5年間で毎年1,500円以上の水準回復をめざす/JAM討論集会

(2010年12月10日 調査・解析部)

[労使]

機械金属の中小を多く組織するJAM(河野和治会長、約39万人)は6、7の両日、静岡県熱海市で「2011春季生活闘争中央討論集会」を開き、来春の賃上げ交渉の方針案について議論した。賃上げ方針案の柱は、「賃金構造維持分の確保」で、賃金制度がなく、維持分の推計ができないところについては、「平均賃上げ要求基準4,500円以上」を掲げている。また、来春交渉を「賃金復元元年」と位置づけて、ここ数年、賃金構造維持が果たせなかったところについては、5年間の中期的方針として毎年1,500円以上の水準引き上げに取り組むとしている。方針は、年明け1月の中央委員会で正式決定される。

「賃金復元のスタートの年に」(河野会長)

あいさつした河野会長は、中小企業をめぐる環境に触れ「仕事量が増えても過酷なコスト競争にさらされているうえに、人材が確保できないために技能伝承の危機にも直面している。総合的な労働条件の低さもあるが、何と言っても賃金の低さが人材確保を難しくしている」と述べ、中小企業の生き残りのためにも賃上げが必要不可欠だと訴えた。また、JAMの賃金実態をあげて、「2000年から2010年にかけて約7,500円ダウンしている。(来春交渉を)適切な配分を求める賃金復元のスタートの年として、中期的視点で回復を図る」と強調。賃金構造維持分の確保とともに、今までのダウン分の回復に複数年で取り組む考えを示した。その上で、「労使交渉で労働条件の引き上げを図る一方、産業政策として、公正な取引を実現させ、中小企業に適正な利益が残る環境づくりも重要だ」として、産業政策の取り組み強化を求めた。

「平均賃上げ4,500円以上」の要求基準を提起

賃上げ方針案は、 (1) 賃金構造維持分の確保を基本に、賃金是正・改善を含む要求 (2) 賃金制度の確立 (3) 企業内最低賃金協定の締結 (4) 企業業績の回復に応じた一時金水準の回復――が柱。賃上げ要求基準については、賃金制度のあるところや、制度はないが実態把握できているところでは、「賃金構造維持分(相当分)の確保」を掲げ、制度がなく推計もできないところについては、JAMの賃金実態調査から導き出した賃金構造維持推計から「平均賃上げ4,500円以上」を要求基準としている。また、賃金水準を重視する考えから、個別賃金要求として、賃金実態調査の第3四分位水準で設定した、高卒直入30歳260,000円、高卒直入35歳305,000円の標準労働者要求基準と、第1四分位水準で設定した「JAM一人前ミニマム基準」(18歳156,000円、30歳240,000円、40歳295,000円など18~50歳まで8つのポイント)を示している。

賃金の是正・改善については、ここ数年、賃金構造を維持できずに賃金がダウンしたところも少なくないことから、水準の復元を目指す考えで、2000年から2010年で賃金ベースが約7,500円低下している賃金実態調査の結果を踏まえ、5年以内を目安に毎年1,500円以上の水準回復に取り組むとしている。

企業内最低賃金協定については、協定を締結していないところに、 (1) 18歳以上最賃協定 (2) 全従業員最賃協定 (3) 年齢別最賃協定――のいずれかの取り組みを求めており、18歳156,000円などの年齢別最賃協定基準(JAM一人前ミニマム基準の80%)を示している。

非正規労働者に関しては、直雇用の労働者について、賃金、安全衛生、育児・介護などの処遇・雇用環境で何らかの改善に取り組むとし、派遣労働者については、派遣契約の内容や派遣元での社会保険の加入の有無などの点検活動強化を求めている。

闘争スケジュールについては、すべての単組が統一要求日の2月22日までに要求を提出し、3月第1週、第2週を交渉ゾーンに、3月中旬の統一回答指定日に向けて交渉を追い込み、3月内決着をめざすとしている。

討論では、「これで、中小を支える闘いになるのか。個別賃金要求を強化すべき」(大阪)、「賃金復元の取り組みを方針通り中期的に続けていくためには、来春の交渉終了後の検証が重要になる」(京滋)、「個別の交渉では、賃上げでデフレ脱却というマクロの問題はかみ合わない。工夫が必要だ」(東京・千葉)などの意見が出された。