向こう2年間の運動方針や産業政策を決定/UIゼンセン同盟定期大会

(2010年9月10日 調査・解析部)

[労使]

繊維や化学、流通、外食サービスなど幅広い産業を組織する民間最大産別のUIゼンセン同盟(落合清四会長、109万人)は8~9日、埼玉県大宮市で定期大会を開き、向こう2年間の運動方針と繊維、流通、ホテル・レジャーの各産業政策等を決めた。また、役員改選があり、落合会長を再任。書記長には松浦昭彦氏(帝人労組、48歳)が選出された。

過去1年間で3万人超を組織化

UIゼンセン同盟は、過去1年の組織化活動を通じ、新規組織化※1で62組合1分会・2万3,333人増(うちパート約47%)、企業内組織拡大で38組合・9,596人増(同約81%)となり、解散・自然減を相殺しても、組合員数は昨年度比2万2,014人増の109万3,329人(同約46%)となった。

落合会長はあいさつの中で、こうした組織の現勢に触れ、「組織の姿を概観すると、幅広い産業、業種に広がり、組合規模も50人以下の中小から13万人超の労連まで多様化している。また、正社員、契約社員、パート、派遣とさまざまな雇用形態の組合員がいる。まさに日本の産業、雇用構造を投影しており、ミニ連合のように映るかもしれない」などと指摘。そのうえで、「今後さらに組織化が進み、加えて他産別との統合が実現すれば、およそ10年以内に150万組織に拡大することが想定される」との見通しを示した。

これに関連して、07年末に協議が物別れに終わった、サービス・流通連合(JSD、22万人)との統合問題に触れ、「この間、流通部会を中心に政策、セミナー、行事等の活動連携が深まっていることからも、でき得れば2年後(2012年)の、UIゼンセン同盟の組織見直しが実施される早い段階で、統合への合意・決着を図るべく誠実に対応していきたい」とする意向を明らかにした。

民主党代表選にも言及

一方、9月14日の民主党代表選挙で、UIゼンセン同盟は菅・小沢両候補のいずれにも支持の姿勢を示していないことについて、落合会長は「(UIゼンセン同盟内の)党員・サポーターから、どのような態度で臨むのかという問い合わせを頂いている。本来なら100万超の労働団体・社会的団体として、何らかの具体的表明をすべきだが、今回の代表選はいくつかの矛盾を抱えているため行わなかった」などと説明。私見としながら'矛盾'の内容について、「今まで民主党を支援してきたのは、組織内議員、民社協会所属議員を抱えている政党だからだ。だが、基本政策、国家観がバラバラの同党に対し、政党綱領や国家運営理念を示すべきと求めてきたが、未だに策定されていない。そうした民主党の今回の代表選は、首相を選出する点からも、考えようによっては危険だ。綱領や運営理念といういわばモノサシがない状態で、重大な選択を組織として示唆することは避けるべきと考えた」などと述べ、「投票に当たっては、UIゼンセン同盟と協力関係にある民社協会の対応も参考にしながら、自主投票として権利を行使していただきたい」と呼び掛けた。

意識改革、交渉力、組織見直しを柱に運動方針を策定

大会では、2011~12年度の運動方針の柱を、 (1)物事を「生活者視点」「暮らし」から発想する意識改革 (2)加盟組合の交渉力の向上 (3)UIゼンセン同盟の組織見直し――に据えることを決定した。1点目の意識改革では、「残業は例外的なものとする考え方の確立」や「労使委員会の設置と、生産性向上や諸休暇を考慮した適正要員に係る話合い」「(健康問題を含めた)勤務間インターバル規制の協定化」「正社員の労働時間の多様化に係る検討」――等を盛り込んだ。

2点目の交渉力向上については、「労働条件をめぐる業界秩序のため公正労働基準の確立をめざし、業界団体との定期的交流を図ること」や「業種における労働者の過半数をおさえること(戦略的業種を定めた組織拡大含む)※2」等をあげた。3点目の組織見直しでは、08年大会の提起に基づき現在、組織・運動評価特別委員会を設置して議論を進めているが、今後は産別統合の動向も視野に入れつつ、運動、組織機構、財政基盤(会費水準含む)のあり方を検討し、来年の大会で提案する。

大会ではまた、高付加価値化、生産性向上などを通じた産業の振興と、雇用の安定・労働条件の改善を両立する取り組みの方向性を示した、「第4次繊維産業政策」「第5次流通産業政策」「ホテル・レジャー産業政策」も決定した。既存の「化学・薬粧産業政策」「食品・フードサービス産業政策」と合わせ、これでUIゼンセン同盟の各業種政策がほぼ出揃った格好となった。今後、業種別部会を中心にその実現に取り組むとともに、業種別労使会議を充実・拡大させていく必要があることも確認した。

※1:今期は、食品スーパーのカノーグループ労組(2,000人)やオール・アデランス労組(1,000人)、居酒屋の大庄労組(3,005人)やアミューズメントのコロナグループユニオン(3,046人)、ディスカウントのダイレックス労組(佐賀、2,000人)、いない労組(鳥取、815人)等のほか、ドラッグ業界に焦点を当て、業界9位のクリエイトエス・ディーユニオン(1,402人)や地場大手のププレひまわり労組(広島、1,087人)、(くすりの)福太郎ユニオン(千葉、1,000人)、ミドリ薬局(鹿児島、997人)、レディ薬局(愛媛、382人)――等を戦略的に組織化した。

※2:当面130万人をめざし、医薬品、メガネ、バイオ、医薬卸、ドラッグストア、紳士服、フィナンシャル、ホームセンター、娯楽業種(パチンコ等)に特化した組織化を継続する。また、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)や、パチンコチェーンストア協会(PCSA)に次ぐ、新たな業界団体との連携を模索するとしている。