘争は労働条件の復元とすべての働く者の処遇改善に取り組む。統一地方選挙もあるし、すべての働く者がディーセントワークやワーク・ライフ・バランスをめざす社会を私たちの手でつくっていかなければならない」と決意を述べた。

社会保障のあり方についての本格的な議論を(菅首相)

来賓あいさつに立った菅直人内閣総理大臣は、「めざす国の理念は、 (1)平成23年を平成の開国元年とする (2)最小不幸社会の実現をはかる (3)不条理を正す政治をめざす――ことの3点だ」と指摘した。

(1)の開国元年については、「いま世界が、わが国に追いつけ追い越せと成長を続けている。日本は今こそ、そういう国々の成長をさらに応援して、その大きなエネルギーを日本の成長につなげていく。そのためには、経済面、モノの面ばかりでなくわが国の心を世界に開くという意味も含めた元年にしたい」と強調。また、 (2)の最小不幸社会は、「開かれた国をつくるうえで、貧困が拡大するようなことが許されてはならない。不幸を最小化にすることこそ政治の責任。その実現のためには、社会保障のあり方について踏み込んでいかねばならない。社会保障を考えるうえで、安定した財源を考えなければならないことは誰の目にも明らか。党を超えてしっかりした議論をスタートさせたい」とした。

(3)の不条理を正す政治に対しては、「仕事をしたい人に仕事がないことほど不条理なことはない。それは単に収入がないというだけではなく、社会に存在する場所がない、自分の居場所がないということを意味しているからだ。なかでも、学校を出たばかりの人たちが、社会に夢を持って出ていこうという時に受け入れる雇用がないとすれば、これこそ政治の責任だ。なんとしても新たな雇用を作り出し、ミスマッチも解消する。そして、海外に出て行こうとする企業に国内で投資してもらい、雇用を守っていく」などと述べ、『創る』『つなぐ』『守る』を3本柱に雇用対策を強化する姿勢を強調した。

雇用の安定と質の向上に全力を(細川厚労相)――できるだけ早く最低賃金を800円に

雇用の重要性に関しては、細川律夫厚生労働大臣も、「いま日本で働く人の8割が雇用労働者で、賃金を得て生計を営んでいるが、雇用失業状況が大変厳しく、これをどう克服していくかが、労働行政にかせられた大変大事な仕事。とりわけ、若年者の雇用は厳しく、今年の3月に卒業予定の就職内定者は57%と本当に厳しい状況にある」などと指摘。今後の雇用対策について、「来年度の予算案で雇用についていろいろ予算を組んでいる」ことを説明し、雇用の安定と質の向上に全力を傾注する姿勢を強調した。

具体的には、まず若年者雇用対策は「ジョブサポーターを倍増させた。中小企業が既卒3年までの人を雇用すれば経済的に助成するし、トライアル雇用でも助成金を出すなどの制度により若年者の雇用対策を進めていく」と話した。

また、雇用のセーフティネットに対しては、「失業しても雇用保険もらえない、雇用保険に入れない人がいる。そういう人たちが失業した時に、職業訓練を受けながら生活費を支給する制度(求職者支援制度)を今年中に確立していく。そのための法案も今通常国会に提案する予定」との見通しを示した。

さらに、最低賃金についても、「未だに生活保護の基準にも満たない最低賃金のところもある。政府としては、労使とも話し合い、新成長戦略のなかに、できるだけ早く最低賃金を800円にすることを決めた。何とか800円にして、働く人たちの最低の生活が安定できるよう頑張っていきたいし、賃金の底上げをした中小企業には経済的な支援をする」などと述べた。

世界に誇る労使の信頼関係のさらなる醸成を(大橋日本経団連副会長)

一方、日本経団連の大橋洋治副会長は、昨年12月にまとめた経済成長をめざす行動計画「サンライズ・レポート」について、「日本が誇る最先端の技術を、各企業のカベを取り外して連携し、皆が結集して1つのものにしていくという、財界の基本的な考え方だ」などと紹介したうえで、「そのなかで大切なのは、われわれ経営側と連合・組合との連携。問題はたくさんあるが、世界に誇る労使の信頼関係をさらに醸成しながら、難しい事象について徹底して議論し、解決していきたい。グローバル競争の激烈な環境のなか、イノベーションの攻勢を図らないと太刀打ちできない。そのためには、労使の一体感が大切。難局に立ち向かうことは度々あるが、一丸となって日本を日出ずる国にしていくことを期待する」などと訴えた。

なお、交換会で連合は、「すべての働くものの拠りどころとして力を結集するとともに、その実現に向け、着実に取り組みを進める」などとする「2011年新春アピール」を公表した。