精緻な食品産業政策の策定が急務/フード連合定期大会

(2010年9月15日 調査・解析部)

[労使]

食品産業関係の労組でつくるフード連合(渡邉和夫会長、10万3,000人)は9月13日、東京・有明で定期大会(中間年)を開催し、今春闘の総括を行うとともに、2010年度運動の補強方針を決定した。大会では、6月末時点での1年間の組織化成果として、組織人員が3,120人(うちパート1,960人※1)増加したことが報告された。

あいさつした渡邉会長は、食品産業を取り巻く状況について、「景気回復の鈍さやデフレ基調から脱却できぬなか、利益確保のため各社ともいっそうのコスト削減と市場競争に凌ぎを削っている。さらに人口減少を踏まえ、大手を中心に中国や東南アジアへの進出が加速しているが、中小・地場では企業の淘汰・精算が相次いでいる」などと指摘。こうした実情を踏まえ、労働組合の本来的な役割として、「職場と雇用を守らなければならない。労使協議を徹底しつつ、経営への参画意識を高めていく必要がある」などと強調した。また、「民主党政権下にあることを考えれば、産別としてこれまで以上に、食品産業政策に対してより具体的で精緻なものを築き上げていく必要がある。とりわけ食料品の軽減税率のあり方等税制に係わる考え方の策定が、早急に求められている」などと述べ、産業政策に注力していく意向を明らかにした。

結成10周年を見据え「フード連合・あり方検討委員会」を設置

大会では、2010年春闘について総括した。今春闘では、労働時間の短縮やパート等の処遇改善を含めた「あらゆる改善原資の獲得」をめざすこととし、賃上げについては (1) 5,500円以上 (2) または賃金改善分1,000円以上 (3) 5,000円以上――の3つの要求基準を設定。とくにこの5年間で約1万円低下し、製造21業種中20位という低位にある食品・中小組合の底上げをめざし、新たに「中小共闘支援拡大センター」を設置して臨んだ。

その結果(6月30日最終集約)は、同一組合比較で、昨年比282円0.06(ポイント)マイナスの5,176円・1.78%となったものの、300人未満では93円(0.15ポイント)上回る3,963円・1.63%、100人未満では295円(0.14ポイント)高い3,547円・1.52%で、「昨年以上に中小規模が健闘した。実態に即した5,000円を要求したことで、昨年以上の成果を上げることができた」(栗田博・労働局長)との見解が示された。

また、定昇相当分が分かっている131組合のうち、ベア・賃金改善を獲得したのは29組合と、昨年(47組合)より大幅に減少したものの、定昇(相当分)を確保したのは97組合で、96%以上が賃金カーブ維持を確保。「賃金改善を獲得した組合が、他産別と比べて多いことは評価できる」(同)とした。

さらに、パート等の処遇改善は、昨年(65組合)とほぼ同数の64組合が取り組み、41組合で妥結。17組合が時給の引上げを獲得したほか、19組合が休日増や慶弔休暇の新設、裁判員休暇制度の有給化で前進した。一方、企業・年齢最賃の協定化については、60組合が要求したが、「改善は4組合にとどまり、厳しい結果となった」(同)。

こうした結果を受け、来春闘に向けた課題としては、「厳しい経済環境下であっても、今次春闘のようにあらゆる賃金改善原資の獲得をめざした取り組みは必要。とりわけ制度がない中小組合の賃金水準を、これ以上低下させないためには、今後も実態に即した対応等について検討する必要がある」「パート等については一括りで扱うのではなく、働き方等の違いによるタイプ分けを検討する」ことなどをあげた。

大会ではこのほか、08年9月より「時短推進サポートチーム」を設置して、取り組みを強化してきた「時短2,000ゼロ」※2の進捗についても報告があった。構成組織289単組中、年間所定労働2,000時間以上が106組合あったものの、09―10年春闘含め、この2年間に94組合が取り組み、うち7組合が2,000時間未満を達成。全体では42組合で時間短縮等を獲得したものの、交渉が進まないケースも少なくなく、取り組みの継続を確認した。

09~10年度運動※3の補強方針としては、2012年11月の結成10周年を展望し、「フード連合・あり方検討委員会」(仮称)を設置。産別機能の充実化や組織体制・財政確立について、中長期的観点から議論していくことを決定した。

※1:日本デリカフレッシュ労組(140人・パン部会)、日本フードデリカ労組(120人・パン部会)など9件の新規加盟に加え、敷島製パン労組(非正規の組織化等で1,828人増・パン部会)、ニチレイ労組(子会社統合等で180人増・水産冷食部会)、アンデルセングループ労組(組合員範囲見直し等で110人増・パン部会)、ネスレ日本労組(子会社統合等で100人・乳業部会)など13件の登録人員拡大がなされた。

※2:2011年3月以降の達成に向け、2010年春闘で要求書を提出し、年度末までに労使合意を果たすことなどを目標としている。

※3:昨年の大会で、 (1)食品労働者の雇用の安定・確保と労働条件の維持・向上 (2)食の安全・安心の推進と食品産業政策の実現 (3)食品労働者の総結集と組織強化 (4)男女平等参画の推進――を柱とする運動方針を策定している。