2011春闘の基本構想を討議/基幹労連のAP11討論集会

(2010年12月15日 調査・解析部)

[労使]

鉄鋼、造船重機、非鉄金属の労働組合でつくる基幹労連(神津里季生委員長、25万4,000人)は8,9の両日、滋賀県大津市で「AP11春季取り組み討論集会」を開き、来春闘の基本構想について討議した。方針は来年2月の中央委員会で決定する。

「2011春闘の基本構想を討議/基幹労連のAP11討論集会」
メールマガジン労働情報 No.683(2010年12月15日)

基幹労連の春闘は、働く人への投資で魅力ある労働条件をつくり上げることで、産業・企業の競争力強化との好循環を生み出すとの考え方を基本に、2年サイクルで統一要求を掲げる形をとっている。2011年の春闘は「2年サイクル」の中間年にあたるため、業績連動方式を導入していない組合の「一時金」と、中小組合の「産別基準への到達・格差改善」の取り組みが要求の柱になる。

一時金と格差改善の取り組みが柱

基本構想では、年間一時金要求は、金属労協の「年間5カ月分以上を基本」とする考え方を踏まえて、要求方式ごとに設定する。構成要素は、「生活を考慮した要素」と「成果を反映した要素」で、前者は「年間4カ月(額では120~130万円)」としたうえで、成果反映分をめざせる組合は、その増額に取り組む。要求方式ごとの要求については、 (1)金額要求方式の場合、「生活考慮要素120万円ないし130万円」+「成果反映要素40万円」 (2)金額+月数要求方式の場合、40万円+4カ月 (3)月数要求方式の場合、5カ月――を基本に設定する。

中小組合の格差改善では、 (1)年次有給休暇の初年度付与日数を20日以上とする (2)時間外・休日割増率の改善をはかる (3)労働災害付加補償の死亡弔慰金3,400万円、通勤途上災害付加補償の死亡弔慰金1,700万円への到達を図る (4)「60歳以降の安定雇用の確保」に対する労使検討の場の設置に向けて取り組む――ことを共通要求とする。

冒頭、あいさつした神津委員長は、「一時金は、職場の熱意と業績向上をつなぐ架け橋。生活に必要な資金としての意味合いに加え、業績を一定範囲で反映する要素であることも問いながら、いかにして職場の熱意を結果に結び付けていくかが問われる。格差改善についても、部会ごとの現状把握と好循環の検証を基礎に進めて欲しい」などと訴えた。

非正規労働者の労災付加補償を正社員と同じ取り扱いに

また、今回の基本構想には、ワーク・ライフ・バランスに関する「労使話し合いの場」を活用して、失効年休を発生させない等の年休取得に取り組むことも明記した。連合、金属労協が課題とする「非正規労働者を含めた働く者すべての待遇改善」の対応については、直接雇用の非正規労働者に焦点を当てる。具体的には、「命に極めて近いような労働災害・通勤災害に関して、きちんと目を向けていくべき」(工藤智司事務局長)との観点から、労災付加補償の状況を点検するとともに、正社員と同等の取り扱いを求めることも掲げている。

産別本部のさらなる対応を求める意見が

一方、討論では、一時金について、「生活基礎分に関する考え方の根拠を示して説得力を強める必要がある」などの意見が出された。格差改善の項目でも、「年給初年度付与について取り組んでいるがなかなか進まない。新たな説得材料がないか」「失効年休について定義を明確にして欲しい」などと、産別本部に交渉材料の提示を求める声があがったほか、60歳以降の安定雇用に関して、「社会的要請は理解するが、あまりに大きく難しい課題。どのように進められるか悩んでいる」「会社業績が厳しく、すでに現行の再雇用制度さえ凍結中にあるなかで、60歳以降の安定雇用の議論ができるか不安」「(組合員の多くは)まだ2013年問題について現実問題として捉えていない」などの発言があった。

非正規労働者への対応についても、「非正規にもさまざまな形態がある。取り組み対象としての定義を明確にして欲しい」「本来的に政策・制度の取り組みではないか。一企業の労使で議論する課題としては非常に難しい」「非正規の組織化に向けた方針の検討が必要」「他産別を含め、既に取り組んでいる事例を紹介して欲しい」「組織化していない人に対し、どこまでの取り組みができるのか」などの意見があった。