会長に二宮氏、事務局長に久保氏を選出/介護クラフトユニオン定期大会

(2010年10月20日 調査・解析部)

[労使]

UIゼンセン同盟傘下の日本介護クラフトユニオン(NCCU、約6万人)は17日、都内で定期大会を開き、職種別労組としての労働条件向上や10万人をめざす組織拡大――などを柱とする、2011年度活動方針を決定した。役員改選があり、会長に二宮利夫氏(ニチイ)、事務局長に久保芳信氏(前副事務局長)をそれぞれ新たに選出した。

「組織を強くしていこうとの熱意で6万人を回復」(河原会長)

あいさつした河原四良会長は、この1年間に組織化した組合員数がジャパン・ケアグループ分会の2,100人を筆頭に合計で5,190人にのぼったことを報告。そのうえで、組織化していたコムスンが2008年に介護関連事業をすべて営業譲渡する前の水準には戻っていないものの、「組織を強く大きくしていこうとの熱意が回復させたのだと思う」と述べた。さらに組織化に関しては、9月中旬から1,000人規模で群馬県内の施設介護を中心に事業展開している事業者を対象に、組織化の取り組みを進めていることも報告し、今後の組織拡大に期待感を表明した。

また、河原会長は、1年間の運動を振り返り、「NCCUも結成10年を経て、運動は行政や介護業界に、確実に周知されるようになった」と述べる一方、4月1日に長妻・前厚労相に「12の提言」(既報)を手渡した前後から、社会保障審議会介護保険部会といった介護施策の方向性を決める重要な委員会等への就任要請が相次いだことなどを報告した。

月給制で2,736円、時給制で7.8円増/2010春闘結果

大会では、一般経過報告で、月給制組合員で平均1万円以上、時給制組合員で平均60円以上等の要求を掲げて臨んだ2010春季労働条件交渉について総括した。それによると、60分会が統一交渉に臨み、10月1日時点で58分会(対象組合員:月給制約1.7万人、時給制約4.2万人)が妥結。月給制の加重平均は2,736円(単純平均:2,315円)、時給制で同7.8円(同15.5円)の引上げとなった。

今季交渉では、介護職員の処遇改善に取り組む事業者に対して2011度末までの間、介護職員(常勤換算)1人当たり月額平均1.5万円を交付する「介護職員処遇改善交付金」が支給されることもあり、これを含めた回答が多かった。このため、賃上げ交渉による「真水」分の判断は難しい。大会で発表された「2010処遇改善調査」結果によると、8月時点の月給制組合員の平均賃金は、一年前より1万4,217円(7.0%)多い21万8,302円。同じく、時給制組合員の「身体介護」で1円(0.1%)増の1,336円、「生活援助」で10円(0.9%)増の1,107円、これら以外で27円(2.6%)増の1,064円――だった。これを受け、陶山浩三事務局長は、「月給制で言えば、政策効果が1万円強、賃上げ努力が3,000円程度でちょうど計算が合う。妥結額平均で比較すると、介護報酬の3%増額改定に伴う賃金改定を実施した分会もあった昨年より低下しているようにもみえる。加盟法人の多くが昨年比で大きく業績を伸ばしていることから、決して満足のいく結果に終わったわけではないが、全体的に例年より、処遇改善は積極的に実施されたと言える」と指摘。そのうえで、「今後は交付金の支給と業績配分による賃上げを、組合としてどう捉えていくかが課題」などと総括した。

来年度の活動方針では、コムスン・ショックから一旦停止していた集団交渉の再開を確認した。再開の契機となったのは、2月にNCCU加盟経営者会が設置されたこと。これまではNCCUが主催する「労使会議」や「労使懇談会」を協議の場として活用してきたが、今後は共催になる。また、「12の提言」に盛り込んだ人員配置基準の見直しと夜間体制・夜間看護体制における介護報酬の大幅に引き上げなどを通じた職種別労組としての労働条件の整備と向上、さらに、労働相談機能の強化、個人組合員の拡大キャンペーン(仮称)を通じた組織の拡大・強化に力を入れることも確認した。

大会では役員改選があり、会長に二宮利夫氏(ニチイ分会出身・44歳)、事務局長に久保芳信氏(副事務局長・55歳)を選出した。