厚労相に介護保険制度に関する提言を提出/日本介護クラフトユニオン

(2010年4月7日 調査・解析部)

[労使]

 

UIゼンセン同盟傘下の日本介護クラフトユニオン(河原四良・会長、約5万9,000人)は1日、長妻昭・厚生労働相に、介護現場の最前線からの声を集約した提言書「良質のサービスを提供するために」を提出した。介護従事者の処遇改善をはじめ、介護福祉士試験の受験機会拡大や、介護保険に係る事務作業の簡素化など12項目の検討を要請した。

処遇改善や事務簡素化などを要請

提言書は、2012年に控える次期・介護保険制度改正と、介護報酬改定に係る論議が、本年中にも開始されることを見据えてとりまとめたもの。提言では、 (1)介護従事者の処遇改善 (2)介護福祉士試験の受験回数と受験地の拡大 (3)(介護保険申請等に係る)事務作業の簡素化 (4)(制度改正・報酬改定のたびに複雑化してきた介護保険の)シンプルな制度への転換 (5)区分支給限度額の上限の引き上げ (6)要介護認定の精度の向上 (7)医療外行為の検証と拡大 (8)介護度改善に対する評価 (9)介護施設における人員配置基準 (10)制度を持続させるための公費負担割合 (11)介護従事者の確保と定着 (12)悪らつ事業者の排除――の12項目にわたり、対策を講じることを求めている。

このうち、介護従事者の処遇改善については、介護従事者が希望と誇りを持って働くための賃金水準は「全産業平均以下であってはならない」とし、厚労省の賃金センサスを根拠に、「常勤者(月給者)は年収450万円以上、非常勤者(時給者)は均等待遇で時給1,800円以上」を確保されるべきだと指摘。また、緊急経済対策の一環として、2009年10月から2012年3月までの限定で展開されている「介護職員処遇改善交付金」事業について、交付金の対象者を介護職員に限定しているのを解除するとともに、2012年以降も現行の介護職員処遇改善交付金予算額を確保した上で、基本介護報酬単価として反映させるべきだとしている。

また、医療外行為の検証と拡大については、慢性的な看護師不足の下、介護職や利用者から家族から請われて医療行為を行わざるを得ない状況が散見されることから、「国は医療外行為の範囲を検証し、拡大する方向を示すべき。その際、介護従事者が実施する場合の教育研修制度と介護報酬上の評価は確立されなければならない」としている。

さらに、介護施設における人員配置基準については、介護施設における現行基準(看護職員と介護職員の常勤換算で3対1)では、「利用者に行き届いたサービスが提供できないこと」「今後は入所者の重度化や認知症高齢者の増加、ユニット方式の普及等が予想されること」「高齢者や夜間・深夜に急変することも多いため、介護職員は休憩時間も取りづらく常に緊張状態で心身に疲労が蓄積され、結果として介護事故が誘発されやすいこと」――などを指摘。「人員配置基準を2対1に見直すとともに、夜間体制・夜間看護体制における介護報酬を大幅に引き上げるべき」などと提言している。