高速道路無料化には反対を表明―海員組合全国大会

(2010年11月12日 調査・解析部)

[労使]

外航船、遠洋漁船の乗組員や海事関連産業の労働者で組織する全日本海員組合(藤澤洋二組合長、3万人)の定期全国大会が9日~12日に東京・晴海で開催され、向こう2年間の活動方針を決定するとともに、高速道路無料化に反対を表明する決議を採択した。

冒頭の挨拶で藤澤組合長は「2009年夏の自民党から民主党への政権交代は海運、水産で働く船員労働の尊厳を守る運動において、ステークホルダーの概念を一変した」と語り、運動の対象が使用者側のみならず、政府、地方自治体にまで広がりつつあることを示した。

一方で、民主党が進める高速道路無料化政策に対しては「内航海運・フェリー旅客船の航路変更、航路撤廃に発展し、地域の疲弊、さらには地域住民の移動の権利、生活権を奪っている」とし、断固反対の立場を表明。その上でフェリー旅客船に対する配慮を行うとともに、海上インフラの整備に対する配慮を訴えた。

カボタージュ規制緩和も反対の立場を確認

大会では向こう2年間の活動方針の議論が行われたほか、内航におけるカボタージュ規制(国内海上輸送の自国籍船限定)の緩和問題や高速道路無料化問題などに関する決議案が提出され、採択された。

カボタージュ規制とは国家の安全保障上の観点から、自国の物資、人の輸送は原則自国籍船に限定する制度で、政府は今のところこの姿勢を維持する立場だ。しかし、パナマやリベリアなどの船籍を持つ貨物船が国内の海上輸送に参入すれば、コストを抑えられるというメリットがある。今年3月には前原誠司沖縄担当相・国土交通相(当時)が沖縄の自由貿易地域などに限り、緩和することを決めた。これに対し、海員組合は「規制緩和はわが国の安定した海上輸送態勢を崩壊させ、日本人船員の雇用問題に発展する」とし、断固反対の方針を確認した。

高速道路無料化問題について、会場からは「我々の会社では燃料価格の高騰、高速道路料金の大幅割引などにより、中国・四国間フェリー航路からの撤退を余儀なくされ、多くの仲間が離職した。支部で再就職支援を行っているが、いまだに新たな海上職につけていないのが現状だ。経済対策の名のもとに国策により、フェリー・旅客船で働く人たちを犠牲にしてはならない」との意見が出された。