原子力発電所の新増設を「着実に進める」/連合がエネルギー政策の考え方を確認

(2010年8月20日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は19日の中央執行委員会で「エネルギー政策に対する連合の考え方」を確認した。現在、計画中の原子力発電所の新増設を、「地域住民の理解・合意と幅広い国民の理解を前提に、これを着実に進める」などと明記したのが特徴だ。

中長期的な視点でエネルギー政策の考え方を整理

「考え方」は、エネルギー政策を取り巻く情勢について、 (1)資源に乏しい日本は、量と価格の両面でエネルギーの安全保障の重要性が増している (2)環境保全と整合の取れたエネルギー政策に取り組んでいく必要がある (3)世界最高レベルの環境技術を適切に活用することで、経済成長を達成し、労働者の雇用・労働条件の改善につなげることが求められている――などと説明。「これらを同時達成するため、中長期な視点で考え方をまとめた」としている。

とりまとめにあたっては、まず供給・需要両面での前提条件を整理した。供給面では、安定供給の確保が重要であることに加え、地球温暖化問題への対応が喫緊の国際的な課題となっている点を指摘。現状で8割強を石油や石炭、天然ガスなどの化石エネルギーに依存している構造の転換が必要だとしながらも、化石エネルギー以外の主要エネルギーである原子力エネルギーと再生可能エネルギーにも、「それぞれ長所・短所を持っており、供給量の拡大を図っていくうえでいくつかの課題を克服しなければならない」とした。

一方、需要面については、「今後、低炭素社会を実現するためには、省エネ技術開発の推進はもとより、産業構造の転換、省エネ・循環型のライフスタイルへの見直しおよび国土インフラの整備等により、各部門におけるエネルギー消費を削減していく必要がある」と主張。ただし、その際に雇用や生活の影響に留意することを付記している。

エネルギーのベストミックスの推進を

具体的な考え方としては、まず多様なエネルギーの特性や社会的要請、経済環境、関連技術の進展などを踏まえた「エネルギーのベストミックスの推進」に取り組むことをあげた。検討のする際の視点として、化石エネルギー、原子力エネルギー、再生可能エネルギーそれぞれの長所と短所を見るポイントも示している

また、エネルギー政策における国の役割と責任についても明記。「エネルギー政策全般に関して、国は、国家戦略としてこれを推進するとの意思を明示するとともに、政府が資源・エネルギーの長期安定確保・供給の実現に向け主体的役割を果たす」べきだとした。

そのうえで、原子力エネルギーは、「より高度な安全確保体制の確立を大前提に、原子力発電所の高経年化対策と設備利用率向上をめざす」とし、現在、計画中の原子力発電所の新増設については、「地域住民の理解・合意と幅広い国民の理解を前提に、これを着実に進める」との考えを打ち出した。その推進にあたっては、「国が国家戦略として原子力エネルギーの位置づけを明示するとともに、安全・安心の確保や国民・住民に対する理解活動に責任を持って取り組む」ことも強調した。

化学エネルギーの高度利用も推進

その一方で、化石エネルギーについても言及。「環境負荷の小さいエネルギーへのシフトを進めるが、化石エネルギーは安定供給の確保や経済性などの観点で将来的にも主要エネルギー源の一つであることに変わりはない」と重要性を明記して、「今後は化石エネルギーの高効率利用、環境負荷の小さい天然ガスの利用拡大など、化石エネルギーの高度利用を進める」との姿勢を示した。

再生可能エネルギーに関しては、「国民生活や産業・企業の国際競争力への影響等に留意しながら検討し、その内容や必要性について国民の十分な理解・合意を得る」ことを基本に据えた。

このほか、省エネルギーの高効率利用技術などの技術開発や、その普及による関連産業の振興と新規雇用の創出の推進も提示。低炭素社会への移行に伴い、雇用に悪影響がないよう必要な対策を講じることも掲げている。

原子力エネルギーの推進等について、連合では構成組織で利害が異なることから、長年にわたって意見の調整がつかない政策分野だった。「政策・制度要求と提言」(2010~2011年度)の資源・エネルギー政策でも、「原子力発電は、わが国の主要な電源の一つであるとともに、エネルギー安定供給のために重要なエネルギー源」と位置づけてはいるものの、その利用にあたっては、「実効性ある、より厳密な安全確保体制の再確立と情報開示を前提とし、国民の信頼回復・維持に努める」との表現にとどめていた。今回、初めて、推進の方向性を明確に示したことになる。