1%を目安に賃金水準の復元を/連合中央委員会

(2010年12月3日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は2日、都内で中央委員会を開き、「2011春季生活闘争方針」を決めた。非正規労働者も含めた「すべての労働者の処遇改善」をめざす2年目の闘いでは、すべての労働組合が賃金カーブ維持分を確保したうえで、賃金や一時金、手当などを加え、1%を目安に配分を求めていく。非正規労働者は時給ベースで正社員を上回る賃上げを目指し、正社員と変わらない働き方をしている非正規労働者は時給40円の引き上げを要求する。

賃金の減少傾向に歯止めをかけて健全な状態に

「1%を目安に賃金水準の復元を/連合中央委員会」/メールマガジン労働情報 No.680(2010年12月3日)

古賀会長は冒頭、雇用労働者の賃金が減少し続けており、ピーク時の1997年に比べ、全体で約5%減少していることを指摘。2011年闘争の取り組みでは、「この減少傾向に歯止めをかけ、元に戻して健全な状態にしていこうと考え、『回復』『復元』という言葉を使っている」などと説明した。そのうえで、「すべての働く者の労働条件・処遇改善」に向けた2年目の闘争と位置づける来春闘では、非正規労働者の雇用問題の是正・改善に力点を置く姿勢を強調。「私たちは、自分たちの職場に多くの非正規雇用労働者が働いている現実に目を背けることなく、責任を負う立場にある。非正規雇用労働者については均等・均衡を見据えつつ、時間給換算で正規労働者を上回る引き上げを要求したい」などと訴えた。

賃金、手当、企業内最賃、高卒初任給、一時金など何らかの形で配分を

闘争方針は、「下がった賃金を近年のピーク時にできるだけ早く戻す観点から賃金水準の復元を追求する」ことを提起。定期昇給制度があるところは賃金カーブの維持を前提とする。一方、賃金制度が未整備でカーブ維持分がわからない組合は、その維持のため、昨年と同額の5,000円を目安にする。そのうえで、賃金や生活・職務関連手当、企業内最低賃金、18歳高卒初任給、一時金などを加え、1%を目安に配分を求める。

また、非正規労働者の労働条件改善の取り組みでは、パート共闘を中心に新たに「非正規共闘」を設置。非正規労働者の労働条件を正規労働者に近づけるため、時間給ベースで正規労働者を上回る賃金引き上げなどを求める。具体的には、正社員と変わらない働き方をしている非正規労働者は、時給40円(定昇込み)アップを要求する。

政策・制度実現を「車の両輪」で

また、闘争方針は、賃金水準の復元の追求と併せて、政策・制度実現の取り組みを2011闘争の「車の両輪」と位置づけている。具体的には、(1)新成長戦略の推進による新たな雇用創出 (2)労働者派遣法改正案の早期成立 (3)中期的視点に立った最低賃金引き上げの実現 (4)求職者支援制度の確立 (5)有期労働者の労働者保護ルールについての法整備 (6)公契約基本法と公契約条例の制定――などの実現をめざして、政府との各レベルでの政策協議や民主党との政策協議などを通じて意見反映を行っていく考えだ。

事業仕分け第3弾の内容も話題に

一方、中央委員会では、10月に行われた事業仕分け第3弾の結論に対する異論が相次いだ。

古賀会長はあいさつのなかで、「『労働保険特別会計』が取り上げられ、『雇用保険二事業の見直しと特別会計では行わないこと』並びに『労災保険の社会復帰促進等事業の原則廃止』、また個別事業として、11月には『女性と仕事の未来館』等の支援事業も再仕分けで廃止と判定された」と言及。「連合として了解できない内容であり、特に労働保険に関わる事業の廃止については、直ちにその撤回もしくは見直しを行うことを政府・民主党に働きかけてきた」などと説明した。

そのうえで、「雇用・労働政策に関わる事項は、公労使三者構成の審議会で扱うべきだし、今回対象となった労働保険分野は基本的に使用者の全額拠出による事業で、一般会計での執行になじまない」「ジョブカード事業など、政府方針と仕分けの結果に整合性がないという事例も見られる」などと指摘。「昨年来行われてきた『事業仕分け』をどう総括・評価するかは議論が必要」としながら、(1)法的な裏づけが未整備 (2)新成長戦略をはじめとする政府の基本方針との整合性 (3)予算編成・予算執行の当該省庁との間での整理――について「改めて政府全体としての位置づけを明確にすべきだ」との考えを示した。

未払賃金立替払制度の存続を

議論でも、労災保険の社会復帰促進等事業の仕分けについて、「社会復帰事業のなかに、未払い賃金の立替払い制度がある。JAM(の構成組織)では、(1999年以降)189の企業倒産が起こっており、その7割が未払賃金立替払制度を活用してきた。まさに最後のセーフティネットであり、1976年の制度発足以来、未だ大きな役割を果たしている。近々開かれる(政労使の枠組みである)雇用戦略対話で明確な撤回に向けて具体的な詰めを重ねて欲しい」(JAM)「未払賃金立替払制度は、大変活用されている制度。失業する労働者の最後のセーフティネットであり、廃止ではなく抜本的な強化の方向に持っていかねばならない。特にリーマンショック以降、制度の活用も増加している。この制度が役立っている証拠だ」(UIゼンセン同盟)、「加盟組織で、朝出勤したら破産の紙切れが貼られていて、紙切れ一枚で解雇通知が来たというようなところがある。その際にも、この立替払制度で当面の生活資金をまかなえたところもある」(サービス流通連合)などの意見が出された。

このほか、中央委員会では、連合がめざす社会像の提起である「『働くことを軸とする安心社会』に向けて」を確認した。