子供の貧困が浮き彫りに/全教などのホットライン

(2010年3月3日 調査・解析部)

[労使]

「授業料を滞納していて、卒業できない」――。教職員の組合である全教、日高教、全国私教連が2月11日に実施した「授業料、教育費緊急ホットライン」から、長引く不況が、子供たちの教育にまで深刻な影響を与えている教育現場の実態が明らかになった。ホットラインでは、全国から、授業料、入学金の支払いや奨学金の返済などの相談が156件よせられた。主催者団体は、「昨年よりも事態が深刻になった。経済的困難によって、子供たちは厳しい状況におかれている」として、相談結果を踏まえた緊急提言をまとめ、教育費と生活保護関連の相談がまとめてできる「ワンストップ相談窓口」の設置などを求めた。

授業料の支払い関係が約7割で最多

同ホットラインの実施は、昨年に続いて2回目。相談のうち、授業料の支払いにかかわる問題が7割近くともっとも多い。「父親がリストラされた。私立高校に通う子供がいるが授業料の支払いに困っている」「景気が悪く、自営業の収入が不安定。2人の子供の授業料などの負担が大変」「父親が病気で無収入。授業料の減免申請が間に合わず、授業料の支払いができない」など、経済的困窮から授業料の支払いに悩む相談がほとんど。

授業料の滞納によって、「学校から2~3日中に10万円納入しないと卒業させないと言われた」「卒業目前だが、滞納している50万円が払えない」「授業料8万円滞納。支払わなければ、進級させないと言われた」など、卒業、進級できない子供たちもでている。

また、「推薦で私立大学に合格したが、母子家庭で収入が少なく入学金の144万円が工面できない」「病気で生活保護を受けている。子供の私立高校入学に9万円かかるがなんとかならないか」など、入学金の支払いに困っているケースも少なくない。

相談では、奨学金制度や就学援助制度について、問い合わせる相談も多く、制度自体の認知度の低さも浮かび上がっている。

「ワンストップ相談窓口」の設置などを提言

主催者団体がまとめた緊急提言の具体的な要求は、 (1)授業料滞納による卒業延期処分などの回避 (2)教育費と生活費の相談がまとめてできる「ワンストップ相談窓口」の設置 (3)文科省の「高等学校授業料減免事業等支援臨時特例交付金」の運用要件の緩和 (4)厚労省の「生活福祉資金貸付制度(教育支援資金)」の拡充 (5)日本学生支援機構奨学金の無利子・緊急貸付実施 (6)公立高校無償化後も、生活保護の授業料分を「教育費扶助」として支給継続――の6点。教育費問題の根本的解決に向け、「すべての中学、高校や大学等において、教育費負担を軽減するための現行制度の拡充をはかり、教育費無償化の流れを前に進める」と訴えている。