派遣労働者の待遇向上を盛り込んだ共同宣言発表/連合と人材派遣協会

(2010年5月26日 調査・解析部)

[労使]

 

連合(古賀伸明会長)と事務系派遣を中心とする派遣業の事業主団体である日本人材派遣協会(坂本仁司会長)は5月24日、派遣労働者の雇用の安定、待遇の向上と派遣業界の健全な運営を促進するなどとした「派遣労働者の待遇の向上と労働者派遣事業の適正な運営の促進に向けた共同宣言」を発表した。連合は、今春闘で、すべての労働者を視野に入れた運動に取り組み、派遣労働についても、事業主団体の日本人材派遣協会や日本生産技能労務協会と協議を重ね、一定の合意形成をめざしていた。すでに日本生産技能労務協会とは4月26日に同様の共同宣言を確認している。

記者会見で南雲弘行連合事務局長は、「今春闘の第一の柱は、すべての働く者の処遇改善。3,000組合以上が未組織の非正規労働者を含めて交渉に取り組むなど、運動が広がった。派遣労働についても、事業主団体と真摯に協議してきた」と述べ、共同宣言を運動の成果として評価した。その上で、日本人材派遣協会に対し、「派遣労働者の雇用の安定や処遇の改善は、法改正だけではできない。事業主は、法令遵守や労働者のスキルアップ策改善など業界の健全化に取り組み、社会の期待に応えるため、さらなる役割を発揮して欲しい」と求めた。連合としても「派遣先における労使協議を通じて、派遣労働に関する取り組みを進めている。さらにレベルアップを図りたい」と述べ、運動強化を強調した。

一方、日本人材派遣協会の坂本会長は、「派遣業界は人を扱う業界なので、清く正しい業界であるべきであり、努力したい。正社員を代表する連合というパートナーを得たのは第一歩。派遣労働とは何かを求めて、今後も協議を継続していく」と決意を述べた。また、派遣労働者の賃金について、「業務ごとの賃金のあるべき水準が協議できるといい。ガイドライン的なものが合意出来ればと思う」との考えを示した。

会員企業のコンプライアンス徹底を

共同宣言では、適正な事業運営の促進や派遣労働者の待遇改善に向け、それぞれの組織が取り組むべき方向について整理している。適正な事業運営については、日本人材派遣協会として、会員企業のコンプライアンス徹底とコーポレート・ガバナンス強化に努めることを明記。連合は、派遣先の労働組合として、派遣労働者の受け入れの際の労使協議を通じて、法令遵守や就業条件の点検に取り組むとしている。その上で共同の取り組みとして、派遣労働者が安心して働ける環境を整備するため、不適正な派遣元事業者の存続、参入を許すことのないように、法制度の在り方を検討するとしている。

派遣労働者の待遇改善では、日本人材派遣協会は、会員企業に対して、派遣料金の設定に当たって、福利厚生費や教育訓練費を考慮しながら、労働者の能力向上に応じた賃金水準の確保に努めるよう求めるとしている。また、年次有給休暇や産前産後休暇、育児・介護休業などの権利保障と取得の適正化を図り、派遣先への理解促進をすすめる考えだ。連合としては、派遣先の労使関係において、派遣料金の設定や労働安全衛生などの条件面を点検するとともに、派遣労働者の公正な待遇の実現に向けた運動について検討するとしている。また、共同の取り組みとして、就業環境の整備、福利厚生、キャリア形成のあり方を検討することや、通勤交通費の税制上の取り扱いなどの政策課題について、関係省庁への要請を含めて協議することとした。