政策提言・実現に力点を置く運動方針決定/自動車総連大会

(2010年9月15日 調査・解析部)

[労使]

自動車総連(西原浩一郎会長、77万人)は9~10日に東京・大井町で定期大会を開き、産業・企業内の取り組みとして社会的公正分配を追求する一方、産別としては政策提言・実現力を強化することなどを柱とする向こう2年間の運動方針を決めた。西原会長はあいさつで、自動車産業の競争力確保のために、「法人税の引き下げ」を求めた。

「単独での市場介入」「追加金融緩和」「法人税の引き下げ」を(西原会長)

あいさつで西原会長は、「直近の円高は、中小・地場企業をはじめ自動車などの輸出型産業に極めて深刻な打撃を与えつつある」と指摘した。円高への対応については、政府と支持する民主党に対して緊急経済対策の要請を展開してきた結果、8月末に発表された政府の追加経済対策については、「総連主張の多くが反映された」と評価。一方、「日銀の金融緩和策は不十分である」と批判したうえで、政府・日銀に対して、「危機感を共有し、円高阻止に向け、単独での市場介入・追加金融緩和にも踏み切る姿勢で、機動的に対処してもらいたい」と要望した。

また、円高進行による国内空洞化の懸念も高まるなか、国内の事業基盤を維持・強化するための産業・企業内の取り組みとして、「雇用確保を大前提とし、人への公正な投資を通じた人材力の向上」が基本であると主張。「産業全体で生み出した付加価値の業種・企業間の公正配分を求める活動を強化する必要がある」と訴えた。そのためにも、「所得分配機能の強化・不公正税制是正」を前提にした税制の抜本改革の必要性を訴えるとともに、国内における事業基盤維持と海外との公正な競争条件を確保する観点から、「法人税の引き下げを求めたい」との見解を表明した。

各経営者団体との連携深め、課題解決のあり方を模索

大会で決めた向こう2年間の運動方針は、 (1)政策実現に向けた政治や社会に対する影響力の発揮 (2)社会的、地域的な役割発揮と地協体制整備・活動充実 (3)雇用や業種課題等への対応力強化 (4)労働政策のビジョンづくりと労連の主体性に基づく実践 (5)総連運動を支える人材基盤の確立とシンプルな機関運営――の5本柱で構成。民主党が政権与党になったことで、「政策の実現可能性が高まった」(西原会長)ことを踏まえ、政策活動の推進とその実現に向けた取り組み強化を打ち出している。

具体的な内容として、これまで産業政策と一般政策に分かれていた本部の政策立案機能を統合し、連合への意見反映を強化する。また、今大会までに47都道府県にすべてで独自の地方協議会を設置したことを踏まえ、地方からの政策発信機能を高めつつ、中央・地方での民主党議員との連携を強める。制度・政策の取り組みでは、政策の立案→推進→実現→評価の通年サイクルを明確化。具体的な政策として、自動車関係諸税や地球環境対策などの自動車産業に関わる課題だけでなく、社会保障制度や社会的セーフティーネットの構築、雇用・労働に関する法制度の見直しなどについて、政策スタンスを明確にして、実現を求める。

また、運動方針では、自動車産業が持続的に基幹産業としての発展をつづけるためにも「労使が垣根を越えた活動に取り組むことが極めて重要である」と提起。既存の日本自動車工業会との産業労使会議だけではなく、日本自動車部品工業会、日本自動車販売協会連合会、日本陸送協会などの経営者団体とも日常的なコミュニケーションを充実させ、連携を強める考えだ。組織拡大に向けては、2006年以降、増加傾向にあるが、今後4年間で2万6,000人(うち非正規2,600人)の目標を設定している。

企業内最低賃金協定の締結促進を

2010年の総合生活改善の取り組みについても総括した。内需底割れの防止に向け、賃金カーブ維持を至上命題に取り組んだ結果、賃金改善分を獲得した110組合を含めて、全体の81.7%に当たる911組合で、賃金カーブ維持を確保。昨年の74%から確保した組合の割合が高まっていることから「賃金水準の低下を防ぐ」とした連合共闘においても、産別として一定の役割を果たしたと総括している。年間一時金については回答のあった1,081組合の平均で、3.8カ月となり、昨年(1,057組合)を0.26カ月上回っているものの、リーマンショック前のレベルには回復していない。産業別最低賃金に連動するため、非正規雇用の処遇改善に向け重視している企業内最低賃金協定については、昨年比81組合増の665組合で協定化している。

こうした、成果を踏まえて自動車総連では、来春の交渉では、公正処遇の観点から企業内最低賃金の取り組み強化とあわせて、デフレスパイラル阻止を重視し、「人への投資が産業・企業の活性化には不可欠」との観点から闘争方針案の検討をすすめる。

なお、大会では組織内議員である直嶋正行・経済産業相から国政報告があったほか、役員改選があり、西原会長(日産労連)、相原康伸事務局長(全トヨタ労連)をそれぞれ再任した。