労働保険特会の事業仕分け結果に遺憾の談話を発表/連合

(2010年11月5日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は10月28日、「労働保険特別会計に関する事業仕分けについて」の南雲弘行事務局長の談話を出した。政府の行政刷新会議が10月27日から始めた事業仕分けで、労働保険特別会計の5事業が廃止とされたことなどを受けたもの。「雇用情勢が厳しいなかで、十分な議論もなく、このような結果が出されたことは極めて遺憾だ」としている。

労働者保護に逆行する社会復帰促進等事業の原則廃止

「事業仕分け第3弾」初日の27日には、ジョブ・カード制度普及促進事業や、キャリア形成促進助成金、介護労働安定センターなど5事業が廃止とされた。また、制度のあり方について「雇用調整助成金以外の必要性の低い雇用保険二事業は、特別会計の事業として行わない」「労災保険の社会復帰促進等事業については原則廃止」とされている。

談話は仕分けの対象となった雇用保険二事業について、「事業主の雇用保険料のみを財源として、雇用調整助成金をはじめ事業主に対する各種助成制度など、雇用対策の柱として雇用安定事業と能力開発事業を行ってきた」「労災保険による社会復帰促進等事業も労災給付と一体的な付加給付などを行ってきた」などとその経緯を説明。今回の仕分結果を、「利用率の低いものや、想定していた成果に結び付かないものもあり、時代や社会情勢の変化に応じて不断に見直しを行うことは必要」と評価する一方で、「義肢や車いすなど付加的な給付や未払賃金立替払事業などを含めた社会復帰促進等事業を『原則廃止』することは、労働者保護に逆行する内容だ」と非難している。

新成長戦略の数値目標との整合性がない

さらに、ジョブ・カード制度に関しても、「正社員への移行の促進など雇用対策の面から一定の役割を果たすことが期待されている。制度普及促進事業を廃止することは、『新成長戦略』において『2020年までに取得者300万人』の目標を掲げていることとも整合性がない」などと指摘。雇用を基軸とした経済成長の実現を打ち出している現政権に対し、「労働者保護の視点からの労働者派遣法改正法案の早期成立など、公正なワークルールの確立をはかることが必要だ」などと訴えている。

討論集会でも言及「乱暴に仕分けした感が否めない」

また、南雲事務局長は、11月1日に開いた「2011春季生活闘争中央討論集会」の総括答弁の中でも、労働保険特別会計の仕分け結果に触れた。「雇用情勢が厳しいなかで、それぞれの事業がどのような仕組みでどのような役割を担っているのか、それによってどれだけの人が雇用につなげられているのか、極めて理解の不十分なまま、一律カットする勢いで乱暴に仕分けした感が否めない」と強調。「政府として打ち出した雇用対策に向けた姿勢が全く意識されずに仕分けが行われてしまい、政府・民主党内における政策に対する足並みが揃っていないことに懸念を抱かざるを得ない。こうしたことを繰り返すと、組合員のみならずすべての働く人たちの期待を踏みにじることにもなりかねず、見栄えだけを追求し、ポピュリズムを煽るようなかたちで、いつの間にか働く人たちのことがないがしろにされていく危機を感じざるを得ない」などと批判した。そのうえで、「国が雇用を基本政策の中心に据えて、雇用創出にしっかりと取り組むよう、強く注文を付けていく」との考えを示した。