正規と非正規が賃金シェアを/自治労委員長が大会で提起

(2010年8月27日 調査・解析部)

[労使]

自治労(徳永秀昭委員長、約86万人)は8月26・27の両日、徳島市で定期大会を開き、当面の闘争方針等を決定した。徳永委員長はあいさつで、いわゆる官製ワーキングプア問題に触れ、「『正規と非正規が賃金をシェアし、全体として処遇改善と安定雇用を図る』方策を、大胆に採用すべきだ」と問題提起した。

自治労が、08年に実施した「臨時・非常勤等職員の実態調査」によると、地方自治体に働く非正規職員は全国で約60万人にのぼり、勤務時間が正規と同じ非正規は平均で28.4%、町村に限ると47.1%に達している。こうした実情を踏まえ、徳永委員長はあいさつで、「年収200万円を超える者は多く見積もっても2割程度しかいない。今や非正規職員は、自治体にとって欠くことのできない戦力で、行政サービスを左右するようになっているのだから、『搾取している』といっても過言ではない」と現状を厳しく非難した。

そして、「すべての関係者は、認識を根本的に改めることから始めなければならない」と呼びかける一方、こうした現状を改善するためには、「『正規と非正規が賃金をシェアし、全体として処遇改善と安定雇用を図る』方策を、大胆に採用すべきだ」と問題提起した。そのうえで、具体的な取り組みとして、「例えば本年なら人勧の削減原資を非正規の処遇改善に確保する交渉・協議を行うなど、大胆に運動展開する必要があると考えている」などとし、今後、「来年の春闘に向けた議論の中で深化させたい」との考えを表明した。こうした検討とあわせて、政府に対しては、短時間公務員制度(仮称)の創設と、自治体非正規にもパートタイム労働法の趣旨を適用するよう強く訴えていく。

「労働基本権回復に向けた取り組みを強化したい」(徳永委員長)

また、徳永委員長はあいさつで、公務員制度改革に触れ、「歩みは遅々とし、とりわけ労使関係改革に至っては、何ら具体的成果がない。民主党政権は、衆参で多数派を占めていたのに、先の通常国会では多くの重要法案とともに、国公法改正案の成立を逃してしまった事実を、厳しく反省しなければならない」と批判した。

そのうえで、「本年のILO総会で、日本政府として初めて、労働基本権を回復する方向で検討を進めると明言したことは高く評価できる」としながらも、民主党が昨年のマニフェストで労働基本権を付与すると明記したことは、「紛れもなく国民との約束」であるとし、一刻も早い法案を提出と成立を強く求めていきたいと強調した。

また、消防職員の団結権問題について、「総務省の検討会では、秋のとりまとめに向け、いよいよ大詰めの段階に入った」とし、「連合・公務労協・全消協との連携を強化し、確実な団結権獲得に向け全力で取り組もう」と呼びかけた。

確定闘争の方針――人勧以上の引き下げは行わない

大会では、 (1)今年の人事院勧告をめぐる自治体確定闘争 (2)公務員制度改革 (3)自治体財政の確立と自治・分権の推進 (4)地域社会を支える公共サービス改革 (5)安心と信頼の社会保障制度改革 (6)公共サービス労働者の総結集と組織拡大――など14本を柱とする、当面の闘争方針等を決定した。

8月10日の人事院勧告では、月例給(0.19%・757円)、一時金(0.2カ月)ともマイナス改定となり、また50歳台後半層は俸給月額等に一定率をかけさらに削減するとした。これを踏まえた確定闘争では、「月例賃金水準の維持を図り、少なくとも0.19%以上の引き下げを行わないこと」「必要な一時金の支給月数を確保し、少なくとも人勧における措置を最低とすること」を柱とすることを確認した。

また、社会保障制度改革の一環として、「就労看護職員200万人体制の確立に向けた対処方針」(アクションプラン)を策定して具体化に取り組むこと、また、組織拡大策では、臨時・非常勤職員の組織化に加え、公的病院や社会福祉協議会の組織対策、公社・事業団の組織化にも力点をおくことを決めた。