消防職員の団結権回復めざし集会を開催/自治労

(2010年9月10日 調査・解析部)

[労使]

自治労(徳永秀昭委員長、86万人)は9月8日、都内で「地域主権と労働基本権の確立を求める自治労集会」を開催した。今年1月から総務省内に設置された「消防職員の団結権のあり方に関する検討会」での議論進捗について報告するとともに、消防職員の組織化をめぐる今後の取り組み方針などを確認した。

全国803本部で職員総数は15万7,000人

冒頭あいさつした徳永委員長は、消防職員の団結権問題に触れ、「自治労にとって最重要課題の自律的労使関係確立の象徴的な課題として、取り組みを進めてきている。私と原口総務相との定期協議を起点として、団結権問題をめぐる検討会を設置することができた。今秋の取りまとめに向け、いよいよ大詰めの段階に入る。連合や公務労協などと連携しながら、確実に前進させたい。この問題は、協約締結権獲得以降の各自治体の取り組みにも密接に係わる表裏一体のものとしてとらえ、精力的に組織化を進めて欲しい」などと呼びかけた。

また、全国消防職員協議会(全消協)の迫大助会長は、「全国には803の消防本部があり、そこで働く消防職員の総数は約15万7,000人にのぼる。しかし、現在、全消協が組織している消防本部は170、消防職員は約1万3,000人にとどまっている。消防職場の多くは、一昼夜交代制勤務で長時間拘束され、上位階級によるパワハラに何も言えない状況もある。近年では埼玉で、消防職員が経費節減のため機長・副機長をリースしたヘリに乗せられ墜落するなど、危険を感じても物を言えず、生命を落とす悲劇さえ発生している。仕事に集中できる環境を獲得するためには、団結権が必要だ」などと訴えた。

11月に最終報告とりまとめ予定

集会では、逢坂誠二・内閣総理大臣補佐官が「地域主権改革の今後」と題して講演。また、岡本博・自治労書記長が、「消防職員の団結権のあり方に関する検討会」(座長=小川淳也・総務大臣政務官)のこの間7回にわたる議論進捗を報告した。

岡本氏によれば、労働者側からは、ILОからの勧告等は積年の課題であり、団結権が回復されれば、 (1)対等な立場での労使の意思疎通につながり、目的意識の共有や公務能率の向上が図られる (2)消防職員の安全を確保する (3)職員の士気向上や人材確保につながる――などと主張。これに対し、使用者側委員の多くは、団結権を回復すると、 (1)職員間の対抗関係を生じさせ、指揮命令系統や部隊内の信頼関係に影響を与える (2)住民の生命・財産を守るという消防の任務に支障が出る(地域住民との信頼関係に影響を与える) (3)消防職員が自らの権利を主張することで、消防団との連携や信頼関係に影響を与える――などと反論し、難色を示しているという。

議論は労使間で併行線を辿っているため、前回の検討会で、座長より公益委員によるワーキンググループ(非公開)を設け、専門的・第三者的立場から議論を整理したいとの提案があった。こうした動向から岡本氏は、「恐らくワーキンググループを数回挟んだ後、検討会に報告し、議論が再開され、11月中には最終取りまとめが策定されることになる」との見通しを示した。

これを踏まえ、自治労では「2012年の団結権回復を想定」し、今後3年間を消防職員の組織化の集中期間に設定。2012年までは全消協への組織化を進め、団結権獲得以降はすでに組織化した全消協単組協の自治労への合流と、未組織の自治体単組への組織化を進める方針だ。

※日本では現在、警察職員、自衛隊員、海上保安庁職員、消防職員及び刑事施設職員については、団結権が付与されていない。