連合・金属部門共闘の強化へ/金属労協定期大会

(2010年9月8日 調査・解析部)

[労使]

自動車、電機、鉄鋼・造船などの産別労組でつくる金属労協(IMF・JC、205万人)は7日、都内で定期大会を開き、 (1)金属産業にふさわしい労働条件の確立 (2)民間・ものづくり・金属としての政策実現に向けた取り組み (3)グローバルな環境変化に対応した国際労働運動の推進 (4)組織強化への対応とより効率的な運動の構築――を重点課題とする向こう2年間の運動方針を決めた。来春闘では、JC共闘を維持しつつ、金属労協の加盟産別と全造船で構成する連合・金属共闘連絡会議での取り組みを強化する方針を打ち出した。

「法人税の引き下げ求める」(西原議長)

冒頭のあいさつで西原浩一郎議長は、現在の円高水準について、「金属産業をはじめとして、輸出産業に極めて悪影響を与えつつある」と指摘し、「円高阻止に向け、追加金融緩和はもとより、為替介入にも断固踏み込んでもらいたい」と訴えた。そのうえで、国内の事業基盤を強化し、海外企業との公正な競争条件を確保するために、「法人税の引き下げを求める」と述べた。

水準低下に歯止めがかかった2010春闘

JC大会/(9月8日 調査・解析部)メールマガジン労働情報 No.656

大会では2010春闘の取り組みを総括した。今季闘争で金属労協は、「雇用の維持・創出を最重視し、賃金水準・家計収入の落ち込みに歯止めをかける」とし、すべての大手登録組合(55組合)と中堅・中小の登録組合のほとんど(155組合中152組合)で賃金構造維持分を確保。このうち10組合は賃金改善分を獲得した。一時金も、大手組合の平均が4.41カ月(前年比0.07カ月増)、中堅・中小も4.25カ月(同0.18カ月増)と、09春闘で大きく落ち込んだ水準のさらなる低下に歯止めをかける回答を引き出した。

こうした結果について西原議長は、「組合員のモチベーションと活力の維持につながるものであり、金属労協として連合全体の取り組みへの寄与も含め、一定の社会的責任を果たし得た」などと評価した。

2011春闘では「働く者への公正な配分のあり方を検討」

そのうえで、2011春闘については、「不透明な経済・産業・企業状況の先行きを慎重に見極めながら、デフレスパイラル阻止の観点からの懸命に働く者への公正な配分のあり方の検討を進めていく」と指摘。「交渉態勢として、できるだけ連合の部門共闘が、より見える形での機能・役割の強化につながるよう金属労協全体として努力していきたい」と述べた。

運動方針では、バラつきはあるものの、金属産業全体としては回復基調にあることから、「人材の確保や労働環境改善への投資など、今後とも金属産業が日本経済を支え続けるために必要な投資は、間断なく着実に進めなければならない」としている。具体的には、連合の金属部門共闘としての取り組みに軸足を置いて検討を進めるとともに、個別銘柄別の賃金水準を重視した「大くくり職種別賃金水準の形成」を推進するほか、中堅・中小の登録組合の共闘強化で賃金の全体的な底上げや格差解消をめざす。賃金構造維持分の明確化や賃金制度確立に向けた取り組みにも重きを置く。

年間一時金については、水準低下に歯止めを掛けたとはいえ、09春闘で大きく落ち込んだ分を取り戻すには至っておらず、全体で半数以上が「生活を守るために最低限必要な」年間4カ月分を割り込んでいる状態だ。このため、要求の基本に据えている年間5カ月分の必要性と、最低獲得水準である「年間4カ月分以上」の重要性を再確認することも明記している。

多国籍企業別に労組ネットワークの構築を検討

国際労働運動の推進に関しては、日系の多国籍企業(TNC)の健全な労使関係構築に向けた取り組みとして、TNC別のネットワーク構築に向けた検討を進めることを確認した。同ネットワークは、世界各地に生産拠点などを有するTNCで働く人や労組が連携して、情報の収集・交換を行い、健全な労使関係を築いて労使紛争を未然に防ぐための取り組み。金属労協が加盟するIMF(国際金属労連)が2009年大会で設定した主要目標の一つで、すでにキャタピラーやフォードといった欧米企業の労組はネットワークを構築しているという。

大会に来賓として招かれたユルキ・ライナIMF書記長は、「関連企業で信頼できるパートナーとなるために、IMFは各国で労働者の力を結集できるようにしなければならない。そこで、TNCにおける情報交換のため、グローバル労働組合ネットワークを体系的に構築するプロセスを開始した。目的は、共通の立場を明らかにするとともに、未組織工場を組織化し、苦境の際に共同行動を起こすことだ」などと説明した。IMFの提起を踏まえ、金属労協は今後、日本の労使慣行等を尊重した柔軟な対応を前提に「計画的かつ着実なアクションにつなげていきたい」(西原議長)としている。

このほか、アジアを中心に頻発している日系企業の労使紛争への対応として、国内外での労使紛争未然防止セミナーを企画・実施する。

政策・制度課題や産業政策の取り組みも

一方、政策・制度課題の実現に向けた活動としては、 (1)「ものづくり」を中核に据えた国づくり (2)世界最先端の地球環境対応 (3)「良質な雇用」――を3本柱に、FTA(自由貿易協定)締結促進や国民負担を可能な限り少なくする温室効果ガスの削減、ものづくり産業で働く親が安心して子育てできる環境整備づくりなどに取り組む。

また、産業政策では、若者の人材確保と技術・技能の継承・育成を図るための「ものづくり教室」の開催などの取り組みや、若年者トライアル雇用やジョブ・カード制度などを活用した正社員としての若者の人材確保の施策の展開のほか、 (1)国内生産基盤の活用による最先端技術・製品開発・普及促進 (2)サマータイム制度の導入促進 (3)工業高校を軸とした地方の活性化――などにも力を入れる。

役員改選があり、西原議長(自動車総連)と若松英幸事務局長(電機連合)が再任された。