「2011労働条件交渉」に向けた方針を決定/サービス・流通連合

(2010年6月23日 調査・解析部)

[労使]

百貨店やスーパーなどの組合でつくるサービス・流通連合(JSD、八野正一会長、22万人)は22、23の両日、都内で定期大会を開き、2011年度の労働条件改善に向けた交渉方針を決定した。また、財政・組織構造改革をめぐる「運動のあり方プロジェクト」や、政治活動への関わり方を見直す「新たな政治活動の考え方」についても、中間報告を行った。

「均衡・均等待遇のリーダーとしてパート・契約等の組織化を強化」(八野会長)

あいさつした八野会長は、低価格・ファストファッション販売の多国籍企業のほか、インターネット通販やアウトレットモールなど、新たな業態とのシェア争いが激化している現状を踏まえて、「これまでのビジネスモデルが通用せず、新たな付加価値の創造が求められている。企業倒産や店舗閉鎖、早期希望退職等によりこの1年間で、組合員4,000人超が離れていった」などと、厳しさを増す業界の実情を指摘した。

JSDはこの間、組織横断的な「雇用に関わる合理化対策タスクフォース」設置して統一的な取り組み強化してきた。2月に自己破産したキンカ堂による従業員の即日解雇に対しては、抗議ファックスの一斉送信や八野会長による街宣行動など、JSDとして初となる組織行動を展開。昨秋にはUIゼンセン同盟との間で、雇用斡旋協定を締結するなど、雇用対策に積極的に取り組んできている。

そのうえで八野会長は、「セーフティネットの確立が、中期的にも重要度が高い」と強調。また、雇用の維持・確保のためにも、「自信を持った政策提案の重要度が増している」とし、「流通サービス産業全体を包含する産業労使関係の構築を将来的に目指し、JSD百貨店部会と日本百貨店協会との間の取り組みを強化しつつ、新たな協議の展開にもチャレンジしていかなければならない」とする考え方を明らかにした。

一方、こうした中にあっても、組織化は進展している。ロフト労組、ハヤシ労組、QVCジャパンユニオン等の新規加入をはじめ、イズミヤ労組による4,700人規模の組織化など、パート・契約社員等の組織化が着実に進み、昨年11月時点の組合員数は前年比8,350人増の約21.9万人(有期契約者比率約42%)となっている。

UIゼンセン同盟との産別再編統合に向けた考え方を後半年度中に確認へ

大会では、これまでの通年春闘路線から春闘と通年交渉方式を組み合わせた形に変更して3年目となった今春闘結果を総括。185の登録組合のうち、月例賃金については171組織で体系維持分の完全実施を要求。結果として、賃金改善獲得は11組織、定昇のみ制度維持分の確保は106組織となる一方、賃金カーブダウンも6組織あった。また、パート・契約等の組合員の時給については、組織で制度維持分の完全実施を要求。63組織が確保したことが報告された。

「2011労働条件改善」に向けた方針としては、 (1)低下傾向にある賃金の底上げを行う観点から、春闘の取り組み(全組織による目標提示の共有化等)を強化すること。具体的な方針は、11月に討論集会を開催するなどして議論すること (2)今春闘では、一時金が夏冬別実施で収束した加盟組合も多かったことから、今秋の交渉対策も強化すること――などを決定。また、通年交渉方針として、(1)均衡・均等待遇に向けた概念・基準の整理と各種制度の協定化 (2)育児短時間勤務制度の拡充 (3)労働者の健康・生活に配慮した労働時間に関する協定化等に取り組む――ことも決めた。

大会ではこのほか、経過報告の中で、UIゼンセン同盟との間で05~08年にかけ検討し、結果的に不調に終わった再編統合について、「産業を取り巻く環境が厳しさを増すなか、改めて前向きに考える必要があるとの認識の下、JSD内で方向性を再確認した上で、UIゼンセン同盟との話合いの場を設ける。前半年度は各加盟組合との意見交換を着実に進めた。後半年度は9月の中執で『産別再編統合に向けた考え方』を提案し、同年度中に今後の方向性を確認する」(岡田啓・事務局長)ことも了承した。